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Close your Eyes ep.93-6



HP『Sweet Drops』用に書かれた作品になります。原文のまま転記したので長文になります、ご了承ください。












首にかけられたバックパスを落ち着かない様子でいじる。前を行く迎えに来たふたりは、アヤのことなど気にも留めずわからない言葉で話していた。

「ボ、ボア。彼、何者なの…?」

「ジン兄さんですか?ジン兄さんはお友だちです」

「そ、そうじゃなくて…なんで、バックパスなんて持ってるのよっ」

小声でしかも早口な日本語。勉強中のジンにはさっぱり聞き取れない。しかし、ボアには通じているようだ。

「ジン兄さんは東方神起の専属カメラマンなんです」

「は!?」

その一言でバックパスを所有している理由はわかった。呆然としながら歩いていると、次第に人が多くなってきた。その理由はひとつしかない。

意識すると心臓は高鳴り、歩みが覚束なくなる。覚悟を決めていたならこんなことにはならないが、生憎と心構えは何ひとつできていない。

「ど、どうしましょう…」

落ち着かせるように深呼吸を繰り返していると、不意にそんな声が聞こえてきた。顔を上げれば、いままでは緊張など微塵もなかったボアが少し強張った表情で佇んでいた。

「ちょ、ちょっと!アンタが緊張してどうすんのよっ」

「だ、だって東方神起ですっ。生ジェジュンさんですっ」

何度か出逢ったことはあるが、どれもプライベート。”東方神起”として出逢うことにまだ免疫はない。憧れの芸能人がすぐそばにいると思うだけで、心臓が喧しいほどの音を立てていた。

気づけば目の前の扉には”東方神起”と印字された紙が貼られていた。つまり、すぐそこに彼らがいるということだ。

「ジェジュン君~」

「お帰りなさい、ジン兄さん」

かすかに聞こえてくる声は紛れもなく本人だ。緊張と混乱に頭が埋め尽くされていく。部屋に入ることもできず、ふたりは廊下でそわそわと動き回っていた。

「ボアちゃん?」

突然名を呼ばれると、まるで猫のようにびくりと身体を震わせる。振り返るとそこには不思議そうに首をかしげたジンが立っていた。

「どうしたの~?」

「な、なんでもありませんっ。大丈夫です~っ」

しかし声は震えており、とても大丈夫には思えない。眉根を寄せ、ジンはとりあえずとボアの手を取った。わずかに汗ばんだ手のひらにも構わず、その手を引く。

「みんな待ってるよ~?」

「は、はいっ」

緊張のあまり、右手と右足が一緒に動き出す。そんなボアの背中へ隠れるようにしながらアヤもまた室内へと足を踏み入れた。

「ス、スゴイ…本当に、東方神起…っ」

ここにいると頭ではわかっていたはずなのに、目にした瞬間思わずそう呟いていた。喉が渇き、無意識に生唾を飲み込む。

「ボアちゃん、久しぶり~。今日はボアちゃんが来てくれるって言ってたから楽しみにしてたんだ~」

「チャ、チャンミンさんっ。お、お久しぶりです…っ」

「ほら、そんなトコに立ってないでこっちおいで~」

いつの間にかひとりだけ取り残されてしまったようだ。ジンはジェジュンと、ユファンはユチョンと、そして頼みの綱であるボアはチャンミンとなにやら親しげだ。

「こ、これ…っ」

周囲の様子に気づかぬまま夢中で持ってきたプレゼントを突き出す。途中、何かに触れたようで、腕は伸びきらないまま不自然に固まっていた。

「オレに…?」

急に聞こえてきた声。そろっと顔を上げればそこには飲み物を取りにいこうとしていたジュンスがこちらも不自然な状態で止まっていた。

「うわぁっ!」

「え…?」

突然ほとばしった悲鳴に呆然としながらもジュンスは後ろを見ずに後ずさってしまったせいで転びかけているアヤの手を引いた。

「だ、大丈夫、ですか?」

「す、すみません…っ」

緊張のあまり顔が上げられない。思いがけず引き寄せられた腕の中、逃げることも振り払うこともできずアヤは硬直していた。

「これ、ホントにもらってもいいんですか?」

「は、はい…」

「ありがとうございます」

いつもテレビで観ていた姿がいま目の前にある。しかも声はスピーカーを通してではなく直に聞こえていた。そう認識すると余計に頭は真っ白になっていく。

落ち着くこともできないまま、ただ時間だけが過ぎていった。思えば、せっかく逢えたのだからいろいろなことを話してみたかった。しかし、もうすでに遅い。

「なんで、事前に言ってくれなかったのよ…っ。せっかくの生ジュンスだったのに、何も話せなかったじゃない…っ」

出てくるのは八つ当たりな言葉と、後悔ばかり。目の前には彼らが通るだろう花道があるのに、気分は一向に高揚してこない。

「アヤちゃん、なんで怒ってるの~?」

小声で問いかけるジンに微笑み、ボアもまた耳に口を寄せてそっと囁いた。

「緊張しすぎて何も話せなかったんです。だから、少し落ち込んでるみたいです」

「それなら心配いらないよ~。コンサート終わったら打ち上げだもん。一緒に来ればいっぱいお話できるよ~?」

ジンの言葉をそのまま伝えればふてくされた顔が一気に華やぐ。ユファンと話し始めていたジンの手をぎゅっと掴み、その瞳を見上げた。

「え?え?え?」

いったい、何が起こったのだろうか。突然のことに混乱していると突然感謝の言葉が告げられた。なんのことかと首をかしげているとボアが微笑みながら再びジンへと耳打ちした。

「打ち上げに招待してくれるから”ありがとう”ってことだと思います」

「なるほどね~」

それならば納得がいく。人懐っこい笑顔を浮かべ、喜びはしゃぐアヤを楽しげに見つめていた。辺りが暗くなり始め、歓声がこだまする。

いつもなら上の端のほうで観るコンサート。こうして熱気の渦に身を沈め、その熱を直に感じるのも悪くない。つい、大好きな彼の名前を呼びたくなってしまう。

どうしようかと悩んでいるうちに、一際歓声が高くなる。顔を上げればすでに5人がステージに現れていた。肉眼で見て取れる表情。その近さに、ジンとユファンもまた興奮を隠せなくなっていた。

「ユチョンっ!」

真っ先に名を呼んだのはユファンだった。確かにこの喧しさの中では目立つこともないだろう。花道を進んでくる5人に期待を膨らませ、目の前に来た彼にジンは手を振った。

「ジェジュン君っ!」

視線が絡み合い、かすかに微笑む。手を振り返すことはできないが、しっかりとジンの存在を確認したようだった。

毎回思う。あの細い身体のどこにこんなエネルギーが蓄えられているのだろうか。行き着く間もないほど広いステージを所狭しと駆け回る。そんな中で歌もうたわなければならないなんて過酷以外の何者でもない。

走り回った後で奏でられるバラード。いつもこの曲になると視線が向けられているような気がする。こっそりとボアに尋ねれば愛する人に捧げるための歌だという。

見つめられている意味を最終日にしてようやく知ったジンは頬を赤らめ、少しだけ恥ずかしそうに、でも嬉しそうにジェジュンを見つめ返した。

最終日ということもあり、ファンもステージに立つ5人も昨日までとは熱気が違う。

少しでも長く一緒にいたいと繰り返されるアンコールの嵐。それに応える5人は体力も限界だろうに、その期待を受け止めてステージへと戻ってきた。

しかし、時間は待ってくれない。これ以上はコンサートを続けるわけにはいかなかった。スタッフは拡声器を手にファンを外へと促す。ステージでは同じくスタッフが撤収作業に勤しんでいた。

「終わっちゃった…」

どこか悲しげな呟きに振り返れば、糸の切れたマリオネットのように座席へと収まり、うなだれているアヤの姿があった。それを少し涙ぐんだ瞳で懸命に励ますボアの姿。

すぐに逢えるというのに、どうしてこんなにも悲しんでいるのだろうか。いくら考えてみても理由はわからない。ユファンに尋ねてみても同様だ。

とりあえずと落胆するふたりの手を引き、ジンとユファンは楽屋への道を歩いていた。だんだんと近づいてくるにつれ、悲しげな表情がゆっくりと変化していく。

「打ち上げ…東方神起の打ち上げ…」

うわ言のように繰り返される言葉。まだ5人に許可を取ったわけではないが、きっと招待することを許してくれるだろう。そう思いながらジンは扉をくぐった。

「ジェジュン君~っ」

名を呼べばすでにシャワーを浴び終えたジェジュンが髪から雫をたらしながら振り返った。そしてジンを認め、そっと微笑む。飛び込んでくるその身体を両手で受け止め、ジェジュンは人目をはばからずその頬に口づけた。

「ジン兄さん、どうでしたか?」

「カッコよかったの~っ」

いつものように擦り寄っていると、半ば引き離すことを諦めかけていたユノは慌てたようにふたりを力ずくで引き剥がした。

「部外者…っ」

小声だが、威嚇するような声音。視線を辿ればぽかんと口を開けているアヤの姿。手を繋いだままジンは残念そうに肩を落とし、ジェジュンは苦笑を浮かべた。

「ホテルに帰ったらいっぱいぎゅってしましょうね?」

「うんっ」

いったい、なんなのだろうか。目の前で起こった光景がぐるぐると頭の中を駆け巡る。混乱しながらもアヤはボアの肩に触れた。

「あ、あのふたり、どういう関係なの…っ」

「ふたり…?ジェジュンさんと、ジン兄さんのコトですか?」

それ以外に何があるというのだろうか。ボアの言葉に大きく頷き、アヤは詰め寄るように顔を寄せた。

「普通、男同士でキスなんかするわけ?しかも、手なんかずっと繋ぎっぱなしじゃないの…っ」

「韓国では当たり前ですよ?」

確かにネットではそういう情報をよく目にするが、にわかには信じられない。日本の常識や道徳からは考えられない行為だ。

「ほら、ユチョンさんとユファンさんもです」

指差された方向を視線で追えば確かにボアの言うとおり、ふたりもまた仲睦まじい様子で手を繋いでいた。

「あのふたりは兄弟です。それで、ジェジュンさんとジン兄さんは…っ」

恋人同士。そう言いかけたところで思いがけず口が大きな手のひらに塞がれていた。その手の持ち主を探るべく視線を斜め上へと移動させれば、少し引きつった笑みを浮かべるユノが立っていた。

「そ、それは秘密でお願いします…っ」

どこか必死の様子。ボアは驚きながらもコクリと小さく頷いた。韓国語でのユノの囁き。言葉は耳に届けども、意味はさっぱりわからない。

「そろそろ移動しよ~?僕、お腹空いちゃった~」

そう皆を促しながら、さりげなくボアの手を取る。そしてチャンミンはメンバーの意見など興味もないようで、颯爽と歩き出した。

「ユファン、行くよ?」

「おうっ。オレも腹減ったぞ~」

またふたり、楽屋を去っていく。またもや置いてけぼりのアヤは呆然としたまま、先にチャンミンとともに行ってしまったボアの背中を見つめていた。

「ジェジュン君、オレたちも早く行こ~」

「はい」

アヤを気遣うべき人々はすでに歩き去り、残されたユノとジュンスは顔を見合わせながらため息をついた。まだ名前も知らないが、このまま放置しておくわけにも行かない。

「えっと…お名前、教えてもらってもいいですか…?」

意を決して問いかけると、アヤは大きく身体を震わせた。そしてその質問を投げかけたジュンスを呆然と見上げる。

「あ、あの、その…アヤ、です…」

「アヤちゃん…って呼んでもいいですか?」

「は、はいっ」

頬を赤らめながら力いっぱい返事をする。その様子を眺めていたユノは、心の中でひとり”なるほど”と呟いた。そして忘れ物がないことを確かめ、扉を閉めた。










続く。
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