FC2ブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

Close your Eyes ep.95-7



『Sweet Drops』用に書かれた作品になります。原文のまま転記したので長文になります、ご了承ください。












「そうですか?良かったですね、ユファンさん」

遅くなりながらも家にたどり着けば、いつもは暗いはずのリビングに明るい光があった。様子を覗いながら覗き込むと、パジャマ姿でソファーに座るボアの姿が見えた。

電話の相手は、スンフンと逃避行したユファンらしい。文句を言いたいところだが、今日はユファンの誕生日だ。あまりにもそれは可哀想と、一瞬携帯に伸ばしかけた手を戻す。

気配を感じて、ボアが振り返る。嬉しそうに微笑み、ボアは携帯を片手にシウォンの元へと駆け寄る。

「ユファンさん、ごめんなさい。シウォン兄さんが帰ってきたので、お電話切りますね?」

そう言うや否や、ボアは携帯を放り出してシウォンに抱き着いた。その小さな身体を抱き締め、そっと頬に唇を寄せる。

「ジンは?」

「お昼頃にお家の方から電話がありまして、慌ててホンマンさんと一緒に帰りました。何でも、『ドンワン兄貴に怒られる』のが一番怖いんだそうです」

「ドンワン?誰だ、それ」

「ジン兄さんの恋人さんだそうです」

はて、ジンの恋人は確か『ミヌ』という名前だったはずだが。疑問を感じたが、まぁさして問題があるわけではない。おかげでろくでもない言い訳を言わないで済む。

ユファンはどこにいるのかと尋ねれば、ボアも詳しくは聞いていないがハワイにいるらしい。随分と奮発したものだと心の中で呟き、冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出す。

「ユファン君はとても可愛いですね。スンフン兄さんから指輪を貰ったそうですが、どうしたらいいのか分からないと相談されました」

「指輪?」

「はい。それと、結婚は20歳になったらしてくれるそうです。どうしたらいいお嫁さんになれるかとも聞かれました」

「嫁、ねぇ・・・」

自分には、あのユファンの可愛さは正直ひとつも分からない。確かに、昔より可愛げはある。だが、どうにも理解はし難い。

成長はしている。それは幼いユファンを思い返してもそうだし、再びこの地に戻ってきた時から考えても、それは顕著に見られている。

ユファンを最初に見た時、『こいつは駄目だ』と思った。根本から壊れた人形を見ているようで、本当は辛くて見ていられなかった。それが本音だと今更思い返す。

「ボア」

「はい?」

見上げるその顔を見つめ、シウォンは優しく髪を撫でた。一房それをすくい取り、そっと口元に寄せる。

「来週の休み、指輪を見に行こうか?」

「え?」

「あぁ、ウェディングドレスも準備しないとだな。母さんがボアによく似合いそうなデザインを選んでメールしてくれたから、ここに全部広げてゆっくり眺めようか。結婚式を挙げる場所も選ばないとだし・・・」

「あ、あのですね!私、海の綺麗な場所で式挙げたいです!あと、ウェディング・ケーキは自分で作ります!あと、あとあとあと、シウォン兄さんは王子様のような白いタキシードを着て下さい!」

次々出てくる注文は、今すぐに思いついたものではなさそうだ。口に出さず、ずっと考えていたのだろう。

王子様という柄ではないが、ボアがそれを希望するなら叶えてあげたい。指輪も実は選んであるが、なかなか機会がなく渡せないでいた。

「楽しみです」

嬉しそうに微笑むボアに口付けし、シウォンもまた微笑んだ。その身体を強く抱き寄せ、近い未来を夢見る。
 


「・・・あれ?」

搭乗手続きが始まる直前、背後からジンの間抜けな声が聞こえた。振り返れば、バックの中を呆然と見つめる姿が目に入った。

倣うようにバックに視線を向ければ、その中には見慣れた何かが蠢いていた。思わず目を丸くする。

無造作にそれを引っ張り出せば、抵抗もなくそれは空中で大人しくしていた。ジンが『ストーム』と、小さく名を呼ぶ。

「バックで寝てるの気付かなくて、連れてきちゃったみたい・・・」

まさか、このまま韓国に連れていくわけにはいかない。ひとまず、仕事で呼び出されたジンを帰さなければいけないと頭の中で計画を立てる。

ふと、視線を周囲に見やる。そこには、知り合いではないが見た事のある顔があった。

アフター・ケアもしっかりしている。そう心の中で呟き、ここから先は安全だと確証を得る。

「ジン、お前は先に行け。ストームは俺が送り届ける」

「お父さんに会ったら、急に帰ってごめんなさいって伝えておいてね」

荷物を預け、ストームを腕の中に抱きかかえる。最終便は間近で、ホンマンは今日中にアメリカを発つ事を断念した。ホテルの予約を済ませ、スンフンの勤める病院へと電話をする。

だが、スンフンはしばらく休暇をとったという。シウォンにつないでもらうよう話すが、彼もつい先ほど帰ったという。

タクシーで自宅に乗り付けるが、そこは真っ暗で人の気配が感じられなかった。隣のチャイムを鳴らすもそれは同様で、ホンマンは困ったと溜め息を零した。

がさりと音が聞こえ、とっさに身体を沈める。ふと見やれば、タクシーに横付けする黒い車が見えた。慌てふためいた運転手が車外に飛び出し、両手を上げて降参ポーズをアピールする。

尋常ではないその様子に、ホンマンは預かりっぱなしの銃の存在を思い出した。それを引き出し、胸元にそれを寄せる。

それは予感だった。そう、彼がそれだけで終わりとする男ではない。

「そのまま屈んでろ」

ふと、耳元で囁かれた言葉。振り返るのと、僅かな音が響くのは同時だった。

次に振り返った時には、先程まで運転手に銃を向けていた男性が倒れていた。その他の数人も同様で、立っていた運転手だけが呆然とその場に立ち尽くしている。

「お前は・・・」

「名は聞くな。チェ・ホンマン、お前は頭が良い男のはずだ」

銃を手で押さえられては何も出来ない。抵抗せず銃を下ろせば、彼も背中にまわしていた右手を下げた。多分、同じ物を握っていたのだろう。

自分の名は知られているが、相手の名前は分からない。そのもどかしさに一瞬顔を顰めたが、反論する事は出来なかった。

明らかに相手が悪い。それは出会った時から、そう気付いていた。

「戻ってきた理由は何だ」

「・・・犬が、荷物に紛れていた」

「ヨークシャ・テリア・・・パク・ユファンの犬か」

「二人は大丈夫か?」

返事はないが、それだけで分かった。彼等は護衛に来たというよりも、誰かが来るのを待っていたように思えた。

しばし呆然としながら、倒れている人間を回収し立ち去る彼等を見送る。息が僅かにあるのは、彼等の腕が確かという事。殺さずに生かすのは難しい。

「ホテルまで送ろうか?」

最後の一人を抱え、彼はそう声をかけた。確かに、タクシーの運転手は今はまだ放心状態だ。動くことはすぐに出来ないだろう。

申し出を受けようとした時、拘束されていた人物が低く笑った。後部座席を振り返り、彼は銃口をその男の眉間に向けた。

「あの方は、これしきの事で諦めたりはしない」

「・・・諦めてもらおう。シン・スンフンに危害を与える事は許さない」

「だが、警告は出来る。パク・チュンジェのアキレス腱はシン・スンフンだけではない・・・そうだろう?」

「・・・」

言葉を待たずして、彼はその場に倒れ伏した。後部座席に乗り込んだ仲間の手にはスタンガンがあり、それは護身用とは違う仕様になっているのが見て取れた。

やはり『あの人』の差し金か。全身から嫌な汗が噴出す不快感に耐えながら、ホンマンは自然と腰元に携えていた拳銃に手を添えた。

「ここは彼等の領域ではない。だが、君達が住む国は私達の管轄外だ。・・・大丈夫か」

「・・・ジンの周りはセキュリティーを万全にしてある」

だが、何か忘れていないだろうか。ふとそんな事に頭を悩ませていると、急に先程の言葉が鮮明に思い出された。

アキレス腱とは何か。それを考えた時、彼が壊れた原因に思い至る。

「クウォン・ボア!」

しまったと呟き、ホンマンはハンドルに手を伸ばした。触れるその寸前に、彼の手がホンマンを遮った。

顔を上げれば、そこには冷静な彼の表情があった。呼吸荒くその姿を見つめれば、彼は抑揚のない声音で話し始めた。

「あそこはアメリカで二番目に安全な場所だ。我々が行く必要はない」

「な、に・・・?」

「何せ、あそこには柳氏がいる。我々が呼ばれる時は彼等の処理の時だ、余計な事はしない」

「・・・リュ、ウ?彼の名前は、リュ・シウォンだろう」

突然、静寂の空間に何かが擦れる音が鳴り響いた。座席の間に放り込まれていた携帯を手に取り、彼は一言『了解』と言葉にした。

微かに聞こえた声は、彼と同じ声音の同じ口調の物だった。だが、絶対的に温度が低かった。

背筋が凍った。それは、初めてジンと出会った時と同じ感覚だった。



しんと静まった部屋。カチリと開錠した音が聞こえ、奥の部屋で眠っていたクラウドが瞼を開けた。

隣で寝ていたレインもその異変に気付き、僅かに頭を持ち上げた。開かれたドアの隙間をじっと見つめ、二匹はそのまま侵入者の姿を視界に映し出した。

誰にも気付かれないよう気配を消しながら、着実に奥へと進んでいく。微かに聞こえる呼吸の音を頼りに進めば、そこにはドアがまた一つあった。

鍵はかかっていない。慎重にそのドアを開けば、部屋の中にはダブル・ベッドがあるのみだ。人の姿を視界に捕え、男達は物音をたてないように部屋の侵入を果たした。

月明かりを浴びて浮かび上がるのは、まだ幼さの残る少女のような女性の姿だった。顔を見れば、そこには写真で覚えた物と同じだった。

つまりは、今回のターゲットはこの子だという事。意を決して銃口を彼女に向け、ゆっくりと指を引き金に添えた。

「おいおいおい・・・夜這いは感心しないな」

ふと、暗闇から声が聞こえた。慌てて振り返ると、そこには仲間が床に倒れている光景があった。次いで、衝撃が胸元を襲う。

ぐぅっと息が漏れる。それ以上、何も出なかった。喉元が焼けるように熱いのは、添えられた手が血に染まっているのは何故か。自分に何が起こったのか、それすらも分からない。

皆、同じ気持ちだったのだろう。そう意識が途切れる瞬間に思い、彼は息を吐き出した。その後、息を吸う音は聞かれなかった。

「スンフンは優しいが、僕はそうじゃない。運が悪かったと諦めろ」

残された彼等はシウォンの気迫に押されたのか、その場からピクリとも動く事が出来なかった。凍てついた身体は、もう自分の意思では動かせない。










続く。
にほんブログ村 BL・GL・TLブログ 二次BL小説へ
にほんブログ村
関連記事
スポンサーサイト

テーマ : BL小説 - ジャンル : 小説・文学

コメント
コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。