スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

Close your Eyes ep.95-5



HP『Sweet Drops』用に書かれた作品になります。原文のまま転記したので長文になります、ご了承ください。












それは、自分の腰元に携帯していたものと同じだった。側にいた男性にそれを渡し、彼は何でもない事のように笑った。

僅かに火薬の匂いがした。だが、彼の身体には銃弾の傷痕はひとつもなかった。
 


「ストーム!」

名を呼ばれ、ストームは小さな耳をぴくりと動かした。声のする方向へと顔を向け、走り寄ってくる大きなその身体をじっと見つめた。

ふわりと身体が浮く。そして、ぎゅっと強く抱き締められる。

「ストーム、お父さんは?お父さんは?お父さんは!?」

話す言葉を持たず、ストームは首を傾げるように頭を傾けた。そして、ジンの鼻をぺろりと嘗める。

身体は汚れ、毛並みもバサバサ。だが、それは間違いなくストームだった。首輪の名札にはユファンの字で『STORM』と記されていた。

飽きもせずに何度も繰り返すジンを横目に、シウォンは通りかかったホテルマンに声をかけた。名を告げれば、彼は微笑を崩さず視線を一瞬だけ横に逸らした。

その視線を追えば、ホテルのロビーに見慣れた背中を見つけた。ジンをその場に残したままホテルの自動ドアをすり抜け、彼の元へと歩み寄る。

「君か。・・・いい、下がりなさい」

間に入った黒スーツの男性にそう声をかけ、彼は笑った。シウォンを一瞥し、テーブルの上に置いた封筒を差し出す。

「スンフン君は上にいる。シウォン君、君も気をつけなさい」

中から写真を一枚取り出し、シウォンは口元を歪めて笑った。肩が僅かに震える。

「それを、貴方が言いますか?」

「いや・・・念の為にだよ。君も、スンフン君も、君達は特別だからね」

彼は立ち上がり、ホテルを後にした。その後ろを数人の男性が追っていく。

その隣をすり抜け、ジンはシウォンの元へと駆け寄った。パーカーの中に押し込められたストームは、特に暴れる様子もなく大人しくしている。

「誰?知り合い?」

「ん~・・・まぁ、な。スンフンの友人だ」

封筒の中にはカード・キーが入っていた。目ざとく見つけたジンが素早くそれを抜き取り、一人でエレベーターへと向かって駆け出していく。

一人残され、シウォンは苦笑を零した。呟きかけた言葉を飲み込み、ジンの後を追ってホテルの奥へと歩き出した。

ふと、思い出して写真を引き出す。ふんとつまらなそうに息を吐き、シウォンは無造作にバックの奥底へとねじ込んだ。

「・・・似てねぇのな」


 
待ちきれなくて部屋のベルを何度も鳴らす。喧しい位の音のはずなのに、中からは何の音もしない。

不安でどうしようもない。もう一度鳴らそうとベルに指を添えた時、急に扉が向こう側から開いた。

驚きに目を丸くする。扉の向こうには、寸分も違わぬ逢いたかった人の姿があった。

「お父さん!」

「ジン?どうしたの、そんな顔して」

漆黒の瞳からぼろぼろと真珠のように涙が零れだす。顔を見れた事で不安が氷解し、安堵が身体の中にゆっくりと浸透していく。

ぎゅっと強く抱き着けば、触れた髪が少しだけ湿っていた。シャンプーの良い香りが鼻腔をくすぐる。

「お、お父さん、無事?だ、誰、に、拉致されたの?」

「拉致?ジン、違うよ。僕が道を間違えて、迷子になっちゃっただけだよ」

「ま、迷子?」

「この歳になって、迷子はさすがに恥ずかしいでしょ?だから、親切な人にここまで送り届けてもらったんだよ」

ぎゅっと押し潰されて苦しくなったのか、パーカーの隙間からひょこんとストームが姿を現す。するりと抜け出し、ストームは奥にあったスンフンのバックの中へと身を潜ませた。

頭のてっぺんから足のつま先までじっくりと観察するように視線を動かす。だが、どう見てもいつもと変わらないスンフンだった。

香りを堪能するように身体を擦り寄らせる。スンフンの残り香を身体に染み込ませたくて、何度も顔を服に押し付ける。

「ホ、ホンマンは?」

「荷物を先に届けてもらってる。あぁ、そうだ。ウォンタクに絵本を沢山買ったんだ。喜んでくれるかなぁ?」

「うん!お父さんが送ってくれた本、ウォンタクいっぱい読んでるよ。また欲しいって、ウォンタク言ってたもん」

「そう?それは嬉しいな」

涙の跡に唇を寄せ、スンフンは花のように笑った。それはとても穏やかに、そして優しく。

ドアの前に立っていたシウォンは、僅かに傷の残る壁を背に立っていた。二人を遠めに見つめながら、ふっと緩やかに笑ってみせた。
 


不眠不休が祟ったのだろう。ジンはスンフンが帰り支度を済ます前に、ベッドで寝てしまった。すーすーと穏やかな寝息が響き渡る。

その身体を抱えようとしたが、先に差し出されたシウォンの腕に阻まれてしまった。仕方ないと伸ばしたバックも奪い取られ、スンフンはきょとんと首を傾げた。

「肋骨、少なくても二、三本はやられてるだろ」

答える前にそこを叩かれ、スンフンは痛みに顔を歪めた。正直、よく我慢したと言いたい。

「左の肩は脱臼・・・手、拘束されてたから自分でか。整復してるが、後でちゃんと診てもらえよ。手首の傷もガチガチにかためて誤魔化してあるが、バレバレなんだよ」

「・・・御名答」

「無理やりすぎなんだよ、やる事なす事ガサツ過ぎ。消毒くらいちゃんとやっとけ」

「そうしたら匂いがしちゃうでしょう?君があんまり時間稼ぎしてくれなかったから、全然時間なかったし。ジンが帰ったらちゃんと治療するよ」

呆れて物も言えない。それならばさっさとジンを帰して治療させたいものだと呟き、シウォンはずり落ちるジンを抱え直した。

軽快な音とともにエレベーターは駐車場に到着し、シウォンとスンフンは肩を並べて箱から降り立った。それと同時に、周囲の空気が一瞬だけ変わる。

ふと、視線を横にずらせば見知った人物が立っていた。何も持っていないスンフンは彼の胸元を軽く叩き、催促するように手を差し伸べた。

あぁと彼は頷き、ポケットから煙草を差し出した。カチリという音が聞こえ振り返れば、そこには紫煙を吐き出すスンフンの姿が目に入った。

再び、呆れたように溜め息を零す。ずかずかとスンフンの元へ歩み寄り、口元にあった煙草を奪い取り自分の唇に挟む。

「あ・・・ちょっと、吸いたい気分だったのに」

「喘息もちが何を言う。ユファンに言いつけるぞ」

「あ~、それは困るかな?でも、ほら、それは昔の事だし」

「ヒューヒュー喉鳴らしてるのはどこのどいつだ!病院着いたら点滴してやる!」

がなるシウォンを前に降参ポーズをとれば、心底嫌そうな顔のままじっと睨みつけられた。しばらくそうしていたが、スンフン相手では何の効力もなさない事に気づいたのだおう。視線を逸らし、再び車へと向かっていく。

目の前の彼の肩を叩き、スンフンはシウォンの後を追った。開いた後部座席のドアに身を乗り込ませ、今一度周囲に立ちはだかる黒いスーツの男性達へと視線を向けた。

ふっと頬を緩ませる。そして穏やかに、口を開いた。

「それでは、来週の診察をお待ちしていますとお伝え下さい。次回は無料とさせていただきます」

にこやかな笑顔を浮かべ、スンフンはそう告げた。ドアが閉まった直後走り出した車を見つめ、彼等はすぐに次の任務へと思考を切り替えた。



ソファーでうたた寝していると、テーブルの上に置いてあった携帯が音楽を奏でた。朦朧としていた意識は急に現実に引き戻され、ユファンはままならない身体に鞭打って携帯に手を伸ばした。

ディスプレイに浮かぶのは待ち遠しい人の名前。慌てて通話のボタンを押し、そっと耳を寄せる。

「ス、スンフン兄か?」

『うん。ごめんね、ユファン君。もう少しで帰るから、ちょこっとだけ待っててね』

時計を見れば深夜。携帯の向こうから聞こえた別の声に首を傾げながら、ユファンは考え込むように膝を抱えた。

しばしの沈黙。その間に耐えられず声をかけたのは、スンフンだった。怪訝な声音が耳に残る。

そうじゃないと。そう伝えたくて口を開くも、言葉にならなかった。それはユチョンの時と同じ症状だ。思わず閉口してしまう。

『ユファン君?』

誤解されたくなくて、ユファンはもごつく口を開き無理やり言葉を放った。意味のない言葉は更に沈黙を呼び、ユファンは再び押し黙ってしまう。

その意図を察したのか、スンフンの声が僅かに遠のく。不思議に首を傾げれば、次はシウォンの声が耳元に届いた。予想しなかった人物に肩を揺らす。

『いいか、ユファン、何でもいいからちゃんと思った事を口にしなさい。お前はどうでもいい時はうるさいのに、肝心な時は駄目だな』

「う、うるさい!」

『ほら、その意気だ。スンフンに言いたい事があるんだろう?ちゃんと言葉にしろ』

優しくない。いつもそう思う。あんなにボアは優しいのに、どうしてこいつはこんなにも嫌なヤツなのだろうか。

でも、言っている事は正しくて。ジンや、ジフンも言ってた。言葉にしろと。大切な事ほど言葉にしないと相手に伝わらないと、何度もそう言い聞かされた。

「・・・」

我慢が出来ない。抑制出来ない想いに身が引き裂かれそうになるのを堪え、ユファンは言葉を振り絞った。

「スンフン兄・・・寂しいよぉ・・・」

向こうで微かに笑う声が聞こえた。そして、短い言葉をささやかれた。少しだけ恥ずかしくて、ユファンは慌てて電話を切ってしまった。



『誕生日は、ゆっくり二人で過ごそうね』。あと数時間で迎える自分の誕生日、彼は願いを込めて言葉を紡ぐ。

誰よりも先に伝えたいから。だから、耳を塞いでいて。何も聞かないでいて欲しい。










続く。
にほんブログ村 BL・GL・TLブログ 二次BL小説へ
にほんブログ村
関連記事
スポンサーサイト

テーマ : BL小説 - ジャンル : 小説・文学

コメント
コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。