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Close your Eyes ep.95-4



HP『Sweet Drops』用に書かれた作品になります。原文のまま転記したので長文になります、ご了承ください。


私事ですが、3月異動になりました。2012年8月勤め始めてから早4年半・・・長いな~。しばらくは日勤のみのツラい毎日になります(笑)
更新は継続していきたいと思います。ですが、忘れたらすみません。












自分の呼吸がやけにうるさい。背を壁に預けながら、そんな事を考える。

君が背負っていた何かを知って、君の感じていた全てに触れて。心を痛めるも何よりも、君が生まれてきた意味を考えた。それは、とても難しい。

でも、確かに言える事は。ふと、思う。

君を強く抱き締めてあげたい。そう思った。



「・・・煙草、吸いたいな」

そう呟けば、目の前の男性は少し首を傾げた。ポケットに入っていたケースを取り出し、そっと中身を差し出す。

唇に挟めば、それは爽やかな味がした。軽く咳き込むのを無理やり押さえ込み、ライターの火に顔を寄せる。

「怒られるかな」

ゆっくり紫煙を吸い込み、メントールを肺の奥まで染み込ませる。懐かしいその香りと味に眼を細め、スンフンは頭上を見上げた。
どこまでも晴れ渡る空。浮かぶ雲の白さに微笑み、スンフンは携帯をポケットの中へとしまいこんだ。 



気がつけばシウォンとホンマンの姿はなかった。慌ててボアの膝から頭を離し、ジンは周囲を見渡す。

「どうしました?」

「ホンマンは?どこに行っちゃったのかな・・・」

少しだけ頭を傾げ、ボアは顎に指を添えた。考えてみるも答えを持ち合わせていなく、小さく『ごめんなさい』と呟く。

「シウォン兄さんはお仕事に行きました。私は、シウォン兄さんに『ジン兄さんと遊んでなさい』と言われたので・・・申し訳ありません」

「ううん!ボアちゃんとこうしてるの、すっごく楽しいよ!」

「そうですか。良かったです」

天使のようなその微笑に、ジンもつられるように幼い笑顔を零した。しばらく見つめあいながら微笑み返す。

だが、ふいと思い出す。自分は何をしにここに来たのか。

思い出した途端、いてもたってもいられなくなった。慌ててその場から立ち上がり、右へ左へと身体を揺らす。

「ジン兄さん?」

きょとんと見上げるボアの存在に気づき、ジンは再びその場に座り込んだ。ぎゅっと強くボアの手を握り締め、涙目で言葉を紡ぐ。

「ごめんね、ボアちゃん。僕、お父さん探しに行かないといけないんだった・・・」

「スンフン兄さんですか?確か、出張で出かけてらっしゃるのでしたよね?」

「ええと・・・そうなってるけど、実際は違うというか・・・皆、隠してるというか・・・」

「もしかして、迷子さんですか?ですから、ストームがスンフン兄さんを探してらっしゃるのですね」

ぴくんと耳が大きくなる。問い詰めるように顔を近づければ、あと少しで唇が触れてしまうくらいの至近距離までつめてしまった。

ボアはさして気にもしてない様子で、間違ったのかなと言いたげに再び顎に指を添えた。髪が揺れるたびにシャンプーの香りが鼻腔をくすぐり、ジンは誘惑に負けそうになるのをぐっと堪えた。

先日、ストームを見かけた事を思い返す。やはり、あれはストーム自身だったのだ。そう確信し、ボアは顔を綻ばせながら言葉を続けた。

「だいぶ汚れていたので別の子かもと思いましたが、でもあのリボンの首輪はユファンさんと一緒に買ったものでしたから、間違えたりするはずありません」

レインとクラウドの餌を買いに行く時、たまたまユファンに出会った。首輪の金具が壊れてしまったのだという。

そうだと思い出し、ジンの家に行く予定のあの子達に首輪を買ってあげようと思った。そうして二人、ペットショップに肩を並べて進んだ。

お店に入るなり、ユファンはすぐに決めた。ストームの毛色によく似合う優しい色合いの、可愛いデザインのものだった。

少しだけ羨ましいな。ユファンの横顔を見つめながら、ボアは思い微笑んだのを覚えている。



白衣を机の上に放り投げ、シウォンはスーツの上着を手に取った。バックを持とうとして手を椅子に伸ばせば、それは空を切るのみだった。

不思議に思いながら振り返れば、そこには不機嫌に眉を寄せたジンの顔があった。あまりの不細工加減に思わずふきだす。

「ちょっと!どこ行くの?!」

「往診だよ。スンフンが休めば、代わりに僕が行く事になっている」

不信感の塊の視線をすり抜け、シウォンは自室のドアに鍵をかけた。そのまま後を追うようにジンは後ろを歩いていく。

途中医局に寄れば、ぎょっと皆が振り向く。見てはいないが、相変わらず酷い顔をしているのだろう。思わず失笑が零れる。

「何て顔してんのよ、あんた」

奥にいたソルビは、呆れた表情を浮かべながらシウォンの元へと足を運んだ。姿を見れば一目瞭然、出かける事を意味するその姿に溜め息を吐く。

「ソルビ、少し席を外すからよろしく頼む」

「用件は簡潔明瞭にお願いしますよ。ただでさえスンフン兄さんが急に出かけちゃって、人手が足りなくて困ってるんだから・・・」

冷蔵庫にボアの作ったケーキが入っている事を告げれば、ソルビの機嫌はころりと変わった。にまにまと微笑むソルビを前に、そんなに甘い物が美味しいのかという疑問が膨らむ。

受け取ったカルテをカバンにしまい、シウォンは駐車場へと足を運んだ。バックの中から車の鍵を取り出す。

「俺も行く!」

「スンフンのクランケは特殊だ、知らない方がいい。命がいくつあっても足りないぞ」

「それでも行く!」

「おいおいおい・・・ジン、お前は怖い者知らずだな。いいか、最後の警告だ。ついてくるな」

そう吐き捨ててみるが、ジンはシウォンの背中にぴったりくっついて離れない。そのぬくもりに零れそうになる微笑みを押し隠し、シウォンはジンの手をゆっくりと解いた。

振り返れば、そこには涙と鼻水でぐしょぐしょになった顔があった。スーツはクリーニングだな、そう心の中でぼやく。

「・・・ジン、久し振りに取り引きしないか?」

悪戯に問いかければ、ジンの瞳が大きく丸いものになった。首を傾げながら、じっとシウォンを見つめる。

「僕の質問に、ジンがちゃんと答えてくれればいい。そうすれば、ストームの場所に案内しよう」

「ほ、本当?」

「あの犬も良い子だな。よく躾けられてる」

「ス、ストームのとこにお父さんいるんでしょ?お、お父さん、大丈夫?ストームも、だ、大丈夫?」

手を差し伸べるのはもう習性なのだろうか。今回は写真の取り引きではないので、その手を身体の横へと押し戻す。

ティッシュで鼻を拭い、腫れた瞼をそっと指で撫でる。ぐりぐりと頭を撫でられ、ジンはふらふらと身体を揺らした。

一瞬だけ、口元を歪める。それはほんの瞬時だったが、ジンはそれで全てを察したように視線の温度を一気に下げた。



「ジン、教えて。この世で一番怖いものは、一体何だ?」



横を通り過ぎる人物は、一瞬だけ自分に視線を向けた。僅かにかち合うも、それはすぐに逸らされた。

顔を覚えてはならない。お互い、そう感じた。深入りせずにいた方がいいだろう。声もかけないままにその場を後にした。

「ホンマン君?」

通されたスウィート・ルームには、見慣れた彼がソファーに座っていた。だが、その姿はいつもとは大違いだ。

シャツの襟元や袖口は血で汚れ、スーツもズボンも汚れてしまっている。髪も幾分か乱れており、いつもの清潔感はどこにもなかった。

はっと息を飲む。言葉をなくして立ち尽くしていると、スンフンは珍しく口元を歪めて笑った。煙草の灰が僅かに零れ落ちる。

「随分と派手な人だね、あの人は。ジンにちっとも似てないや」

「会ったのか?!」

「パク・ヨンチョル氏。クランケには会うなと言われたけど、これは不可抗力だからね。とりあえず、追っ払ってもらえるようにお願いしたよ。君の出番をなくして悪かったね」

「・・・怪我、してる」

『あぁ』と鼻で笑い、スンフンは自分の身体に視線を落とした。左腕は動かないが、骨折しているわけではなさそうだ。

両手首には縛られた跡がある。彼が監禁されていたにも関わらず、自分やシウォンに連絡がとれた理由が分かった。普通の人間は思いついても出来ないはずだ。思わず言葉を失う。

側にいた男性が耳打ちするも、スンフンは首を横に振った。一言二言話していたが、急に咳き込み始めた為話しが中断してしまう。

少しだけ変な咳を繰り返す。右手に持っていた煙草を奪うと、スンフンは口元を手で覆った。途端、指の隙間から赤い液体が零れ落ちる。

「大丈夫。少し、口の中傷つけただけだから」

それだけではないだろうと思うが、それ以上何も言えなかった。深呼吸を繰り返し、スンフンは天井を見上げた。

軽く喉が鳴る。その意味に何となく気づき、ホンマンは手に持っていた煙草を灰皿に押し付けた。『残念』という言葉が耳元を掠める。

「それじゃあ、まずはホンマン君。遠いところから来てもらったのに何もないのは可哀想だから、僕の腕を入れてもらってもいいかい?」

「・・・痛いぞ?」

「ん~・・・お手柔らかに、ね。僕、痛いのは嫌い」

「いくぞ」

肩に触れた時、ふと気付く。そして、急に身体が震えた。

彼は何と言っただろうか。名を、呼んではいけない、あの忌まわしい名前を。呼んではいなかっただろうか。

そして、この大量の血は何だろう。彼の身体から、それだけの出血量は認められない。かすり傷程度と、全身に打撲の跡。それだけしかなかった。

それでは。この袖口の、シャツの、返り血みたいなものはなんだろうか。










続く。
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