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Close your Eyes ep.92-1



HP『Sweet Drops』用に書かれた作品になります。原文のまま転記したので長文になります、ご了承ください。












君を想う。君を考える。

いつでも、いつまでも僕は君のことばかり…。


 
ふと、考える。

休みの日といえばほとんどを彼と過ごした。友人からは付き合いが悪くなったとさんざん言われたが、それでも自分にとって優先すべきは彼のことだけだった。

自由な時間が増えた今日この頃。取り立てて何もすることはない。気づけば彼のことばかり考えてしまっている。

寂しがってはいないだろうか。泣いてはいないだろうか。今日もちゃんと笑えているのだろうか。

いくら考えてみても、答えなどわかりやしない。同僚から聞く彼の話を楽しみにしている自分が情けなくもあり、健気だとも思う。

彼と出会うまでは、まさか自分にこんなにも感情があるとは思ってもいなかった。恋愛に溺れるなど馬鹿な人間がすることだと卑下したりもした。

しかし、実際自分がその立場になってみて初めて気づく。自分の中の強い感情に重きを置いて行動できた時間がとても幸せだったということに…。

「ヴァネス?」

名を呼ばれて振り返れば同僚の姿。明日の休みをどうしようかと考え始めてからすでに1時間が経過していた。

「どうしたの?なんか悩み事?」

「いや…明日の休みをどうしようかと思ってな。最近はずっとジム通いだったんだけど…それも年頃の男子としては寂しすぎるだろ?」

言い種がおもしろかったのか、くっとかみ殺したように笑う。笑ってしまってからそれは失礼だと思い直したのか、咳払いをひとつして取り繕ったような微笑を浮かべた。

「明日、ヒマなら付き合わない?」

「あ?」

何か裏があるのではないかと疑るような視線。それを涼しげな笑みで交わし、ジフンは自分のロッカーへと手をかけた。

「10時に迎え行くから準備しておいて」

「まだ行くとは言ってねぇだろ?」

勝手に決め付けられては行く気も失せる。相変わらず天邪鬼な性格だ。彼と過ごしていた頃はその性格も鳴りを潜めていたというのに、最近では前にも増してしまった。

「そう?」

自信満々な問い返しにさらに疑惑が増す。いったい、何を企んでいるのだろうか。しかし、性格の悪いジフンの思考など読めるはずもない。かといって思い通りに動かされるのも癪に障る。

どうしようかと悩んでいるといつの間にかジフンの姿はなくなっていた。

「あの野郎…」

しかし、文句を言いたくてもその相手はすでにいない。気持ちに区切りをつけるように息をつき、ヴァネスはカバンを手に立ち上がった。

久しぶりに自炊でもしようと、車に乗り込みながら考える。そしてエンジンをかけるとすぐに車はゆっくりと走り出した。

適当に食材を購入して、家へとたどり着く。買って来たそれらを並べていまさらながらに何を作ろうかと考える。

別段、お腹が空いているわけではなかった。ただ、時折忘れた頃にやってくるジンを変に不安がらせたくはないだけ。たった少し痩せただけでも彼は敏感に気づいてしまう。

どうせ逢えるならば笑顔が見たい。食事を取るという行為も、すべての理念は彼がどう感じるかにのみ基づいている。

「…」

気づけば彼の好きなものを作っている自分に気づく。できあがったオムライスを眺め、苦笑しながらもテレビを相手にそれを口へと運ぶ。そして彼の好きな酒を飲み、ベットへともぐりこんだ。

眠る間際になってジフンの言葉を思い出す。迎えに来たなら来たでそのときに準備をすればいいだろう。それに、どこへ行くのかもわからない。準備のしようもないと、ヴァネスは静かに目を閉じた。

どこか遠くから音が聞こえてきた。鳴り止まない音に意識がゆっくりと浮かび上がっていく。まだ重たいまぶたを開けばまくら元では携帯電話が、そしてリビングからは来訪を告げる音が喧しいほどなり続けていた。

「…」

時計に目をやれば午前10時。そういえば迎えに来ると言っていた。携帯電話を手にして、リビングへと向かう。

「朝っぱらからうるせぇな…」

そう携帯電話の向こうにいる相手へ、愛想のかけらもない声で応じた。すると聞こえてくるかすかな笑い声。

『オレじゃなくても同じコトが言える?』

意味深な答えに眉根をひそめる。そして次の瞬間、ヴァネスは目を見開いた。モニターを見遣れば眉間に皺を寄せ、頬を膨らませた彼が一心不乱にインターホンを押していた。

応じるよりも早く開錠ボタンを指先が押す。モニターに映っていた彼は自動ドアが開くと同時に中へと駆け込んだようだ。

「おい、ジフン。これはいったいなんの真似だ…っ」

彼が一緒なら一緒だと、予め言っておいてほしいものだ。そうすればこんなに慌てることもなったし、昨夜のうちに出かける準備を済ませていた。

『迷惑だった?それならジンにそう言ってもイイよ?』

そんなこと、口が裂けても言えるわけがない。苦虫を噛み潰したように顔をしかめ、これ以上話していても意味はないと通話を切った。そして扉を開ければいままさにインターホンを押そうとしていたジンがいた。

「ヴァネス、おっはよ~っ」

こぼれる幼い笑顔に懐かしさを覚えてしまう。かつてのように、抱きついてくるジンを抱きとめ、ヴァネスは思わず笑みを浮かべた。

「こら、ジン。あんまりくっついてっとキスするぞ?」

脅しの意味でそう告げれば、思いがけず唇にぬくもりが触れた。突然のことに驚いて身体を離し、呆然とジンを見つめる。

どうしたのだろうかと、不思議そうに首をかしげるジンに思わず苦笑を浮かべた。

「普通、トモダチにキスはしねぇだろ?」

「そうなの?オレ、ジフン兄貴ともするし、エリック兄貴ともするし、カンタ兄貴ともするよ~?」

「…」

いったい、ジンの中で友だちの定義はどうなっているのだろうか…。思わず不安を覚えてしまう。そんなヴァネスの気持ちなどお構いなしにもう一度口づけ、非の打ち所がないような笑顔を浮かべた。

「早く行くよ~?」

「…ってか、まずどこへ行くんだ?行き先を聞いてねぇから、何ひとつ準備できてねぇよ」

そう言われて初めてヴァネスが寝起きだということに気づく。笑顔がなりを潜め、代わりにむくれた表情が現れた。

「10分で準備してっ」

「だから、どこ行くんだって聞いてんだよ」

ひとの話を聞いているのか、いないのか。不機嫌そうな瞳を見つめ、怒るなとなだめるように頭を撫でる。

「プール行くの~」

「プール?この時期にか?」

「いいから早く~っ」

急かすように背中を押し、バスルームへと送り出す。しょうがないとため息をひとつこぼし、ヴァネスはシャワーを浴び始めた。

ひげも綺麗にそり、髪を乾かす。プールに行くのならセットする必要はないだろうと、一度は手に取ったワックスを元の位置へと戻した。

バスルームを出ればすでにソファの上に着替えが一式。どうやらジンが用意してくれていたようでその脇で退屈そうにタバコを燻らせていた。

手早く服を着替え、ヴァネスはソファで膝を抱えているジンの頭を撫でた。そして咥えていたタバコを抜き取り、灰皿へと押し付ける。

「待たせて悪かったな。ほら、行くぞ?」

わきの下へ手を入れ、軽々とその身体を持ち上げる。きょとんとした幼い表情に苦笑しながら、ヴァネスはその頭を撫でた。

「オレ、痩せた~?」

確かに以前も抱き上げられていたが、こんなに軽々とはいかなかった。まるで子どもでも抱き上げるように易々と抱き上げられてしまったジンはそんな疑問をヴァネスへと投げかけていた。

「ちげぇよ。言っただろ?ジムで鍛えてるって」

「…」

だからといってそんな簡単に持ち上がるものなのだろうか。なかなか消化しきれない疑問。眉根を寄せて動かなくなってしまったジンに呆れたような笑みを浮かべ、ヴァネスはそっと手を取った。

「こんなトコでぐたぐたしてっと遊ぶ時間がなくなるぞ?」

その言葉に俯いていた顔が勢いよく持ち上がる。確かにその通りだ。時計を見ればすでに10時半。30分も時間を無駄にしてしまったと、ジンはヴァネスの手を引いた。

「早く~っ」

「わかった、わかった。そんなに引っ張るなって」

まるでこれからデートにでも行くようだ。やはり以前よりもいまのほうが断然恋人らしいような気がする。肩を並べて歩きながら、ヴァネスはその横顔へと見入った。

「…?」

視線に気づいて振り返ったジンが小さく首をかしげる。気持ちを誤魔化すように笑みを浮かべ、少し乱暴に頭を撫でた。

「どこのプールに行くんだ?」

「ホテルのプール貸切ったの~」

確かに貸切でもなければジンがプールになど入れるわけもない。労わるように背中を撫でればジンは再び首をかしげた。

「痛くないよ~?」

「そうか?でも、また来月ちゃんと診せに来いよ?」

「うん」

かつての病院嫌いが嘘のように笑顔でそう応じる。エントランスを抜けて外へ出れば1台の車が待ち構えていた。

「おはよう、ヴァネス」

「…」

意味深な笑みを浮かべ、助手席から顔を覗かせるジフンに思わずため息がこぼれる。この同僚にはいつも驚かされてばかりだ。

文句を言いたいのは山々だが、ジンがいる前では口にできない。仏頂面で後部座席へと乗り込み、ヴァネスは思わず隣にあった大きなカバンへと目を留めた。

「…?」

尋ねようと顔を上げれば意地の悪い笑みがそこにはあった。そうなると聞くこともできない。またも言葉を飲み込み、ヴァネスは再び重いため息をこぼした。










続く。
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