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Close your Eyes ep.96-2



HP『Sweet Drops』用に書かれた作品になります。原文のまま転記したので長文になります、ご了承ください。












しばらくヴァネスと話していいるうちにチュンジェも打ち解けてきたようだった。普段はあまり自分から意見を言ったりはしないが、今日は興味があるせいかいろいろな質問を投げかける。

その様子にジンは驚きながらも微笑んでいた。まるで子どもの成長を見守る親のようだ。

「今日は、ホントにありがとう」

「役に立ったかどうかはわかんねぇけどな。まぁ、また明日逢うんだろ?続きはそのときな」

「うん」

こぼれた幼い笑顔に瞳を奪われる。それに気づいたヴァネスは心を落ち着かせるように深く息を吸い込み、ジンを見つめた。

「お前も明日、一緒に来るんだろ?」

「うん、行く~っ」

「じゃあ、メシ作って待ってるからなるべく早く来いよ?」

ポケットに入っていた手を取り出し、満面の笑みを浮かべるジンの頭をぐしゃぐしゃと乱暴に撫でる。相変わらず頭を撫でられるのが好きなようで、されるがままになりながらとろけそうな笑顔を浮かべていた。

「…」

その様子を見つめる1対の瞳。どこか物欲しげなその表情に気づき、ヴァネスはチュンジェの頭も同じように撫でた。

「じゃあ…また明日な。ジン、チュンジェ」

「うん、まったね~」

長い両手を大きく振りながら見送るその姿に思わず笑顔が浮かぶ。しばらくジンを見つめていたチュンジェも真似するように大きく手を振った。

「チュンジェ、よかったね~?」

「…うん。いっぱい、話が聞けた。ヴァネス、いい人だね」

チュンジェの高評価が嬉しいようで、笑顔のまま何度も大きく頷く。その仕種に、チュンジェはジンもまた少なからずヴァネスのことを特別に思っているのだと直感した。

「言葉は少し乱暴だけど、すっごく優しいんだよ~」

「うん」

だいぶ時間をロスしてしまった。すでに街は夕暮れ。手を繋いで歩きながら、ヴァネスについての話を楽しげにしていく。チュンジェもまたその話に惹きつけられているようだった。

「…明日、楽しみだな…」

「うん、オレも楽しみ~。ヴァネスのトコ遊び行くの久しぶりだもん。明日は少し早めにお迎え行くね?」

その申し出に小さく頷き、チュンジェは顔を前へと戻した。

だんだんと開けてくる視界。オレンジ色の光に照らされ、昼間来るのとはまた違った景色が顔を見せていた。きっと、春になればまた違う世界を見せてくれるのだろう。

お墓の前で足を止め、目を伏せた二人は手を合わせた。それぞれに心の中で、眠るふたりへ言葉を投げかける。

声は返ってこないけれど、でもいつでも近くにいてくれる。そんな気がしていた。

翌日。ジンは予告どおり昼前にチュンジェの元を訪れた。昨日ジンが買ってきた服に身を包み、車へと乗り込む。

あのころと同じく、駐車場はまだ契約してあるのだという。ヴァネスの愛車の隣へ車を止め、ふたりはエントランスへと向かった。

以前は合鍵で中へ入ったが、いまはもうその鍵はない。ヴァネスが開いてくれた自動ドアを抜け、エレベーターへと乗り込む。そして迷うことなくその部屋へとたどり着いた。

「いらっしゃい」

おかえりといつも迎えてくれた言葉がいまは少し違う。寂しさを覚えながらもジンは笑顔を浮かべた。

「お、お邪魔します…」

まるで我が家のように駆け込んでいくジン。取り残されたチュンジェは小さな声でそう呟き、脱いだ靴をそろえた。

「礼儀正しいんだな」

「そんなことないよ…」

「そうか?まぁ、いいや。とりあえず上がれよ。メシ、用意してあっから」

顔はそっくりだが、性格は違っているようだ。チュンジェのほうがおとなしいと言った感じだろうか。昨日、だいぶ打ち解けたと思ったのだが、まだ完全には心を開いてくれていない。

「チュンジェ、ヴァネス、早く~っ」

リビングから投げかけられる声。俯いていた顔を上げ、チュンジェはヴァネスの脇を通り過ぎてジンの元へと向かった。

勧められるまま腰を下ろし、後からやってきたヴァネスを見つめる。食べ物を前にそわそわするジンと、じっとヴァネスの行動を見つめるチュンジェ。その差に思わず笑みがこぼれる。

「う…?ヴァネス、どうしたの~?なんかおかしい~?」

「んなコトねぇよ。ほら、さっさと食え。冷めちまったら、余計まずくなっちまうからな」

「うん!いっただきま~す」

好物ばかりが並べられた食卓。目を輝かせながらまずはハンバーグを一口頬張る。幸せそうな笑みを浮かべるジンを見つめ、チュンジェもまた箸を持った。

「いただきます」

「悪いな。お前の好物聞き忘れちまったから、ジンの好きなモノになっちまった」

「大丈夫。兄さんの好きなものは、僕も好きだから」

どういう理屈なのだろうか。首を傾げてみたが、答えはない。ゆっくりと租借しながら食べ進めていく。これではまるで育ちのいいお坊ちゃんだ。ジンとは対照的だと言える。

「おいしい…」

「そうか?」

「うん。すごくおいしい」

少し緊張していた顔が少しずつ和らいでいく。食べ終わるころには幼い笑顔が浮かんでいた。多めに用意したつもりだがジンには少し足らなかったようで、首をかしげながらお腹をさする。

「ヴァネス、おやつある~?」

「あぁ。ちゃんと用意してあっから心配すんな」

絶対にそう言うだろう確信があった。だから昨夜のうちにケーキを予約し、今朝取ってきたホールケーキがちゃんと冷蔵庫に眠っている。

それならばしばしの休憩だと、ソファへ身体を横たえたジンはクッションを抱き寄せた。それに顔を埋め、目を細める。どうやら昼寝を決め込むようだ。

「チュンジェ、こっち」

「うん」

当初の目的を忘れてはいけない。少し玄関のほうへと戻り、その脇にあった扉を開く。漂ってくるのはまるで図書館のような香り。誘われるように中を覗き込めばたくさんの本が乱雑に置かれていた。

「すごい…」

「ほとんど医学書だ。好きなのやるよ」

本を踏まないようにと慎重に中へ足を踏み入れる。びっしりと埋め尽くされている本たちに圧倒され、チュンジェは呆然とその部屋を見つめた。

「なんかあったら呼べよ?」

「うん、ありがとう」

声が聞こえるようにといつもなら締め切っている扉は開けっ放し。リビングへと戻ったヴァネスは穏やかな寝息を聞きながら食事の片づけに勤しんだ。

目覚める気配もなければ、出てくる気配もない。もう何本目になるのかわからないタバコを灰皿へと押し付け、ヴァネスは静かに立ち上がった。

「チュンジェ?」

声をかけながら中を覗き込めば真剣な顔で本に没頭する姿があった。手にとって呼んでいるのはがん治療の専門書。その周囲にもやはりがんを扱った本が並べられていた。

「…」

邪魔をするのもかわいそうだ。まだ午後3時。時間も差し迫ってはいない。リビングへ戻ると、いつの間にか目を覚ましたようでクッションを抱きかかえたジンがこちらを見つめていた。そして小さく手招く。

「どうした?」

「あ、あのね、お願いがあるの」

「ん?」

昨日も願いを聞いたばかり。しかも、今日の願いが昨日よりも言いにくそうだ。躊躇うように口を閉ざし、俯く。それを何度か繰り返し、ジンは意を決したようにヴァネスを見つめた。

「チュンジェのコト、まだ誰にも言わないで欲しいの」

「…?」

「まだ、みんな知らないんだ…。ちゃんと、オレからみんなに話すから、いまは誰にも言わないで。お願い…っ」

いったいどんな事情があるというのだろうか。やはり単純な関係ではないということなのだろうか。

昨日は深くまで聞けなかったが、今日ならば聞けそうだ。隣へと腰を下ろし、ヴァネスは少し涙ぐんだ瞳を浮かべるジンを見つめた。

「チュンジェは何者だ?」

「…チュンジェは、オレの弟だよ。でも、母親はいないんだ…」

「…?」

ジンの母親が早くに亡くなっていることは知っている。だからこそ、兄弟であるとは考えられない。違う母親からここまで似た人間は生まれないだろう。

「あの、あのね…。誰にも、言わない…?」

「あぁ。約束するよ」

その言葉が真実なのか探るように、濡れた瞳がヴァネスの顔を映し出す。しばらくそうしていたジンは意を決したように耳元へと唇を寄せた。

「クローン、なんだ…」

「…」

それはあまりに突拍子もない言葉だった。クローン技術が開発されていることは公の事実だが、まだ人体実験は行われていないはずだ。

「マスコミに公表はされてないけど、事実実験は人間にも及んでる。あの人が遺書に記してたくらいだから本当のことだと思う」

「…」

ゴクリと生唾を飲み込み、チュンジェのいる部屋を振り返る。しかし、まだ出てくる様子はなかった。

「だから、みんなに言えなくて…。ちゃんと伝えて、早く一緒に住みたいのに…っ」

「いま、どこに住んでんだ…?」

「マンスリーマンション…。ホテルだといろいろ面倒だし、大変かなと思って…」

確かに期限がない以上、ホテル暮らしは難しいかもしれない。その点、マンスリーマンションならば1ヶ月単位の契約だ。出費もそちらのほうが抑えられるだろう。

「働きながら学校行くって言ってるし、それだと独り暮らしは大変でしょ?それにチュンジェ、やっぱりひとりじゃ寂しいよね?心細いよね?どうしたら、イイかな…?」

本当ならば今日からでも一緒に住んであげたい。しかし、いまだ踏み切ることはできずにいた。それに、毎日のように通うのも限界だ。ドンワンが不審がっている。

「…」

いまにも泣き出しそうな表情。しかも、この不安を打ちあけられるのはいま自分ひとりだけ。助けることができるのも自分だけだ。

友だちという関係に収まってはいるが、まだ特別であることに代わりはない。早計だとは思いながらも、ヴァネスは心を決めた。

「オレが、一緒に住もうか?」

「え…?」

「ジンの家の準備が整うまで、ここに住めばイイんじゃね?それに、チュンジェの戸籍もここに移したまんまだろ?」

予想外の申し出に目を見開き、パチパチと瞬きを繰り返す。その幼い表情に微笑み、ヴァネスはそっと頬へと手を伸ばした。

「それに、ここにいれば勉強も教えられる。それとも、オレじゃ頼りねぇか?」

「そ、そんなコトないよっ!た、ただ、迷惑じゃない?ムリしてない?」

期待と不安が入り混じった瞳。冗談だと誤魔化すならばいまのうちだが、気づくとヴァネスは大丈夫だと告げていた。

「まぁ、チュンジェがよければの話だけどな」

本人を無視して話を決めるわけにはいかない。決定権はチュンジェにあるのだから。そしてふたりは意を決し、答えを窺うべくチュンジェのいる部屋へと向かった。










続く。
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