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Close your Eyes ep.94-1



HP『Sweet Drops』用に書かれた作品になります。原文のまま転記したので長文になります、ご了承ください。












忘れていたはずの感情と、覚えたばかりの感情。

ふたつの想いが僕の心を侵していく…。
 


ひとり、取り残された気分だった。本当なら、母国にたどり着くまで短いデートを楽しめたはずなのに、当の相手は少し離れた場所で背を向けたまま話しこんでいた。

いったい、何があったのか…。

聞きたいのに、聞ける雰囲気はどこにもない。疑問を言葉にできず、飲み込むことしかなかった。青ざめた顔を強張らせ、手は震えを隠すようにポケットの中。

搭乗開始のアナウンスが流れても、いまだ動く気配はない。しかし、先に乗り込むわけには行かなかった。最終案内がされ、ようやくふたりは歩き出した。

「ジェジュン、ジンを頼む」

「…はい」

ホンマンが軽く背中を押しただけで、その身体が大きく揺らめいた。両手でその身体を受け止め、窺うようにしながら機内へと進む。

ただならぬ雰囲気に、いつもなら公共の場でいちゃつくなと怒鳴るはずのユノさえ何も言えない。

ファーストクラスの広い座席に小さく身体を丸め、ぬくもりを求めるようにジェジュンへと擦り寄る。伏せたまつげが揺れていることに気づき、ジェジュンは静かにその身体を抱き寄せた。

震えが止まることはなかった。自分の知らないことがまだあるという事実に憤る余裕さえない。ただ、何かを必死に耐えている姿に胸が締め付けられる。

「ジン兄さん、大丈夫です。僕がずっとそばにいます」

その言葉にどんな意味があるのかはわからない。けれど、ジェジュンは何度もそう囁き続けた。

休まるときもないまま、飛行機は母国へとたどり着いた。しかし、一向にジンが動き出す気配はなかった。かといって、ジェジュンもまた動くことはできない。

メンバーが代わりに飛行機を降りる準備を整え、身を寄せ合うふたりを振り返る。その視線を受け止め、ジェジュンはゆっくりと腕の力を緩めた。

「ジン兄さん、歩けますか…?」

問いかけると小さな頷きが返ってきた。顔色はさらに悪くなっており、足元も覚束ない。ジェジュンの支えなしでは歩けないのではないかと思ってしまうほどだ。

「ジン!」

クラスの違う席に座っていたホンマンが駆け寄り、その顔色の悪さに眉根を寄せた。これは想像以上だ。相当なダメージを心に受けてしまっている。

後でアメリカにいる彼へ連絡しておこうと決め、ホンマンはユチョンが持っていたジンの荷物へと手を伸ばした。

「迷惑をかけて悪かった。あとはオレに任せてくれ」

そう告げながらジンへと手を伸ばせば、思いがけずジェジュンがそれを拒んだ。見下ろせば突き刺さるような眼差し。ある種の決意を感じられた。

「僕も行きます」

「しかし…」

「ジン兄さんには僕がいないとダメなんです」

なんの根拠もないその言葉。しかし、ジンだけはそれを肯定するように震える指先でぎゅっとジェジュンの手を掴んでいた。

「ゴメン、ユノ」

仕事を疎かにするなど、普通ならばあってはならないこと。それはジェジュンも重々承知していた。しかし今回だけは譲れない。

無言のまま視線だけでのやり取り、根負けしたのは予想外にもユノの方だった。深いため息をつき、やるせない思いを誤魔化すように頭をかく。

「今日だけだからな…」

「…ありがとう」

この後は打ち合わせがあるだけ。ジェジュンひとりいなくてもなんとかなるだろう。

言いたいことは山ほどあるが、いまは言うべきときではない。すべての思いを飲み込み、ユノは振り切るように踵を返した。

「待て。外までは一緒に行く」

忘れてはならない。彼らもまた、ジンの大切な人間だ。言い換えればホンマンにとっては守るべき人間となる。このまま帰すわけにはいかない。

「すまないが、ジンを支えてやっててくれ」

「はい」

そう告げ、ホンマンは切りっぱなしだった携帯電話の電源を入れた。そして履歴から発信すればすぐに応答があった。

ほっと胸を撫で下ろし、ホンマンは辺りに注意を払いながら到着ロビーを後にした。出るとすぐに1台の車が滑り込んでくる。

見覚えのない車に戸惑っていると運転席と助手席からそれぞれ男性が姿を現した。

「ホンマン」

「ジェヨン、急に呼び出して悪かった」

「大丈夫です。それより…」

気になるのはジンの様子だ。憔悴しきっているとしか表現のしようがない。虚ろな瞳は足元へと向けられたまま、久しぶりの再会だというのにふたりは目に入っていないようだった。

「ボス、大丈夫ですか~?生きてますか~?」

ヒョンジュンがいくら声をかけてみても反応はない。まるで、器をそのままに魂だけどこかへ飛び去ってしまったかのようだ。

「ジンは大丈夫だ。オレが守る」

「…わかりました。彼らのことはオレに任せてください」

「あぁ」

さっぱり状況が理解できないまま、車へと促される。質問をすることも忘れて席へついた4人は、見送るジェジュンを見つめた。

「大丈夫。連絡するから」

「…絶対しろよ?」

「うん」

血のつながりはないが、共同生活が長いせいで本当の家族のようだ。心の底から心配してくれているのがわかる。

3人を残して車はゆっくりと走り出した。重い沈黙が続く中、チャンミンは前方にいるふたりを観察するように見つめていた。

「あの~…」

「はい?」

「ノラジョ…だよね?」

ずっと気になって仕方がない。テレビで見るときは奇抜な衣装だが、私服は意外と普通だ。ナース姿やマリリン・モンローのような白いワンピース衣装のイメージからはかけ離れていた。

「ジェヨン!天下の東方神起が我々のコトを知ってくれてるってさ!オレたちも捨てたモンじゃないな~」

「…いいからお前は黙って運転してろ」

いつもより低い声音。これ以上は何も言わないほうが見のためだと、肩をすくめたヒョンジュンは前方へと顔を戻した。途中、目に入ったバックミラー。一瞬だけヒョンジュンは眉をひそめた。

「ジェヨン」

「…」

少しだけ違う響き。伏せていた目を持ち上げ、ジェヨンはサイドミラーへと目を遣った。チラチラと時折、背走する車の陰から見える黒いセダン。空港を出たときにも同じナンバーの車がいた。

「…しばらく様子を見る」

「ラジャー」

ノラジョというグループがいることは彼らも知っていた。しかし、ふたりがジンやホンマンと知り合いだったとは驚きだ。いったいどういう関係なのか、また言葉にできない疑問が膨れ上がっていく。

「どこへ、向かっているんですか…?」

向かうべき場所はただひとつ。旅の疲れも癒せないまま事務所へ行き、長引くだろう打ち合わせをこなさなければならない。なのに車は遠回りし、なおかつ先ほども通った道を走っていた。

「申し訳ありませんがもうしばらく我慢ください。必ず、無傷で事務所にお送りすることはお約束いたします」

「…」

質問には答えているが、それに付随すべき理由は語られないまま。不安を覚え、それぞれは顔を見合わせた。さすがのチャンミンもただならぬ雰囲気にゲームをする気にもなれないようだ。

「ジェヨン、決まりだ。あいつら、しっかり尾行してやがる」

「…みたいだな」

それならば、あとは処理するしかない。ジェヨンとヒョンジュンは顔を見合わせ、小さく頷いた。そして車は事務所へ向かうべき道を反れ、がらんとした敷地へと車を乗り込ませた。

おそらく開発途中の土地なのだろう。重機や資材がそこら中に転がっていた。そしてふたりの考えどおり、空港からずっと一緒だったその車もまたそこへと滑り込んできた。

「恩義あるボスのため、ここは一肌脱いでやりましょうかね~」

どこか楽しげな声。しかし、ジェヨンは以前無表情を通していた。いったい何が始まるというのだろうか。大体の察しはついているが、にわかには信じられない。まさか、という思いのほうが強かった。

「ヒョンジュン、ひとりで大丈夫だな?」

「そりゃ、もう。ここ最近運動不足だったからちょうどイイ感じ~」

かすかに笑いながらヒョンジュンはミラー越しに少し離れた場所に止まった車を見つめた。すると、4つの扉が開き、同時に4人の男たちが降り立った。

そのささやかな仕種だけで、わかる人にはわかる。ある種の人間だということが…。

「じゃあ、ちょっくら遊んできま~す」

「5分以内に終わらせろ」

「アイアイサー」

軽くそう答え、ヒョンジュンは怯える風もなく車を降り立った。飄々とした雰囲気は相変わらずだが、瞳だけがやけに冷たく感じられる。

助手席に座ったまま微動だにせず、腕を組んだ状態で視線だけをミラーへと向ける。その様はさながら監督のようだ。

重い空気に包まれながらも好奇心が疼く。まずジュンスがそっと窓にかけられたカーテンへと手を伸ばした。それに倣い、チャンミンもまた同様にして窓の外を覗き込む。

わずかな隙間から見えた光景に思わず息を呑んだ。凶器を手にする男たち4人を相手に怯む様子もない。次々に倒されていく見知らぬ男たち。

突然目の当たりにしてしまった命をかけた戦い。それを直視することもできず、4人はすぐにカーテンを閉めた。そして覚えた恐怖にか細い呼吸を繰り返す。誰も、口を開くこともできなかった。

「お待たせしました~」

出て行ったときと同様、明るい声で帰還を告げたヒョンジュンは沈黙する4人には目も向けず、ギアへと手を伸ばした。

アクセルをゆっくりと踏み込めば、車が走り出す。路面の悪さに大きな揺れが何度も襲った。しかし、やはり誰も、何も言うことはできなかった。

何か、大変なことに巻き込まれている。

そうなった理由はわからない。しかしそれはもう認めざるを得ない状況だった。ひとり、離れているジェジュンは大丈夫なのだろうか。様々な不安が4人の心を覆い始めていた。










続く。
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