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Close your Eyes ep.95-8



HP『Sweet Drops』用に書かれた作品になります。原文のまま転記したので長文になります、ご了承ください。












ベルを鳴らせば、軽やかな声が耳に届く。来訪を告げれば快い返事が聞こえ、遮っていたドアが静かに開いた。

このマンションに入るのは初めてだが、ジンからは耳が痛くなるほど何度も聞かされた。戸惑いもなく、中へと足を運ぶ。

25階のボタンを押し、壁に背中を預ける。しばらくすると目的の階に着き、ホンマンは左右を見渡した。

「駄目です!レイン、戻ってきなさい~っっっ」

聞き覚えのある声に振り返れば、視界はすぐに暗転した。そして、衝撃が走る。

「ご、ごめんなさい!レイン、どいて下さい~っ」

危険性がないと思った為派手に身体を床に打ち付けたが、痛みはさほどなかった。無意識的に受身をとっていたのだろう。

身体とは裏腹に、思考には衝撃を受けた。レインの身体を触れば、少しごわついた感触があった。しかも、毛並みは真っ赤に染まっていいる。

「ホンマンさん、本当にすみません!お怪我はありませんか?!」

「いや、平気だが・・・どうしたんだ?」

身体の上に乗るレインをどければ、身体のいたるところが赤い。一瞬、嫌な予感が過ぎる。怪我をしたのかと思い匂いを嗅いでみたが、血の匂いは全くしなかった。

「ケチャップ?」

思いもかけない匂いに驚き声に出せば、ボアはレインの身体を引っ張るようにして部屋へと戻っていった。その後ろを追い、部屋のドアを閉める。

「そうなんです。昨日、シウォン兄さんが・・・その、ご飯を準備し忘れて。お腹を空かせたレインが、ご飯探してる時に冷蔵庫にあったケチャップを出して踏んじゃったみたいで・・・」

ボアはそのままバス・ルームへ連行し、レインをバスタブの中に入れる。シャワーで身体を濡らした後、足元に置いていたシャンプーを手に取る。

「いけない!ホンマンさんにお茶を出すのを忘れてました!すみませんっ」

慌てた様子で濡れた足を拭い、キッチンへと走り出す。バスタブに残されたレインは、自分で身体を洗うかのように身体を足で器用に擦っていた。

その様子を横目に見ながら、ホンマンはボアに呼ばれるままリビングへと移動した。ふいと薄く開いたドアが視界に入り、自然と中の様子を覗う。

同じように、ケチャップの匂いがする。だが、その中には微かに血の匂いがあった。窓を開けて換気をしているが、ホンマンの鼻はそれを逃す事はなかった。

コーヒーをテーブルに置くと同時に、来訪を告げるベルが鳴り響く。ホンマンが来た時と同じようにボアは可愛らしい声で対応し、ボタンを一つ押した。僅かに聞こえた声に眉を顰める。

「誰か来るのか?」

「はい。シウォン兄さんが朝一番に連絡してくれまして、知り合いの業者さんにお部屋のクリーニングをお願いしたんです」

しばらくすると、再びベルの音が鳴り響いた。ボアが玄関に向かうのを確認し、ホンマンは静かに立ち上がり寝室のドアに手を伸ばした。

軽く指で触れれば、それは容易に開いた。ベッドの上にはクラウドが眠っており、ドアの開く僅かな音に気付き薄っすらと瞼を開く。

血の匂いに紛れ、火薬の匂いも残る。クラウドの横にある破れたクッションを持ち上げれば、そこには噛み切った後があった。

「この部屋です。よろしくお願いします」

「分かりました。それでは、駄目そうな物は分類して最後に確認してもらいますので」

今度ははっきりと聞こえた。振り返れば、そこには何度も遭遇した事のある人物がいた。だが、今までの服装とは全く違う。

「あ!ごめんなさい、クラウド・・・犬、どけますね」

「大丈夫ですよ、私が移動しますので。リビングのソファーでよろしいですか?」

「でも、この子、重いので・・・」

「いいえ。あれ?バス・ルームの子、出て行ってしまいますよ?」

泡だらけのレインが廊下に立ち止まり、ボアを見て首を傾げる。慌てた様子で駆け出し、再びレインを持ち上げてボアはバス・ルームへと消えていった。

賑やかな声を聞きながら、二人は顔を見合わせた。浮かべていた笑顔がすぅっと薄れ、彼はホンマンを無視したまま寝室へと入っていった。

「・・・この子達はよく訓練されてる。主人の言う事を忠実に守る、とても良い犬だ」

漆黒の瞳はじっと一点を見つめ、クラウドはされるがままに大きな身体を抱き上げられた。その身体の下には、拳銃が一丁と空の薬莢が数個転がっていた。ぎょっと目を見張る。

それを手早く回収し、彼は新しい拳銃を側にあるシウォンのバックの中に押し込んだ。そして、黙々と作業を進めていく。

レインがケチャップで遊ぶはずはないし、シャワーを嫌がる事もないし、バスタブから出てくる事もないだろう。クラウドも邪魔になるここで寝ているわけがないし、悪戯に遊んでクッションを噛み切るはずもない。。

全てはシウォンが仕向けた事なのだろう。それを示唆する彼の言葉に頷き、ホンマンはリビングへと戻っていった。

再び、笑い声が響き渡る。何も知らないボアは一人幸せそうで、正直羨ましいと思った。

だが、それはシウォンが願った事なのだろう。反面、彼は一体何者かと考える。

「・・・特殊部隊は、慈善事業もするのか?」

ピクリと眉が動き、彼はホンマンを振り返った。足に頭を乗せたクラウドを撫で、ホンマンは自分の考えが正しいと確信した。

「特殊な銃だな。それを扱えるって事は、リュ・シウォンも元部隊の人間か?」

「・・・」

「韓国財閥に『柳』家がある。そこの次男坊はアメリカにいると聞いたが、それがリュ・シウォンか」

「余計な詮索はするな」

低く唸る声音で忠告する。彼を今一度見つめ、ホンマンは小さく息を吸った。これ以上、何を言っても聞いても彼は答えないだろう。沈黙がリビングを支配する。

レインがリビングに戻ってきた頃、ちょうど作業が終わったようだ。先程と同じ上辺の笑顔を浮かべ、彼はボアへと歩み寄った。

簡単な説明をし、最後に書類にサインをもらう。形式的だが、実は意味のない行為。それをホンマンは見ない振りをし、気付かないまま素直にサインを書き記すボアを横目に覗った。

「そうです!」

荷物を抱えて去ろうとする彼を呼び止め、ボアは一度キッチンへと戻っていった。冷蔵庫から箱を取り出し、それを紙の袋に入れて彼に差し出す。

彼の表情が一瞬崩れ、困惑の色に染められる。それをボアは気にも留めず、明るい声で言葉を紡いだ。

「今朝プリンを作ったんです。もしよかったら、職場の皆様と一緒に食べて下さい」

「え?あ、いや・・・」

「シウォン兄さんも食べれる、甘さ控えめのプリンです。お部屋を綺麗にしていただいた御礼です」

「・・・」

戸惑いをあらわに立ち尽くしていると、ふいと玄関のドアが開いた。レインは嬉しそうに玄関へと歩み、クラウドは尻尾をパタパタと揺らした。

手には大きな袋が一つ。それを同じように嬉しそうに抱き着いてきたボアに渡し、シウォンは柔らかく微笑んだ。

それは、正直シウォンの知らない一面だった。ホンマンも、彼自身も、知らない素顔。軽いボアの身体を容易に抱え、シウォンは彼の肩に優しく叩いた。

「お前、甘い物好きだろう?ボアの作る菓子は最高だぞ、遠慮しないで持っていけ」
 


新しく購入した枕を膝の上に置き、シウォンは最後に通した糸を八重歯で切った。満足気に仕上がりを眺め、ベッドにそれを放り投げる。

「シウォン兄さん、ご飯出来ましたよ」

「あぁ。今行く」

裁縫箱を元の位置に戻し、枕の感触を確認する。羽毛の柔らかさとは違う、少し硬い感触が残る。

足元で大人しく伏せていた二匹が、シウォンが立ち上がると同時に頭を持ち上げた。その頭を優しく撫で、ボアの隣に立ち戸棚を開ける。

「どうされましたか?」

「ん?今日は、レインとクラウドに奮発しようと思ってな」

スンフンから貰ったドッグフードを開ければ、待ちきれない様子でレインがシウォンの足に絡みつく。背後では何かが這いずるような音が聞こえる。

思わず苦笑を零す。振り返れば、僅かに匍匐前進した後が見られるクラウドの姿が見えた。その身体をボアが抱え、食事をする位置へと移動させる。

いつもよりがっつく様子で食事をとる二匹に微笑み、シウォンはテーブルへと視線を向けた。そこには、いつもより豪華な食事。何かあったのかと首を傾げる。

「シウォン兄さん、明日は夜勤ですよね?朝寝坊しても大丈夫ですか?」

「うん?」

「その・・・あのですね、やっぱり早く子供欲しいな~って思いまして。ちょうど、その・・・今日ですね、頑張れば・・・その、出来そうな日、なんです」

「え?あ、うん」

いつもは真正面に座るのに、今日は寄り添うようにちょこんと隣に座る。赤らんだ顔を隠しながら箸を手に持ち、ボアは先にご飯を食べ始めた。

ふんわりと笑みを零し、シウォンも倣うように箸を手に持ち食べ始めた。少しだけ触れ合う足に幸せをかみ締めながら、静かに二人だけの時間を満喫した。










続く。
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