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Close your Eyes ep.96-5



HP『Sweet Drops』用に書かれた作品になります。原文のまま転記したので長文になります、ご了承ください。












すでに、誤魔化すのは無理そうだ。

疑いや怒りが入り混じったその瞳を認め、ヴァネスは小さく息をついた。おそらく、自分がなにを言っても信じてはくれないだろう。こうなってしまった以上、どうすることもできない。

視線は外さないまま、ヴァネスは空いている手で携帯電話を取り出した。そして彼へと発信しながらチュンジェへと手渡した。思いのほか通話は早く繋がったようだ。

『もっしも~し?』

聞こえてきた声に緊張が少しだけ抜けていく。代わりに罪悪感がむくむくと膨れ上がっていった。

「に、兄さん、どうしよう…。兄さんの知り合いに見つかっちゃって…っ」

『え!?だ、誰!?ど、どうしよう…』

遠まわしな言い方などありはしない。現実をそのまま言葉にするしかできなかった。電話の向こうとこちらでジンとチュンジェはうろたえていた。

「とりあえず、いまから来れるか聞いてみてくれ」

チュンジェにだけ聞こえるような囁き声。コクリと頷き、チュンジェはそのままジンへと伝えた。

『う、うん…。すぐ、行く…』

「ご、ごめんね?兄さん…ホントに、ゴメンなさい…っ」

『だ、大丈夫だよ~っ!すぐ行くからヴァネスといい子で待っててね?』

努めて明るく、さもなんでもないことのようにそう告げる。その優しさに、胸が締め付けられる。とんでもないことになってしまったと、チュンジェは罪の意識に苛まれていた。

「ジン兄さん、僕にわかるように説明してもらえませんか?」

その言葉が自分に投げかけられているだろうことはわかった。しかし、前に出ることをヴァネスが許さなかった。

「とりあえず…ちゃんと説明すっから、場所移さねぇ?いまから飲みに行くトコなんだ」

「なんで僕があんたと飲みに行かなきゃなんないんですか?さっさとジン兄さんを返してください」

「いいからついてこいよ」

伸ばされた手を避けるように踵を返し、ヴァネスは繋いだままの手を引いて近くの店へと入っていった。個室を指定し、中へと進む。

「ヴァ、ヴァネス、どうしよう…」

「大丈夫だよ、心配すんな」

動揺するチュンジェを隣へと座らせ、落ち着かせるように髪をなでる。しばらくして、入ってきたジェジュンは帽子を脱ぎ捨てた。きっと、このままでは帰れないと思ったのだろう。

向けられた視線は刺々しい。なぜ、ジンがお前の隣に座るんだ。そういまにも怒鳴り散らしそうだ。

「座れよ。じゃないと話もできねぇだろ?」

「話なんて必要ありません」

「そう言うなって。もうひとり、呼んだから来るまで待ってろよ」

その必要はないと言わんばかりに再び手が伸ばされる。遮るようにその腕を掴み、ヴァネスはため息をついた。

「いいから座れ。言っとくけど、誤解だかんな?」

「どこが、どう、誤解なんですか?」

「全部だよ。もうしばらくすりゃわかる」

予言めいた言葉。しかし従う義理はない。ヴァネスの隣へ座る青年へと視線を移し、声を発そうとした瞬間、それを遮るように携帯電話が鳴り響いた。

「も、もしもし?…え?ここ?ここは…その…」

ここがどこかと尋ねられてもチュンジェに答えられるはずもない。その手から携帯電話を取り、ヴァネスは店の名前を告げた。

「あと5分くらいで来るってさ」

「…何を、企んでるんですか?」

「別に…何も企んじゃいねぇさ。ただ、お前の誤解を解こうと必死なだけ」

いったい誰がその言葉を信じるというのだろうか。少なくとも、ジェジュンには信じられない。ただイタズラに時間を延ばされている。そういう意識しかなかった。

「とにかく座れよ」

思いのほか、低い口調だった。ビクリと後ろでチュンジェが震えたのがわかる。安心させるようにと手を握り、手の甲を指先で優しくなでる。そうすれば自然と強張りが取れていった。

しばらく、無言の攻防が続いた。折れたのはジェジュンだった。ヴァネスの後ろへ隠れている青年に帰る気がないのであれば、自分が留まるしかない。

乱暴にイスを引き、どっかりと腰を下ろす。そして足を組み、怒りを誇示するように腕を組んだ。

1分がひどく長い。誰も口は開かず、重苦しい空気のまま時が過ぎた。

ふと、その静寂を切り裂くように聞こえる慌しい足音。部屋の前で止まったかと思えば、勢いよく扉が開かれた。

「チュンジェっ!」

「え…?」

驚いたのはもちろんジェジュンただひとりだった。それまで一切顔は見せず、ヴァネスの後ろに隠れていたチュンジェはその声に初めて素顔を曝した。

「兄さん…っ」

広げられた腕の中へ迷うことなく飛び込んでいく。ぎゅっとジンへ抱きつき、チュンジェはその胸へ顔を埋めた。

「だ、大丈夫!?何もされてない!?」

「うん…っ」

「ヴァネス、誰に見つかっちゃったの?」

チュンジェの無事をこの目で確認したジンはヴァネスへと視線を移した。そう問いかければヴァネスは含み笑いで指を差す。

人差し指を辿り、着いた先。ジンはぎょっと目を見開き、魚のように口をパクパクとさせた。

「ジェ、ジェジュン君っ!」

「…」

アメリカから帰ってきて電話では何度も話したが、実際逢うのは久しぶりだった。先ほどまでの不安はどこにやら。ジンは満面の笑みを浮かべ、ジェジュンへと抱きついた。

「ジェジュン君だ~、ジェジュン君だ~っ」

「…」

ぽかんとした間抜けな表情でされるがまま。その様子にヴァネスは堪えきれず、失笑した。声を我慢しようにも、できるレベルではない。

腹を抱えて笑い続けるヴァネスにひとり取り残されたチュンジェはきょとんとした顔でその光景を見つめていた。

いったい、何がどうなっているのか…。

さっぱり状況が飲み込めない。わかっているのは、いまこの腕の中にいるのがジンであること。ただそれだけだった。

「誤解、解けたか?」

「解けるには、解けましたけど…」

気になるのはこの目の前にいる青年だ。あまりにもジンに似すぎている。しかし、よくよく見てみれば少し若いだろうか。自分よりも年下に見える。

「ジン、ちゃんと紹介してやれよ」

そうだったと慌てて身体を離し、チュンジェの隣へと立つ。挨拶をするのに座ったままというのもおかしいだろうと、チュンジェもまた席を立った。

「えっと、オレの弟でチュンジェって言うの~。こちらはジェジュン君なの~」

「初めまして、弟のチュンジェです。兄がお世話になってます」

「え?いや、その、こちらこそ…」

今度はジェジュンそっちのけでチュンジェと話しはじめてしまった。本当に兄弟のようだ。呆然として眺めていると、それを遮るように何かが現れた。

「とりあえずなんか注文しようぜ?」

「あ、はい…」

「ジンとチュンジェは何飲むんだ?」

問いかければ揃ってビールと答える。酒の趣味も似ているようだ。ジェジュンもそれに賛同し、控えていた店員にジョッキビール4つを注文した。

「でも、よかった~。カンタ兄貴とかエリック兄貴とか、おっさんとかにバレちゃったりしてたらどうしようかと思っちゃった~」

確かにそこへ知られるということはつまり、ドンワンの耳にも自動的に届いてしまうだろう。もう、時間的猶予はない。すぐにでも知らせるべきだ。

どうせ、悩んでいたって、タイミングを計っていたって始まらない。ジンは心を決め、チュンジェを見つめた。

「チュンジェ、明日時間ある~?」

「うん…。僕は、大丈夫」

「じゃあ、迎えに行くから準備しておいて~。家で、ランチパーティしよ~?」

あれだけ躊躇っていたのに、決めれば即行動。切り替えの早さにヴァネスもチュンジェもついていけない。もとよりついていけていないジェジュンも同様だ。

「イイのか?」

「うん。だって、チュンジェもオレの家族だも~ん。いろんなトコに連れてってあげたいし、いろんなモノ見せてあげたい。みんなに紹介しないまんまじゃ、それもできないもんね~」

ジンらしいと称するべきなのだろうか。ヴァネスとジェジュンは顔を見合わせ、思わず微笑んだ。いつもはいがみ合ってばかりだが、このときばかりは心が通じたようだ。

「ねぇ、ねぇ、チュンジェ。遊園地って行ったコトある~?」

「ううん、ない…」

「この前、ウォンタク連れて行ってきたんだけど、すっごく楽しいんだ~。だから、今度一緒に行こ?」

その誘いに笑顔が戻る。小さく頷き、嬉しそうに微笑んだチュンジェはヴァネスを振り返った。

「ヴァネスも一緒に行ってくれる?」

「あぁ」

今度はジェジュンが取り残されてしまっているようだった。それははっきり言っておもしろくない。しかも、ヴァネスと出かけるなど許せるはずもなかった。

「僕も一緒に行っていいですか?」

「うん、ジェジュン君も一緒~」

帰ったら休みはメンバーと相談して調整しよう。何がなんでも行かなければならないと、ジェジュンは仕事の鬼であるユノと戦う決意を固めた。

すっかり誤解も解け、和気藹々とした夕食。チュンジェもジンに負けず劣らずの酒豪だ。顔色ひとつ変えずに飲み進めていく。

楽しげなジンとチュンジェを見つめるふたりの眼差しは優しく、微笑みはどこまでもあたたかかった。










続く。
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