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Close your Eyes ep.92-2



HP『Sweet Drops』用に書かれた作品になります。原文のまま転記したので長文になります、ご了承ください。












プールへとたどり着くなり、服を脱ぎ散らかしながら駆け寄っていく。ぎょっと目を見開くヴァネスにクスクスと意地悪な笑い声が聞こえてきた。

「大丈夫だよ。下に水着つけてるから」

「…」

用意周到というべきか、子どもっぽいと言うべきか。散らばる服を拾い集めながら、ヴァネスはいままさにプールへと飛び込もうとしている彼の名を呼んだ。

「こら、ジン。ちゃんと準備運動してから入れっ」

ビクッと身体を揺らし、つんのめりそうになりながら身体を止める。手をばたつかせながら必死に落ちるのを堪えるジンを見つめ、ヴァネスは息をついた。

ふと、また隣から聞こえる笑い声。じと目で振り駆ればひどく楽しげに笑うジフンの姿があった。

きっと自分が言うだろうからあえて言わなかったのだろう。思惑通りの行動をしてしまったと後悔してみても、いまさら遅い。後悔とは読んで字の如く、後から悔やむものだ。先に悔やめるはずもない。

額を押さえながら大きなため息をひとつごぼすと、聞こえてくる何かが落ちる音。顔を上げればプールサイドに水しぶきがあった。

「落ちちゃったみたいだね?」

「…」

本当にいい性格をしている。しかし睨んでみてもジフン相手に通じるわけもない。涼しげな笑顔で颯爽と脇を通り過ぎ、ビーチチェアへと荷物を置いた。

なんとなく、自分がここにつれてこられた意味がわかった気がする。確かにひとりではジンの相手をするのは大変だ。何しろ、人並みはずれた体力を持っている。そしてジフンは平均的、自分は若干ジンに近い部類だろう。

「よろしくね?」

「…」

決定的な一言だ。しかし、文句を言うことはできない。ジンと一緒にいられるのだから、それくらいは許容しろということだ。

ジフンからプールへと視線を移せば、顔を少しだけ覗かせたジンが申し訳なさそうにこちらを見ていた。どうやら怒られると思っているようだ。

「ったく…しょうがねぇな…」

つれない言葉をこぼしながらもどこか楽しげな表情。それを盗み見て、ジフンはそっと微笑んだ。

本気で嫌がっているわけではないことを、誰よりも理解しているつもりだ。ただ少し、素直になれないだけ。内心はジンと一緒にいられることを嬉しく思っているはずだ。

いったん、ジンをプールから引き上げ、ともに準備運動をする。時間をかけて身体を解し、ヴァネスは促すようにプールを示した。

「ヴァネスは~?」

「この格好で水に浸かれって?すぐ戻るから、待ってろ」

「は~い」

本当に待っていてくれるようで、プールサイドへと座り込んで温水に足を浸す。少しつまらなさそうに唇を尖らせ、それでもジンはヴァネスがやってくるのを待っていた。

最初から、計画をされていたんではないかと疑ってしまう。水着を購入しようと扉へ向けて歩き出せば、突然視界の隅を何かが飛来した。反射的にそれを受け止め、投げた張本人を見遣る。

「ジンからプレゼント。早く着替えてこないとむくれちゃうよ?」

「…」

いぶかしむように眉根を寄せ、手元にある袋へと瞳を落とす。袋の中へ手を入れて中身を引きずり出せば、それは真新しい水着だった。

驚きに目を見開けば、かすかに笑う声。ばつが悪そうに顔を背け、ヴァネスは更衣室へと消えていった。そして5分ほどで現れたヴァネスは紐を結びながらジンの元へと歩を進める。

足音に顔を上げ、その姿に笑顔を浮かべる。抱きしめたいとこみ上げる欲求を寸前で飲み込み、震えた手を握り締めた。

「ふふふ~」

「なんだよ?どっかおかしいか?」

「ううん、違うの~。似合っうな~って思ってただけ~」

昨夜、帰宅したジフンを伴って買って来たそれ。選ぶのに2時間もかかってしまった。ヴァネスへの初めてのプレゼント。はにかんだ笑顔を見つめ、こんなことならばもっと早くに贈り物をしておけばよかったと思う。

「ジフン兄貴~、ビーチボール~」

着替えている間に膨らませていたのか、ジフンはビーチボールを手にジンへと歩み寄る。

「はい、思い切り遊んでおいでね?」

「うん!」

微笑むジフンに笑顔で頷き、そして右手をヴァネスへと差し出す。考えるまでもなく、手が重なり合う。そして引き寄せられるまま、プールへと身体を沈めた。

ジフンがプールサイドからビーチボールを投げ入れる。手はずっと繋いだまま、ふたりは浮かぶビーチボールへと手を伸ばした。

泳ぐのが目的なのか、それともビーチボールで遊ぶのが目的なのか。左右前後に行き交うビーチボールを夢中で追いかける。ジンにつられてか、ヴァネスも時間を忘れて遊んでいた。

ビーチチェアに身体を預け、持参した本をゆっくりと読んでいた。ふと、何かに呼ばれた気がして顔を上げる。するとそこにはジンを抱えたヴァネスが歩み寄ってくるところだった。

「エネルギー切れ?」

「らしいな。ぱったりと動かなくなっちまった」

うつぶせのままプールに浮かぶものだから、慌てて抱き上げればお腹が空腹を訴えるように鳴く。思わずこけそうになりながらもヴァネスはその身体を肩に担ぎ上げてプールを脱出してきたのだった。

とりあえずと身体をタオルで包んでビーチチェアに横たえる。そしてヴァネスはミネラルウォーターを半分ほど飲み干し、小さく息をついた。

「なんか買ってくるか?」

「大丈夫だよ」

問いかけるヴァネスにそう告げ、ジフンは脇においてあった大きなカバンを示した。それは、ここへ来る途中ずっと気になっていたもの。

じっと注がれるヴァネスの視線を感じながらもジフンはその大きなカバンを膝に乗せ、中身をひとつずつ丁寧に取り出していった。

「…」

「ジンが早起きしてヴァネスのために作ったんだよ?」

わざわざそういう言葉を選んでそう告げる。故意だとわかってはいながらも、喜びに鼓動が高鳴ってしまう。その様子を見つめ、ジフンはそっと微笑んだ。

「とりあえず…はい、おにぎり」

差し出されたそれ。受け取ってみたはいいが、ヴァネスは思わず眉根を寄せた。右手に乗ったそれはずっしりと重い。しかも、どうやらサッカーボールを見立てているようだ。

「…ジンは普通に弁当、作れねぇのか…?」

「見本はミヌが作ったウォンタクのお弁当だから」

子どものお弁当なら確かにこれは喜ばれるだろう。しかし、ここにいるのはいい年をした男だけ。どうにもこのお弁当は不釣合いだ。

「ほら、ジン。ちゃんとエネルギー補給して」

同じようにおにぎりを差し出す。しかし、腕を持ち上げる余力も残っていないようで、口だけがぱかっと開いた。

「一口じゃ食べきれないでしょう?ちゃんと手でもって食べて」

ジフンの言葉を理解しながらも、身体は思うように動いてくれない。じわりと涙が瞳に浮かび、訴えかけるように視線がおにぎりへと注がれていた。

しょうがないヤツだ。

かすかに苦笑を浮かべ、ヴァネスはジフンの持っていたそれをもう片方の手で受け取った。そして、それをジンの口へと運ぶ。

「動けるようになったらちゃんと自分で持てよ?」

ソフトボールの大きさくらいはありそうなそのおにぎり。夢中でそれを頬張りながらジンは小さく頷いた。1個食べ終えれば、手を動かせるくらいには回復したようだ。

もうひとつ、おにぎりを食べれば身体が起き上がる。そして左手に2個目のおにぎり、右手では箸を手に卵焼きを持ち上げた。

いったい、誰のために作ってきた弁当なのか。ジンの食べっぷりを見ているとわからなくなってしまう。その様子を見つめていたふたりは顔を見合わせ、示し合わせたように苦笑した。

気づけば半分以上は、ジンの胃袋へと収められていた。ようやく満足したのか、幸せそうな笑みを浮かべながら膨れたお腹をさする。

すっかり空となったお弁当箱をカバンへと戻し、ジフンはタバコを取り出した。つられるようにヴァネスもまたタバコを咥える。

紫煙を燻らせながらしばし休憩をしていると、不意に携帯電話が鳴り出した。咥えタバコのまま携帯電話を引き寄せ、浮かび上がった名前に目を輝かせた。

「ジェジュン君~っ」

開口一番、そう名を呼ぶ。かすかに聞こえてくる笑い声にジンもまた笑顔を浮かべた。

『いま、どこにいるんですか?声が反響してます』

「プール来てるの~」

『ひとりでですか?』

そんなはずはないだろうと思いながらも、確かめるようにそう問いかける。案の定、返ってきた言葉は否定するものだった。

「ジフン兄貴と、ヴァネスもいるの~」

『…ヴァネス、さん…?』

幾分、低くなった声。首をかしげながらジンは不安げに名を呼んだ。その様子にジフンとヴァネスは苦笑を滲ませながら小さく息をつく。

ホテルの名前を告げるジンに、きっと数時間後にはジェジュンが来るだろうことを容易に想像する。

誰だって自分の恋人が、関係のあった人間と一緒にいるとわかったら冷静ではいられないだろう。ジェジュンの心境を考えると自然と同情が芽生えてしまう。

一番理解して欲しいだろうジンには伝わらず、その場に居合わせたふたりだけが慮る。可哀想に、そう心の中で呟きながらふたりはそっと紫煙を吐き出した。










続く。
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