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Close your Eyes ep.95-1



HP『Sweet Drops』用に書かれた作品になります。原文のまま転記したので長文になります、ご了承ください。

minyuminyu担当のサイドストーリーがep.94の前にありました。お話が前後してしまい申し訳ありません・・・。












過去。現在。未来。

何かを失ったまま歩き続ける自分には、この先に何があるのだろうか。いつまでも平行線のまま、ただひたすらまっすぐ進んでいるだけの自分。

過去を捨てて。現在を生きて。何も見えない未来を探る。

唯一ある光は貴方の存在。少し前に立つ貴方の手を握り、暗闇を一歩ずつ歩み続ける。



ふと目を覚ます。時計を見れば深夜の1時、ソファーに埋もれていた身体を起こし、ユファンは周囲を見渡した。

テーブルの上には、すっかり冷めてしまった料理が並べられたまま。首を傾げつつ玄関へと向かい、扉を開けてみる。

「スンフン兄・・・?」

駐車場には車がない。それが示す事は、未だスンフンは帰っていないという事だ。目を覚ましたのか、小さなレインがユファンの指を甘噛みする。

ぷにぷにと踏みつけて遊んだ後、今度はリビングを抜け2階へと駆け上がっていく。途中、力尽きたまま眠っているクラウドを拾い上げる。

二匹を服の中にしまいながら、寝室へと足を向ける。やはりそこには誰もおらず、隣の書斎も同様に静かに機会音が響くのみだ。更に首が傾く。

「・・・ストーム?」

何気なしに名前を呼ぶ。いつも側にいるはずなのに、今日に限って愛犬の姿はなかった。スンフンの部屋にも、自分の部屋にもいない。くまなく隅々まで探してみるも、彼の姿も見えなかった。

急に寂しくなり、ユファンはソファーの上でぎゅっと自分の膝を抱き締めた。苦しさに服の中から脱出した二匹も、ユファンの尋常じゃない様子に心配そうに顔を見上げる。

遅くなるなんて一言も告げられていない。連絡がないのも初めてだ。

何故、こんなにも不安なのだろう。騒ぐ胸のうちは一向に落ち着くことがなく、窓の外からは静かに朝陽が差し込み始めていた。


 
見知らぬ番号からの電話、それが全ての始まりで、つい先日出逢った不安が確信へと変わる。握り締めた携帯を睨みつけたまま、身体は硬直し動けないでいた。

一筋の汗が額を伝う。頭の中で対策を考え、思いついたそれへと実行すべくホンマンは車の鍵を手に取った。いつもより重いエンジン音が響き渡る。

心の整理をつけ、ベルを鳴らす。軽やかな声音が扉の向こうから聞こえ、ホンマンはようやく息を吐き出した。そうする事で初めて現実に引き戻され、凍てついた表情が和らいだ気がした。

「ジンは、多分、ハンモックで寝てます。起こしてきましょうか?」

「いや。自分で行く、大丈夫だ」

ミヌの申し出を丁寧に断り、少しだけほっとした胸を一喝する。もう一度自分に厳しく言い聞かせ、ホンマンは深呼吸を繰り返し庭へと向かった。

相手に悟られては駄目だ。隠し通すしかない。

嘘を吐き通すこと出来るか。いや、何としてでも嘘を事実にしなければならない。

勘のいい彼には気付かれてはいけない。そう、彼もそう言っていた。だから、言うなと言われた。黙っているんだ、と。

「ジン」

だが、自分の主は生涯ただ一人と決めた。そして、絶対守ると。

「どうしたの~?ホンマン」

名を呼べば、ハンモックからジンは飛び降りホンマンを見上げた。あどけない表情の彼を見下ろし、ホンマンは自分の思考を一切切り捨てた。

表情柔らかく、何度もイメージしたままにジンに言葉をかける。無心のままの行動で自分を欺き、そして不信感を与えないように。

「悪いが、ジン、一週間ほど暇をもらいたい。親元に顔を出しにいく」

「何かあったの?」

「いや、妹の結婚が決まったんだ。久し振りに会って祝ってやろうかと思ってな」

「そうなんだ~。おめでとう、ホンマン。よかったね~」

内心はヒヤヒヤしている。いつ嘘がばれるか、そして彼が傷付くのか。自分の事のように喜ぶ主を前にし、よくこうも嘘偽りが言えるなと自分を罵る。

明るい彼を見ていると、本当に過去が夢だったのではないかと思う。醜く、汚れきった、おぞましい記憶の螺旋。今でも夢に見る強烈な全てに、知らずに全身は汗をかき指が震える。

だが、ふと思う。今の穏やかで幸せなこのひと時が、実は夢ではないのかと。

今でもジンと自分は暗い闇に閉ざされたままで、あの人から逃れられないまま自由を渇望しているのではないか、と。

「ほんまん、おでかけ~?」

「そうだ。だが、出かけるのは明日だ。本でも読むか?」

「ほんとう?よんでよんで~」

焦っては駄目だ。いつもと同じようにするんだ。

何度も何度も繰り返し言い聞かせる。決して視線を逸らしてはいけない、言いよどんではいけない、思いつめてはいけない。

優しい彼の笑顔を壊してはいけない。そう誓って、自分は死ぬ覚悟をしたのだから。

彼を守る。それが、自分の存在価値。



「いたた・・・」

冷たいコンクリートの感触で目を覚ます。不自然な格好でいたせいか、身体のあちこちが痛んだ。

身体を起こそうとしたが、何故か手は自由に動かせなかった。手首に鈍痛が走り、後ろ手に縛らている事に気が付く。

スンフンは溜め息を吐き、じっと周囲を観察した。眼鏡がないので視界は不鮮明だが、その代わりにその他の感覚はより敏感になっていた。

記憶を探る。今日は定時で仕事を終え、そのまま往診に出かけた。そして、帰りに馴染みの店へと寄った。発注していた物を確認し、後日受け取りに行く事を約束した。駐車場へ着いて、それから記憶が途絶えている。

酷く頭痛がする。息が詰まる感覚に襲われ、スンフンは何とか仰向けになった。腕の痛みは増したが、胸の圧迫感は若干和らいだ。ふうっと大きな息を吐き出す。

「・・・?」

遠くから足音が聞こえた。それは徐々に自分のいる方へと近づき、ぴたりと止まった。

次いで、扉の開く音。僅かに零れる月明かりに映し出されたのは、悠然とその場に立つスーツ姿の男性だった。

本能が告げる。それは、警告そのものだった。



「あら?」

週に一度のデートの約束。観たい映画があるというボアのリクエストを叶え、連接していたレストランで食事をし家に帰るところだった。

背後にいたボアが、ふとそんな声を上げる。つられるように振り返れば、ボアの視線は一点に集中していた。

車の鍵をポケットにしまい、シウォンはボアを連れてその場へと歩み寄った。暗闇の中で浮かび上がる車体は見覚えのある物、ナンバーを見て確信へと変わる。

周囲を見渡すが、そこに見知った人間はいない。日付が変わる手前の時分、店舗はすでに消灯し暗闇に覆われている。

「シウォン兄さん、これ・・・」

ボアが差し出したのは、地面に落ちていた車の鍵だった。見間違う事のない見慣れたキーホルダー。それを指で弄び、シウォンはそっと鍵に触れた。同時に、車のライトが反応する。

「スンフン・・・?」

嫌な予感がする、シウォンは振り切るように携帯を手に取り、スンフンの番号を呼び出した。










続く。
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