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Close your Eyes ep.95-2



HP『Sweet Drops』用に書かれた作品になります。原文のまま転記したので長文になります、ご了承ください。












案の定というべきか。仕事前にスンフンの家に寄り、チャイムを鳴らせばすぐに扉が開いた。ぶつけそうになった身体を瞬時で避け、シウォンは安堵の息を吐き出した。

目を真っ赤にして、縋るように視線が周囲を見渡す。目当ての人物がいない事に落胆し、ユファンはその場に座り込んでしまった。

足の間をレインが入り込み、背中をクラウドが登る。半分呆れながら、シウォンは蹲るユファンの手を引いた。ころりと二匹が床に転がる。

「スンフンは急遽学会に出かけたぞ。落ち着いたら連絡すると言ってた」

「ほ、ほんとか?」

「どうする?一人が嫌なら俺の家に来るか?ボアもレインもクラウドもいるし、寂しくないぞ」

「・・・」

少し考えた後、ユファンは首を振った。ぽてぽてと部屋の中に戻り、再びソファーの上で身体を丸める。

ソファーの横には、ドライフードが入った餌入れが置かれていた。レインとクラウドはまだそれが食べれるほど大きくない。そういえばと部屋を見渡すも、それらしき姿は見つからなかった。

「ストームが帰ってくるから。だから、俺、ここにいなくちゃ。あいつ、人一倍寂しがり屋で怖がりだから、俺がちゃんと待っててやらないといけないんだ」

何か嫌な予感がする。その思いを振り切ろうにも、術を何も持っていなかった。スンフンの携帯は一向に繋がらないし、職場にも連絡してみたが未だ彼は出勤していないという。

車はシウォンのマンションに置いてある。すぐにでも調べる必要があるか。心の中でそう呟きながら携帯に手を伸ばせば、それは急に手の中で震えた。

驚きに目を見張る。そのディスプレイには、今まさに連絡が取れないスンフンの名前が映し出されていた。



呆然と立ち尽くし、目を見張る。まさか、そんなわけがないと。頭の中で何度もそう繰り返す。

だが、目の前の光景は真実で。何度目を擦っても消えないし、何度瞬きしても変わらなかった。

「ホンマン、遅かったね。待ちくたびれちゃったよ~」

「ジ、ン?」

「行き先はどこ?とりあえず片っ端から購入しちゃったから、キャンセルしないと。・・・行き先はアメリカでいいのかな?」

「・・・っ」

言葉が出ない。出せなかったというべきだろう。愕然としていると、アナウンスが耳に入ってきた。自分が乗る予定の飛行機の手続きが始まった。ピクリと身体が反応する。

それを目ざとく察したジンは、ホンマンが動くよりも早く手続きに行ってしまった。慌ててその後を追い、違うと反論を述べようと手を伸ばした。

だが、それは触れる前に弾かれてしまった。振り返ったジンの顔が、今でも鮮明に思い出される。

思わず背筋が凍った。忘れかけていた『負』の感情を思い出し、ホンマンはごくりと生唾を飲み込んだ。ジンの口がゆっくりと動く。

「ねぇ、ホンマン。お父さんに、何かあった?」

誰にも話してはいけない。特に、ジンには何も言わないで欲しい。

彼の言葉を思い出す。やはり、彼は正しかった。

自分に落ち度はなかったはずだ、誰もが気付いていない。一世一代の大芝居はうまくいき、誰もが気付かないまま自分はアメリカに旅立つ予定だった。

だが、ジンが上手だった。彼に嘘は通用しない、隠し事もすぐにばれてしまう。相手が悪かったとしか言いようがない。

深く息を吸い込み、ホンマンは大きく息を吐き出した。ここまできてしまってはもう誤魔化せない。諦めるしかないとそう心に言い聞かせ、ホンマンはチケットを取り出した。

行き先はアメリカ。彼が電話をしてきてから、すでにだいぶ時間が過ぎてしまっている。

「分かった。ジン、落ち着いて話を聞いてくれ」

事は急を要する。バックも何も持たないまま二人は飛行機に乗り込み、日付の変わる直前にアメリカを目指し韓国を旅立った。



息を吸うのが苦しい。息苦しさを覚えて目覚めると、目の前には暗闇に支配されていた。その圧迫感に少しだけ眉を寄せる。

咳き込めば、胸に激痛が走った。何度か深呼吸を繰り返し、痛みがひくのをじっと待つ。

「・・・僕は、体力には自信がないんだよね」

勘弁して欲しいと呟く。苦笑を零しながらスンフンは身体を起こし、周囲へと視線を向けた。

部屋の中には誰もいない。僅かに零れる光は、扉なのか、それとも窓からなのか。

黴臭い匂いが鼻につき、堪えきれずスンフンは咳を繰り返した。途中鉄臭い味が口中に広がり、塊を吐き出す。多分血だろう。

「さて、と」

忙しい呼吸の合間にそう呟き、スンフンは自身の左手首を不自由な右手で掴んだ。何かあった時と教えてもらった事が、まさか本当に役立つ時がくるとは思わなかった。意を決して、力を込める。

鈍い音が聞こえる。次いで、零れそうになる呻き声。全てを胸のうちに閉じ込め、ぐっと歯を食いしばる。

しばらくの静寂。そして、小さな溜め息が響き渡る。

「僕は、痛いのも嫌いなんだよ」

携帯電話を取り出し、ぼやくように小さく呟く。その言葉はスンフンにらしからぬ冷たい口調で、僅かに怒りを孕んだものだった。



それは、本当に偶然だっただろう。何か物音がしたような気がして、ボアは背後を振り返った。

つられるようにしいて、隣にいた友人達も振り返る。だが、そこには何もない。皆が首を傾げる。

「どうしたの?」

「え?あ、はい。その・・・」

人込みに紛れていたが、確かにそこにいたような気がした。だが、小さなその姿はどこにもない。

「お友達の飼ってらっしゃる子犬さんが、いたように思ったので」

「どんな犬?」

「ヨークシャ・テリアです。でも・・・そうですよね、いらっしゃるわけありません。ユファンさん、いないですもの」

「・・・?」

そうなのだ。ユファンは確かアパートにいるとシウォンは言っていた、ここに彼がいるはずがない。

誰よりもユファンを好きで、慕っていて、愛していて。友人や恋人や家族よりも、強い絆がある存在。

他の誰もが入り込めない関係に、少しだけ羨ましく感じる。だが、それは仕方のない事なのだろう。

ユファンにはストームが。シウォンにはレインとクラウドがいるように。

それならば。何故、こんなにも胸が騒ぐのだろうか。

見間違いと思いたがっている自分がいるようで、とても胸が苦しい。胸のつかえがとれず、ボアは知らず携帯を手に取った。



「悪い。今日はスンフン休みだから、外せない予約は僕にまわしてくれ」

朝一番にそうシウォンに告げられた。急にスンフンが休むなんて珍しいと、受付の女性は首を傾げた。

今日は一日おかしい。スンフンの予約の患者は、スンフンが不在でも誰も何も言わなかった。文句ひとつも言わず、ただ促されるままにシウォンの部屋へと進んでいく。

徐々に人数が増えていく。初診は普段受け付けていないのに、今日に限って紹介状もない人が訪ねてくる。困ったと思いながら合間にシウォンに連絡すると、通していいという。

お昼を過ぎた頃、ようやく一息つく事が出来た。軽く背伸びをしていると、ふと視線を感じた。慌てて身なりを直す。

振り返れば、そこには今日予約ではない彼が立っていた。緊張感を露に挨拶すれば、彼はにこやかな笑顔で言葉をかけてきた。

「スンフン先生は休みのようだね。申し訳ないが、代理のシウォン先生をお願いしたいんだが」

今日は本当におかしな一日だ。彼は簡単に暇が出来る人物ではない、こんなにも唐突にオファーなく来れるはずがないのだ。

背後にはスーツ姿のSPがついていく。いつもは車で待つのにと不思議に思いつつ、彼女は席を立った。

待ち遠しかった休憩時間。彼女は何を食べようかと微笑み、デスクを後にした。









続く。
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