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Close your Eyes ep.92-3



HP『Sweet Drops』用に書かれた作品になります。原文のまま転記したので長文になります、ご了承ください。












しばしの休憩を挟み、ジンは再びプールへと飛び込んでいった。ひとり気ままに泳ぐジンを眺めながら、ヴァネスは先ほどまでジンが占領していたビーチチェアへと腰を下ろす。

「泳がないの?」

「オレの体力は底なしじゃねぇよ」

声がかかるまでは休んでおこうと、ひとつ息をつく。タバコを取り出してはみたが、なんとなく吸う気になれない。代わりにペットボトルを手に取り、口へと運んだ。

「ヴァネスのところに来てるインターンはどんな感じ?」

1ヶ月ほど前からやってきている実習生。こんなところで仕事の話も野暮だと思いながらも、ずっと聞きたいと思っていたせいか飲み込むことはできなかった。

「…なんだ?うまく行ってねぇのか?」

「ちょっとね…。なんていうか、頭でっかちな感じ。知識があるのはイイことなんだけど、そのせいで人の話を全然聞かない」

確かにそれはやりづらいだろう。臨床経験があってこその職務だ。教科書どおりにことが運ぶなど皆無といっても過言ではない。

「それに、社交性ってモノが欠如してるかな?おかげでクランケとのコミュニケーションがないまま話をするもんだから、苦情ばっかりだよ」

「そいつは災難だな…。まぁ、オレんトコに来てるヤツはまだマシかな?ただ、外科志望のクセしてオペ中に貧血起こして倒れやがった」

血を見るたびに貧血を起こしていたんでは仕事にならない。オペのできない外科医など論外。役立たずもいいところだ。

「ヴァネスのトコも大変みたいだね…」

どうやら苦労しているのは自分だけではないようだ。以前、眼科医であるカン医師にも同じ質問をしてみたが、答えは芳しくなかった。

「まぁ、それもオレたちの仕事だからやるだけのコトはやってやんねぇとな」

なんとなくヴァネスらしからぬ言葉だと思う。少し前ならば使えないと一言で切り捨てていただろう。

かすかに微笑めば、少しばつが悪そうに少し乱暴に頭をかきむしる。誤魔化すようにタバコを咥え、その先端に火を灯した。

「アイツ、あんなトコで寝てやがる…」

顔を上げた視線の先。意識せずともその姿が目に入った。その言葉にジフンもまた顔を上げ、ふっと苦笑を滲ませる。

さきほどまで元気に泳いでいたはずのジンは、いつのまにか持参したシャチフロートの上で惰眠を貪っていた。

「器用なもんだ」

あんな不安定な場所でよく眠れると思わず感心してしまう。落ちない保障があるのならあのままでもいいが、そんな保証はどこにもない。

「しょうがねぇな…」

火をつけたばかりのタバコを灰皿へ置き、立ち上がろうとしたそのとき、突然扉が勢いよく開いた。振り返ればそこにはサングラスを着用した青年がひとり立っている。

「ずいぶん早いご到着だね…」

「…まったくだ」

早くても来るのは夕方だろうと思っていた。サングラスを外しながらこちらへと歩み寄ってきた青年は、ヴァネスを一瞥し、ジフンへと視線を送った。

「こんにちは、ジフンさん。ジン兄さんは?」

「あそこに浮かんでるよ」

示された指先を視線で追いかけ、ジェジュンはその姿に思わず目を見開いた。そして自然と硬かった表情が和らいでいく。

シャチフロートからこぼれた手足は水面でゆらゆらと揺れていた。そしてその上では無防備な寝顔を浮かべ、気持ちよさそうに漂っている。

思わず気が抜けてしまう。

その様子を見れば、自分が危惧していたことなど何ひとつなかったことは明らかだ。もちろん、それは小さな不安。いかがわしいことなどないとはわかってても、この目で確かめないと安心できない。

静かにプールへと向かって歩き出す。そして縁で足を止め、膝をかがめた。

「ジン兄さん」

自然と、優しい声が口からこぼれていった。その声が聞こえたのか、ピクリとまぶたが震える。そしてまぶたの裏から眠たげな瞳が姿を現した。

ぼんやりとした視界におぼろげながら浮かぶ人影。眠気が去っていくのと比例して、その姿がはっきりと映し出された。

「ジェジュン君だ~っ!」

目を輝かせながら何度もその名を呼び、ボートを漕ぐように両手で水をかきながらジェジュンへと近づいていく。そしてシャチフロートの先端が縁に当たって止まると、水をかいていた両手を精一杯伸ばした。

濡れることも厭わず、笑顔で手を差し伸べる。そしてその身体を抱き上げ、柔らかな頬にそっと口づけた。

「身体が冷えちゃってますよ?」

確かに言われてみるとそのようだ。いつもならひんやりとして気持ちいいはずのジェジュンの身体があたたかく感じられる。その心地よさに目を細め、ジンは優しい香りに擦り寄った。

「今日はどうしたの~?」

「少し時間が取れたんです。だからジン兄さんに逢いたくて、来ちゃいました。迷惑でしたか?」

そんなはずはないと大きくかぶりを振り、うなじへと頭を預ける。来週まで逢えないと思っていた分、今日逢えたことは嬉しい出来事だった。

「あと1時間くらいは一緒にいられます」

「ホント?」

「はい」

1時間はあっという間だ。けれど、忙しいスケジュールの合間を縫って逢いにきてくれた。それだけで心が満たされていく。

少し離れた場所で寄り添う姿をぼんやりと眺める。心が痛まないといえば嘘になるが、それ以上に幸せそうなジンの姿が心を穏やかにしてくれた。

「吹っ切れてるの?」

「…吹っ切る、ってのとはちょっと違うかな…。ただ、まぁ、なんていうか…予想してたコトだからそんなにショックではねぇよ。それに、ジンも幸せそうだしな」

「ずいぶん健気なんだね?昔とは大違い」

確かにその通りだ。しかし、人に改めて言われると恥ずかしさと気まずさがこみ上げてくる。顔をしかめながら灰皿においてあったタバコを指先でつまみ、口へと運ぶ。

たぶん、これから先も彼以上に愛せる人間など現れないだろう。言葉にするのは恥ずかしいが、それでも一世一代の恋だったと胸を張って言える。

「まぁ、オレも似たようなモンだけどね」

「…」

確かに、出逢った頃とはだいぶ違う。お互い、恋愛はゲームの一環という認識しかなかった。不特定多数の人間と深入りしない程度に付き合う。いま思えば、そんなものは恋愛なんかではないと言い切れる。

「今度はもう少しマシな恋愛しなよ?ちゃんと、ヴァネスだけを見てくれる人と一緒になって」

「…アイツより好きなヤツなんてこの先現れねぇよ」

「ヴァネス…」

ジフンが柄にもなく、自分のためを思って言ってくれているのはわかっていた。だからこそ、適当な言葉は返せない。

「でも、そうだな…。もし、アイツ以上に誰かを愛せたら…今度こそ絶対、手に入れてみせる」

「…そういう人、現れるといいね…」

「あぁ」

なんとなく、くすぐったい空気だった。普段の自分たちからは考えられないような会話。耐え切れず身震いすればかすかに笑う声が聞こえてきた。きっとジフンも同じ気持ちだったのだろう。

つられて笑い始めれば、不思議そうにジンがふたりを振り返った。ジェジュンもまた、何が起こったのかとふたりに視線を向ける。

「どうしたのかな~…?」

「どうしたんでしょうね…」

気になってうずうずする。しかし、なんとなく聞いてはいけないようが気もする。ふたつの気持ちに揺れ動く心。眉間に皺を寄せながら考え込むジンにジェジュンはそっと微笑んだ。

「ジン兄さん、明後日の準備はもうできてますか?」

気持ちを他へ向けさせようと問いかければ眉間に刻まれた皺は一瞬にして解け、再び笑顔がこぼれた。そして大きく頷き、離れかけた手をぎゅっと握りなおす。

「いつでも出発できるよ~」

いますぐにでも出発できると自信満々でそう告げ、尋ねるように首をかしげる。

「実はまだなんです。昨日も家に帰れなくて…今日、早めに仕事が終わったら準備しようってみんなで話してました」

「お手伝いしに行こうか~?」

「大丈夫です。ジン兄さんは僕が迎えに行くまで、いい子で待っててくださいね?」

「うん、わかった。待ってる~」

明日は逢えないだろうが、明後日からはずっと一緒だ。寂しい気持ちはあるが、それ以上に嬉しく思える。仕事という名目が最重要課題だが、早く終わらせれば時間はいくらでも作れる。

帰ったら早速撮影計画を練ろうと課題をたて、ジンは意気込むように大きく頷いた。

優しくなでられる感触に、自然と目が細くなる。もっととせがむように頭を寄せるジンに微笑み、ジェジュンは求められるまま髪を撫で続けた。

甘えられるだけ甘えていると、あっという間にしばしの別れが訪れた。でも、次の約束があるからか不思議と寂しくはない。

「じゃあ、また明後日ですね。メールしますから」

「うん、オレもする~」

水着姿では表まで送って行くことはできない。扉を境に別れを告げ、大きく手を振りながらジェジュンの姿が見えなくなるまで見送った。

時計を見遣れば15時を少し過ぎたところだった。もう少し遊べる時間があると、ジンは再びプールへと駆け戻っていった。

「ヴァネス、遊ぼ~っ」

プールへと飛び込み、浮かび上がってきたジンはそう告げながらヴァネスを手招いた。昼寝をしたおかげですっかり体力は回復したようだ。

「はい、ビーチボール」

当然のように笑顔でビーチボールを差し出すジフンを一瞥し、何かを思いついたようにヴァネスは水に浮かんでいるジンを振り返った。

「ジン、ジフンとは遊ばなくてイイのか?」

「遊ぶ~っ!」

「…だってさ?ほら、さっさと行くぞ」

ささやかな仕返し。苦笑を滲ませ、ジフンはひとつため息をついた。ジンに誘われてしまったら断るわけにはいかない。それに、残りは数時間。それくらいならば大丈夫だろうとジフンは上着を脱ぎ捨てた。

肩を並べてプールへと歩み寄り、水へと身体を浸す。そしてふたりはジンが満足するまで遊び続けた。










続く。
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