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Close your Eyes ep.95-3



HP『Sweet Drops』用に書かれた作品になります。原文のまま転記したので長文になります、ご了承ください。












後悔は何度もした。でも、その度に心が重い。

悲しむ姿はもう見たくないから。だから、守ると決めた。



「ジン、落ち着け!」

空港に着くなり、ジンは無言のままタクシーに乗り込んだ。見慣れた街並みが目に入ると、待ちきれないように赤信号の間で車を降りてしまった。慌ててその後を追う。

いつもは駐車場にあるはずの車がない。ジンもそれに気づいているだろう、自然と足が速まる。

チャイムを鳴らす。誰も出ないだろうと思っていたが、予想に反して向こう側からドアが開いた。キョトンとした表情のユファンが顔を覗かせる。

「何だ?ジン、そんな怖い顔して」

「・・・お父さんは!?」

「スンフン兄?この間から学会で出張してんぞ」

「え?そ、そうなの?」

「おう。電話くれたし、タレ目もそう言ってた」

何も聞かされていないのだろう。そう判断したジンは何も言わないままドアを閉め、その場を後にした。早足で携帯を手に取り、どこかに電話をしているようだった。

追いかけたいのは山々だが、彼からの依頼に背くわけにはいかない。再びドアを開ければ、その場に蹲るように座り込んだユファンがいた。

どうやら顔をぶつけたらしい。涙目でジンを睨みつけながら、ユファンは目の前に残っていたホンマンを見上げた。

「・・・ホンマン。なぁ、スンフン兄は出張で出かけてんだよな?」

「何でだ?」

「え?あ、いや・・・何か、変なんだ。ここが、心臓が、痛くて・・・ぎゅって、苦しくなるんだ。病気か?」

「・・・」

勘が鋭いというか、何と言うか。鈍感だと思っていたが、事彼に関しては敏感だ。

不自然にならないように微笑み、ホンマンは幾分か乱暴にユファンの頭を撫でた。見上げる瞳を受け止め、彼に言われたとおり言葉に願いを込める。

「誕生日に素敵なプレゼントを準備してるから。だから、いい子で待ってろと言ってたぞ」

「・・・っ」

「胸の事はスンフンが帰ってきたら相談しろ。俺は医者じゃない、だから分からん」

「お・・・おう」

もう一度頭を撫で、ジンの後を追うようにその場を離れる。あっと声を上げるのが聞こえ、ホンマンは再びユファンを振り返った。

「ホンマン!ストーム見かけたら、ちゃんと帰ってこいって言っといて。お前がいないと寒くて眠れねぇんだよ!」

「・・・分かった」

少しだけ疑問に感じる。ストームがいなくなったのはいつからだろう、そんな小さな事が気になる。

次の自分に課せられた事を頭の中で反芻し、タクシーに乗り込んだジンの後ろをついて大きな身体を滑り込ませる。ぎょっと振り返る運転手に向かい、ジンとホンマンは同時に行き先を告げた。



今日は静かだな。そう思っていた矢先に、いつもの彼が訪ねてきた。行き先はいつもと同じだろうと思っていたら、口から出てきた名前は違うものだった。

「リュ・シウォン先生は、今どこにいますか?」

「え?あ、はい。シウォン先生はただ今休憩中でして、中庭にいらっしゃるかと」

聞くや否や、青年は脱兎の如く中庭へと向かっていく。遅れて大柄の男性が同じ方向へ向かい、受付の女性はその慌しさに目を丸くした。

この間から何かおかしい。そう思いながら、彼女は何となくスンフンが戻る事で全て元通りになるのではないかと思った。

予約の時は、名を名乗る必要がない。彼の患者はそれが普通だ。名前のないカルテは山ほどある。

何を見ても、聞いても、知っても。全て忘れてしまう事、話さないでいる事。それが自分の仕事。

彼女は時計を見つめ、自分も休憩時間だと席を立った。今日はシウォンの恋人から貰ったケーキがある、それを考慮し軽めの食事をとろうとラウンジに向かって歩き出した。



うたた寝をしていると、誰かが走り寄ってくる音が聞こえた。重い瞼を開き、同じように膝枕で眠りこけているボアの寝顔を手で覆い隠す。

様子を伺っていると、向こう側から姿を現したのは待ち人一人と予想外の人物一人だった。思わず引きつる頬を慌てて隠し、シウォンは呆れ顔で走ってくる二人を見つめた。

「ジン、どうした?久し振り・・・」

「ボアちゃんから離れろ!」

再会の喜びを分かち合う前に、膝に上にいたボアをシウォンから奪い取る。かなり衝撃があったはずだが、ボアは目覚めなかった。ジンの腕の中、微かな寝息を立てながら未だ眠りこけている。

その幸せそうな口元が、もぐもぐと何かを食べているかのように動いている。大好きなケーキを食べている夢でも見ているのだろう。正直、見ていて飽きない。

「寝かせといてくれないか?昨日は遅かったんだ」

「は?」

「おいおいおい、それ以上は聞くな。野暮だぞ」

「・・・な、な、な!この変態っっっ!!」

さすがにその大声では目が覚めてしまったようで、ジンの腕の中でボアはゆっくりと瞼を開いた。寝ぼけ眼のままシウォンとジンを交互に見つめながら、不思議そうに首を傾げる。

その合間、瞬時に視線を交わす。ホンマンは僅かに目を伏せ、言葉を詰まらせた。

自分の失態だと思ったのだろう。シウォンは楽しげに笑い、残っていたお茶を手に取った。乾いた喉を潤すように飲み込み、空になった水筒をバックに戻す。

「ホンマン、ストームがいなくなったんだ。探してくれないか?」

まただ。そう思いながら、ホンマンは言葉を待ちシウォンを窺った。

「あ!そうじゃなくて!ねぇ、お父さんどこ行ったの?!」

「スンフン?」

「お、お父さん・・・」

「スンフンは昔から厄介事に巻き込まれやすい性質だからな。今頃帰る準備をしてるだろう、だからジンは待っていればいい」

再び眠りについてしまったボアの髪を撫でる振りをしながら、そっとその耳を両手で塞ぐ。物騒な話で彼女を慌てさせたくないし、巻き込みたくない。

ジンも同じなのだろう。シウォンが手をどかすと、代わりにボアの耳を覆うようにその胸に強く抱き締めた。正直言いたい事もあるが、ここは我慢するしかない。

独占欲を無理やり押さえ込み、シウォンはその場から立ち上がりホンマンの肩を軽く叩いた。途端、何か身体に重みを感じた。

「ストームは迷子にならないようにGPSを付けてある。連れて帰ってくれ」

腰元を触れば、先程まではなかったはずの鉄の塊がそこにあった。驚きを隠しながら顔を上げれば、シウォンの目がすぐ目の前にあった。

「最近は危ない犬も多いからな。噛まれる前に言う事きかせとけ」



「ゲーム・オーバーだ」

眼鏡が地面に落ち、レンズが四散する。銃を額に当て、彼は低く笑った。不気味に響き渡る。

伝う雫は汗なのか。この振動は振るえなのか。この感情は何なのか。

握り締めた指が僅かに音を立てる。カチリと音が響き渡り、喉の渇きを覚え唾を飲み込む。

「貴方は、ジンに似てないね?」

呼吸が忙しない。ままならない呼吸に顔を歪めながら、スンフンは彼を見つめながら笑った。

「あぁ。そういえば、貴方の名前は呼んではいけないんだっけ?そういうの面白いね」

「・・・君の名前も、本来は呼んではいけないと言ったが?」

「そう?」

「この状況で、初めて君の存在の大きさを知ったよ。ここで出会えてよかったと思う、感謝するよ」

くくくと苦笑を零し、銃を握り締める。僅かに零れる月明かりを浴び、二人の姿が鮮明にお互いの目に焼きつく。

「さようなら、シン・スンフン君」

「貴方こそ。今度は痛いのはなしにして下さいね、パク・ヨンチョルさん」



名は呼ばない事。それは暗黙の了解、誰もが知っている悪夢の始まり。

名は人を呼ぶ。だから、呼んではいけない。










続く。
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