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Close your Eyes ep.92-4



HP『Sweet Drops』用に書かれた作品になります。原文のまま転記したので長文になります、ご了承ください。












時間ギリギリまでプールを満喫し、シャワールームへと向かった。先ほどまでは遊ぶことに夢中だったジンがいまは少し塞ぎこんだ様子だ。

甘えるように身を寄せるジンに苦笑し、ためらいがちにその身体を抱きしめた。

「ジェジュンが帰っちまったから寂しいのか?」

そう問いかければ素直に首肯した。すぐに逢えるとわかっているのに、どうしても寂しさが心を襲う。いまだ”別れ”には臆病なジンだった。

「心配すんな。アイツはいなくなったりなんかしねぇよ」

「…おばぁちゃんは、突然いなくなっちゃったもん…」

目の前で失われていった命。幾分立ち直りはしたものの、いまだ根本は解決されていない。病とも言うべきその思考は心に深く根付いていた。

「…アイツは運がイイよな…」

「…?」

ぽつりとこぼされた言葉。不思議そうに首をかしげながら顔を上げたジンに微笑み、優しく頭を撫でた。

「芸能人になるだけでも大変なのに、その上アイツはトップクラスだ。そんな運のいいヤツが簡単に死ぬワケない。そう思わねぇか?」

「…」

言われてみると確かにそんな気がする。根拠など何ひとつないが、自然とヴァネスの言葉は心に浸透していった。

足元に落としていた視線を持ち上げ、じっとヴァネスを見上げる。そしてジンはコクリと小さく頷いた。

「ほら、頭洗ってやるから来い」

「うん」

ひとつのシャワールームをふたりで使う。胡坐をかいて座り、薄く開いた視界に見えるのは自分の髪だけ。ちらりとヴァネスを見上げ、ジンは小さく首をかしげた。

「どうした?」

「ねぇ、ヴァネス~。どうしたらジェジュン君みたいなさらさらになれるの~?」

「…縮毛矯正でもしてみりゃなるんじゃねぇの?」

指先で髪をひとつまみして引っ張ってみる。実際、したことがないからどこまで変わるかはわからないが、少なからず効果はあるだろう。

髪に馴染ませたトリートメントを洗い流すと、ジンは勢いよく立ち上がった。

「シュクモウキョウセイしてくる~っ」

一度決めてしまったら突っ走ることしかできない。きっと、これから美容院へ行くつもりだろう。走り去っていく背中を見送り、ヴァネスが苦笑とともにため息をついた。

「しょうがないヤツだ」

そう呟き、とりあえずと自分もまた髪を洗う。そしてプールサイドへ戻っていくと、残された荷物に囲まれたジフンがソファに取り残されていた。

「ジンは?」

「美容院行ってくるって」

案の定だ。くっとかみ殺したように笑い、ヴァネスはとりあえずと目の前に腰を下ろした。そしてタバコを燻らせ、しばし休憩時間を取る。

「飲みにでも行く?」

「いや…今日は帰るよ。さすがに疲れたしな」

そしてふたりは荷物を手に駐車場へと向かった。行きはジンが運転していたその車をジフンが運転して帰る。ヴァネスをマンションの前で下ろし、ジフンはひとり家へと戻っていった。

「…ジンは?」

車のエンジン音に誘われて事務所から顔を出したドンワンは一緒に出かけたはずの彼がいないことに眉根を寄せた。

「美容院行ってくるって。ホンマンも一緒だったから大丈夫だよ」

「ふぅん…」

納得はしているのだろうが、少しつまらなそうな横顔。ひとりで運ぶのは大変だろうと、荷物を両手に持ち、ドンワンは家の中へと入っていった。

ジフンから遅れること4時間。ようやく帰宅したジンにリビングに揃っていた面々は目を見開いた。

「どう、どう~??」

見事なまでに艶のあるストレートヘアー。それを手に入れたジンは嬉しそうに幼い笑顔を浮かべ、自慢するように髪をなびかせる。

伸びていた髪もさっぱりとし、少し幼く見えた。ものめずらしそうにミヌが髪へと手を伸ばせば、つられるように全員が髪に触れる。そうして、いつもとは少し違う夜が過ぎていった。

あまり汗をかいてはいけないし、濡らしてもいけない。美容師の注意を受け、翌日は家の中でおとなしく過ごしていた。そして、さらに翌日。

シャワーを浴びても髪はストレートのまま。いつも濡れるとうねっていた髪が嘘のようだ。

荷物をまとめ終わり、時計を見遣ればまだお昼前。ジェジュンが迎えに来るのは夕方ごろだといっていた。まだ時間はたっぷりある。

「そうだ…」

何かを思いついたように、ジンは階段を駆け下りていった。そして車へと乗り込み、自宅を後にする。たどり着いたのは馴染みの病院。

車を駐車場へと乗り入れ、エンジンを切ると同時に駆け出していく。受付ロビーを通り過ぎ、ジンはひとつの扉の前で足を止めた。

ノックをしてみると愛想のない声が聞こえてきた。そろりと扉を開けて中を覗き込めば、机に向かうその姿が視界に飛び込んできた。

そっけない返事だったからか、部屋へ入るのが躊躇われる。しばらく窺っているとくるりとイスが回転し、その人はこちらを振り返った。

予想もしていなかった人物に思わず目が見開かれる。少し怯えた風のその表情に苦笑を滲ませ、ヴァネスは持っていたペンを投げ捨て、ジンへと手を伸ばした。

「ジン、どうしたんだ?今日から仕事で日本に行くんじゃなかったか?」

先ほどとは違い、いつもの声音。不安が過ぎ去り、ジンは笑顔を浮かべてヴァネスへと駆け寄った。

「見て、見て~。シュクモウキョウセイ、かけてきたよ~」

ジフンに聞いてはいたが、大したものだ。いつもならばあちらこちらへと跳ねている毛先が今日はまっすぐに下へ向かっている。

「ストレートも似合うな」

「ホント?」

「あぁ」

思わず手を伸ばし、その髪をなでる。気持ちよさそうに目を細めるジンに笑みを深め、ヴァネスは静かにイスから立ち上がった。

「どうせ来たならメシでも食いに行くか?」

「うん、行く~っ」

続きは返ってきてからやればいいだろうと、白衣を背もたれにかける。自然と繋がれる手のひら。そしてふたりは静かな廊下を歩き出した。

「何が食いたいんだ?」

「ハンバーグ~。甘いニンジンが乗ってるヤツ~」

楽しげな声に自然と笑みが深まる。手を繋いだまま駐車場へと向かうふたりを、食堂へ向かう途中のジフンが見つめていた。

引き止める必要もない。

そう心の中で呟き、ジフンは再び歩き出した。その手のひらにはヘソンが作ってくれた弁当がある。自分のためにといつも持たせてくれる弁当だ。

いつかヴァネスにもそういう日が来てくれることを願いながら、ジフンは食堂へとひとり消えていった。


 
君がいる世界はいつでも光り輝いている。

その光が失われることないようにと願いながら、僕は今日も生きていく…。

 







written by.yue
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