スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

Close your Eyes ep.93-5



HP『Sweet Drops』用に書かれた作品になります。原文のまま転記したので長文になります、ご了承ください。












翌日はまたもリハーサルから始まった。とはいえ、昨晩のうちに移動しておいたおかげで朝はゆっくりだったので、疲労もだいぶ回復しているようだった。

開演直前に席へとついたジンとユファンは今日もまたそわそわとした様子でステージを見守っていた。いつものように巨大スクリーンに映像が映し出されればところかしこから聞こえる歓声。

やっぱりどこに行ってもすごい人気だと、ジンは自分のことのように笑顔を浮かべた。その瞬間、聞き覚えのある声がたくさんの歓声の中から聞こえてきた。

「う…?」

まさか、とは思いながらも聞き間違えるはずもないと忙しなくアリーナを埋めつくす人々へと視線を注いだ。

「ね、ねぇ、ユファン。さっき、ウォンタクの声聞こえなかった…?」

「…聞こえたぞ。しかも、オレの目にはくっきりはっきりウォンタクの姿が見えるぞ…」

「ど、どこ!?」

ユファンが指差したのはアリーナの最前列、花道の右側。ほぼ真ん中といっても過言ではない。そしてジンは思わず目を見開いた。

「ミ、ミヌ!?」

思わず席を立ってみたが、もうどうすることもできない。開演前ならばあそこに行くこともできるが、すでに開演してしまった。

「ど、どうしよう…っ」

「どうもできないぞ」

「…」

確かにこればかりはユファンが正しい。混乱しながらもとりあえず席へと腰を戻し、ジンはステージとアリーナとを交互に見遣った。

「なんか、ウォンタクの声が聞こえる…」

その頃、スタンバイを終えたユチョンもまたその声をしっかりと聞き取っていた。幻聴かと思い直してみたが、やはり声が聞こえる。

「ゆちょ~っ!」

この超音波的な声を聞き間違えるはずがない。いったい、どこにいるのだろうか。これだけ声が聞こえるのだから、そう遠くはないだろう。

ステージに上がったら何気なく探せばいい。そう結論付けたユチョンだったがしかし、思いがけず息を呑んだ。

ステージのど真ん中。花道の右側にその姿はあった。相変わらずの幼い笑顔を浮かべ、懸命に名を呼びながら小さな手を目いっぱい振る。

その驚きはユチョンだけに留まらず、メンバー全員に伝染していった。

いったいどういうことなのだろうか。コンサートを終えて、楽屋へとやってきたジンに聞こうと思ったが現れたのはユファンだけだった。

「ジンはウォンタクたちのトコに行ったぞ。すんげぇ驚いてて、コンサートどころじゃなかったみたいだな」

報告を終えたユファンはソファへと腰を下ろし、差し入れのクッキーへと手を伸ばした。ポリポリと絶え間なく食べる姿に、これ以上何を聞いても答えなど持ち合わせていないだろうと4人は諦めたように息をついた。

「ウォ、ウォンタクっ!」

人波に逆らいながらようやく彼らの姿が見えた。名を呼べば、ミヌの腕に抱えられていたウォンタクがくるりと振り返って幼い笑顔を浮かべる。

「ぱぁぱっ!」

ミヌの腕から飛び降り、駆け寄ってきたウォンタクを抱き上げる。そしてジンはさらに奥にいたドンワンの姿に目を見開いた。

「な、なにしてんの~っ!?」

「何って、東方神起のコンサートを観に来たに決まってんだろ」

ここにいる理由などそれ以外にはない。いまだどっかりと腰を下ろしたままだったドンワンは静かに立ち上がり、ジンを振り返った。

「お前はちゃんと仕事してんのか?」

「してるよ~っ」

「ほら、ケンカしないの。明日の朝には帰らないとなんだから、ふたりとも仲良くね?」

とりあえず、いつまでもここにいたのではスタッフの邪魔だ。移動しながらなぜここにいるのかと聞けば、なんでもチケットをもらったのだという。

いったい、どこに最前列ど真ん中のチケットを寄越す人間がいるというのだろうか。一度、顔を拝んでみたい。

「ジンのおじいちゃんがね、日本のお友だちさんからもらったんだって。年寄りが行ってもしょうがないから、みんなで行ってきなさいって」

出所は思いもよらぬところだった。がっくりと肩を落とし、とりあえずとウォンタクに急かされるまま廊下を進んでいく。そして楽屋へとたどり着くと、ウォンタクは一目散にユチョンの元へと駆けていった。

「来るなら来るって行ってくれれば迎え行ったのに…」

「仕事中のヤツに迎えなんか頼めるかよ」

「でも、せめてメールくらいくれても罰はあたんないと思うよ~?」

確かにその通りだと思う。しかし、ドンワンにも連絡できない事情というものがあった。ため息をひとつこぼし、恨めしそうに見つめるジンを見つめ返す。

「チケットもらったの、今朝だったんだよ。だから慌てて仕事片付けてこっち来た」

「け、今朝っ!?」

「あぁ。チケット無駄にしたくねぇけど、仕事が終わるって保証もなかったから連絡できなかったんだ。悪かったな」

「…」

チケットをもらったといってもここ2、3日ではないだろう。きっともらっておいて、その存在を忘れていたに違いない。

祖父の行動をそう分析し、ジンは重いため息をこぼした。

「ゴメンね~?おじぃちゃんにはちゃんと言っとくから」

「別にかまやしねぇよ。そんなしょっちゅうあるコトでもないだろうしな。じぃさんなりの優しさなんだから、それはそれで受け取っとけ」

「…」

絶対にそうではないと思いながらも、ドンワンがそう受け取ってくれているならばそれでいいだろうとあえてそれ以上は何も言わなかった。

「とりあえず、移動しましょうか?せめて夕飯くらいは一緒に食べましょう」

いつまでもここで話しこんでいるわけにはいかない。ジェジュンの言葉にみなが賛同する中、ジンだけは少しだけ申し訳なさそうに、誰にも気づかれぬようにその手を取った。

「ジェジュン君、ゴメンね…?」

「ジン兄さんが謝る必要はありませんよ。それに、また明日からはジン兄さんを独占できますし」

その言葉に胸を撫で下ろし、安堵の笑みを浮かべる。そして今日は福岡名物の水炊きだと、車2台に分かれて水炊き専門店へと向かった。

なんだかんだとステージ以外で様々な出来事が起こるコンサートツアー。福岡が終われば広島へ、そして名古屋、仙台、真駒を巡る。

そして最終的にたどり着いたのは、スタート地点の横浜から程近いさいたまだった。ファイナルということもあり、地方や海外からやってくる人々もいる。

1ヵ月半、東方神起とともに全国各地を移動してきたジンとユファンはこの日、最寄の駅へとやってきていた。そわそわと、何度も時間を確認しては嬉しそうに微笑む。

「ジン、まだか?」

「きっと、もうすぐだよ~」

どこかユファンも落ち着かない様子だ。改札口の中を見遣ったり、携帯電話を見てみたり。そんな折、ジンのポケットの中で携帯電話が鳴り響いた。

待ってましたといわんばかりに1コールで出たジンは聞こえてきた声に幼い笑顔を浮かべた。

「ボアちゃん、いまどこ~っ?」

『いま電車を降りまして、改札に向かっているところです。ジン兄さんはどちらにいらっしゃいますか?』

「オレ?オレね、改札のトコでユファンと一緒にボアちゃん待ってるの~」

受話器越しに聞こえるジンの声。そしてその裏からユファンの声もしっかりとボアの元に届いていた。人波に押されるように歩きながら、ボアは荷物を抱えなおして階段を登っていく。

そして改札を通り過ぎたボアは手を振りながら駆け寄ってくるふたりの姿にそっと微笑んだ。

「ジン兄さん、お久しぶりです。お元気でしたか?」

「うん、元気~。ボアちゃんは~?」

「はい、私も元気です」

挨拶を交わしているとかすかに咳払いが聞こえた。それでも気にせずに話しているとその音はさらに大きくなっていった。

「あ、ごめんなさい。ジン兄さん、ユファン君、ご紹介します。私のお友達でアヤです」

そう紹介されて初めてボアの隣に人がいることに気づいた。まるで観察されるような視線にジンは首をかしげ、何かおかしいだろうかと確認するように自分の格好を見直した。

「えっと…アヤちゃんって呼んでイイのかな…?」

「あ、ジン兄さん。ごめんなさい。アヤは日本人で、韓国語わからないんです。日本語か英語でお願いします」

そのせいで反応がなかったのだろうと、ジンは改めて微笑んだ。

「ハジメマシテ、チョンジンデス。ヨロシク、オネガイ、シマス」

「ジン兄さん、スゴイです。日本語もお上手なんですね!」

ボアが褒めれば微笑みは次第にいつもの幼い笑顔へと変わっていく。しかし、不思議なことにそれでも観察するような眼差しは緩むことができなかった。

「…?」

「失礼ですけど、ご職業は?」

日本語は不得手と感じたのか、流暢な英語で問いかける。きょとんとした表情を一瞬だけ浮かべ、慌てふためくボアをよそにジンはジーンズのポケットに収めてあった名刺入れを取り出した。

「えっと…どっちがイイのかな…」

取り出された2枚の名刺を素早く奪い取り、アヤは視線を名刺へと落とした。そしてそこにあった名前にぎょっと目を見開く。

「ド、ドコボの、会長っ!?」

「はい、そうです」

思わず名刺とジンとを見比べてみる。しかし、いま目の前にいる青年からは大企業の会長というイメージや威厳というものはまったく感じられなかった。

「ボアちゃん、とりあず行こ~?」

「はい」

「ちょ…っ、どこに行くのよっ!?」

どうしていつもボアの回りにはこういう珍種的な人間が集まるのだろうか。先を行くボアの背中を見つめながら、アヤは小さく息をついた。

「ところで…どこに向かってるわけ?」

「アリーナだぞ」

「そんなのわかってるわよ。だって、まだ開場までには時間あるでしょう?この時間からいてもしょうがないじゃない」

あと4時間以上もここで立っているなど冗談ではない。ただでさえ、コンサートが始まったら立ちっぱなしなのだからいまくらいは休みたいというのがアヤの本音だった。

「ボアちゃん、これ先に渡しておくね~」

「あ、ありがとうございます。ホ、ホントに私なんかが行ってイイんでしょうか?迷惑とかになったりしません」

「大丈夫だよ~。アヤちゃんのバックパスももらってくるからちょっと待っててね~」

ボアとユファンはゆっくりとした歩調で進み、ジンだけは駆け足でバックステージ入り口へと消えていった。耳慣れない言葉を聞いたアヤは思わず足を止め、ボアの背中を呆然と見つめていた。

「い、いったい、どうなってるワケ…?」

だんだんと理解ができなくなっていく。しかしボアは混乱しているアヤのことなどまるで気づいていないようだった。髪や服を調える姿にアヤは想像が正しいことを悟り、気が遠くなるのを感じていた。









続く。
にほんブログ村 BL・GL・TLブログ 二次BL小説へ
にほんブログ村
関連記事
スポンサーサイト

テーマ : BL小説 - ジャンル : 小説・文学

コメント
コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。