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Close your Eyes ep.97-4



HP『Sweet Drops』用に書かれた作品になります。原文のまま転記したので長文になります、ご了承ください。












「あ、れ…?」

気づくとなぜかベットの上。ジンと一緒にいたはずなのに、もうその姿はどこにもなかった。

身体を起こして不思議そうに辺りを眺めるチュンジェを見つめ、ヴァネスはそっと微笑んだ。ベットの端へと腰を下ろし、優しく髪をなでる。

「ジンならジェジュンと帰ってったぞ。…って言っても、ジンも寝てたから帰ったつぅよりは連れてかれたってカンジだけどな」

その言い種に微笑み、シーツの上に置かれた手に自らの手を重ねる。珍しい行為だとは思いながらもヴァネスは意を汲むようにその手を握り返した。

「気持ち悪いのは直ったか?」

「うん。もう大丈夫」

「そっか…よかったな?」

手を繋いだままコクリと頷き、じっと大きな瞳でヴァネスを見上げる。しばしそうしていたチュンジェはゆっくりと首をかしげた。

「ねぇ、ヴァネス」

「ん?」

「朝、なんで僕にキスしたの?」

すでに記憶の彼方へと葬った今朝の行為。いまごろになってそんな質問が投げかけられるとは思っていなかった。

「なんで、だろうな…。オレにもよくわかんねぇんだ」

正直にそう答え、窺うようにその瞳を見つめ返す。気分を害してはいないだろうか、そう確認しているようだった。

「僕、兄さんの代わりでもいいよ…?」

その言葉に心臓が大きく飛び跳ねる。ドクドクとまるで耳元で鼓動しているようだ。

「ヴァネス、兄さんのコト好きなんでしょ?」

本当に、心臓に悪い。このままでは止まってしまいそうだ。血の気が引いていくようなのに、やけに全身が熱い。言葉は出ず、ただ見つめ返すことしかできなかった。

「ヴァネス?」

まるで時が止まってしまったかのように動かなかった。不思議に思い、さらに首がかしげていく。いったい何が起こったのだろうか。チュンジェはヴァネスを見つめ返しながらそう心の中で問いかけた。

沈黙を破るように、深いため息がふたりの間に浮かぶ。空いている手でガシガシと頭をかき、ヴァネスはもう一度息をついた。

「あのなぁ、チュンジェ。お前はお前だ。ジンじゃねぇんだぞ?代わりになんてなれるワケねぇだろうが」

「なれないの…?」

「当たり前だ」

まったくと心の中で呟く。かしげていた首がだんだんとうなだれ、笑顔が曇っていく。その様子にヴァネスはいぶかしむかのように眉根を寄せた。

「チュンジェ?」

「…ううん、なんでもない。変なコト言ってゴメンなさい」

取り繕うようにそう告げ、曇ってしまった笑顔の代わりにいつもの心無い微笑を浮かべる。ピクリと眉尻を上げ、ヴァネスは離れようとする手をそっと引き寄せた。

おとなしく腕の中へと引き込まれ、胸に頬を埋める。朝と同じく、抵抗する気はさらさらないようだ。

「なんか、勘違いしてんだろ?」

「…?」

「言っとくけどな、オレはお前をジンの代わりだと思ったコトは一度もねぇって意味だよ。確かに、ダブるときはあるけど…ちゃんと別人だってわかってる。その上で、オレはお前に惹かれ始めてんだ。わかったか?」

なんでこんなことまで言わなければならないんだろうか。思わず自分が情けなくなってくる。ちゃんと理解しただろうかと見つめ返せば、小さく首をかしげたまま時を止めていた。思わずまったくと呟く。

でも、言葉にしたことでおぼろげながら自分の心が見え始めた。窺うように見上げる瞳。色も形もすべてジンと瓜二つだ。けれど決定的に何かが違う。それはきっと、理解しようとするその心だ。

いつも一方通行だったその想いが、チュンジェが相手なら双方向になる。まだうまく繋がってはいないが、確かに心は通い始めていた。

「チュンジェは、オレが好きか…?」

かつては口にできなかった問いかけ。しかしいまは躊躇う必要はない。不安がないわけではない。でも、恐怖はなかった。

「好き…。兄さんの次に好き」

躊躇いは一切なかった。そう告げる声に澱みもない。本当にそう思い、素直にそうヴァネスへと告げる。

それはそれで複雑だと、ヴァネスはかすかに苦笑した。好きと言ってくれるのは嬉しいが、一番ではないことに少し落胆する。

しかし、それは仕方のないことだ。チュンジェにしてみればジンが唯一の肉親と言っても過言ではない。頼れるのも、受け入れてくれるのもジンだけ。その想いが強いのだろう。

ジンが子どものようなら、チュンジェはまるで生まれたばかりの赤ちゃんだ。あまりに純粋すぎる。おそらく刷り込みと同じ状態なのだろうが、無条件に信じすぎているようだ。

見上げる瞳の純粋さに心が奪われていく。再び目覚めだした欲望を抑え込み、ヴァネスは大きな手のひらでその頭を撫でた。

「オレも、たぶんお前のコトが好きなんだと思う。でも、もうちょっとだけ時間くれねぇか?」

「…?」

どういう意味なのだろうか。さっぱりわからないが、嫌だという意識もない。コクッと小さく頷き、チュンジェはそっと繋いだままの手を握り返した。

頭を預け、ゆっくりとまぶたを閉じる。無防備すぎるその姿にヴァネスはそっと微笑んだ。
 


目を覚ましてみればそこにはジェジュンの端正な横顔があった。大きな瞳はいま、まぶたの裏に隠されている。浅く開いた唇からはかすかな寝息が聞こえていた。

「…?」

チュンジェとヴァネスはどこへ行ったのだろうか。そして、いつの間にこの部屋へ移動していたのだろうか。遊園地を出て車に乗り込んだまでは記憶があるが、その先は一切ない。

けれど、不安ではなかった。ジェジュンの腕の中にさえいれば、その必要はない。

いったんは持ち上げた頭を下ろし、胸へと擦り寄る。優しい香りを胸いっぱいに吸い込み、ジンはかすかに微笑んだ。

久しぶりに過ごすふたりきりの夜。ともに過ごすだけでは物足りない気もするが、多くを望んでいけない。忙しい人なのだから、こうして一緒に過ごせるだけでも儲けものだ。

「ジェジュン君…」

かすかにその名前を紡いでみる。そういえば今日はあまり名前を呼べなかった。1日中一緒にいたのにそれもおかしな話だ。

「ジン兄さん?」

鼓膜を揺るがす少し掠れた声。わずかに身体が震える。閉じていたまぶたを開き、ジンはもう一度頭をもたげた。

「すみません。起きるまで待ってるつもりだったんですけど、いつの間にか寝ちゃったみたいです」

「ううん。疲れてるんだからイイよ~。一緒にいれるだけで嬉しいもん」

他愛もないその言葉が心をくすぐるなど考えてもいないのだろう。甘えるように擦り寄るジンを抱きしめながら、ジェジュンは幸せをかみ締めるように微笑んだ。

喜びを伝えるように、そっと頬を撫でる。つられるように顔を上げたジンにそっと口づけ、その身体を抱き寄せた。

「まだ体力は残ってますか?」

「う?」

くいっと首をかしげるジンに笑みを深め、あえて言葉にはせず、腰のラインをゆっくりと手のひらで辿る。ピクリと震える身体。どうやら意味を理解してくれたようで、静かに唇が重なった。

火傷するんではないだろうか。

そう思わせるほど久しぶりの行為には熱情がこもっていた。離れていた時間を埋めるように、その存在を確認するかのように貪る行為。体力は底をつき始めていたが、それでもジンは幸せだった。

もうひとりでは頭を上げることもできない。ぐったりとした様子でジェジュンに身を任せ、目を閉じていた。

「大丈夫ですか?」

問いかけると答えの代わりにお腹が空腹を訴える。エネルギーが完全に切れてしまったようだ。ふっと笑みを浮かべ、ジェジュンは覆いかぶさるように乗っていたジンの身体を隣へと横たえた。

「いま、何か食べるもの持ってきますから少し待っててくださいね?」

ジンのお腹の虫は自由自在なのだろうか。またもやお腹から小さな鳴き声が聞こえてくる。思わず苦笑を浮かべ、ジェジュンはリビングへと戻っていった。

ふたりで過ごすための家だが、まだほとんど使用したことはない。冷凍食品はあるが、それをあたためていたらジンが空腹で死んでしまいそうだ。

念のためにとコンビニで買ってきた非常食。袋ごと寝室へと戻り、ベットの端に腰を下ろしたジェジュンは中身を取り出した。

「おにぎりとパン、どっちがいいですか?」

尋ねれば閉ざされていたまぶたがかすかに開き、左手に持ったおにぎりを見つめる。どうやらこっちがご所望のようだ。

抱えるようにジンを起こし、胸へと寄りかからせる。そしてビニールのパッケージを開き、口元へと運んだ。かぱっと大きく開けた口にそれを差し入れ、飲み込むようにそれを食べていく。

咀嚼している間にペットボトルの封を切り、水を差し出した。ひとつおにぎりを食べ終えたジンは動くようになった手で袋の中をあさる。頬張っている間にパッケージを開き、絶え間なく食べ続けていた。

「そんなに慌てて食べないでも大丈夫ですよ?」

「らって、おらなすいた~」

確かに最期の食事をしてからすでに半日以上。普段のジンから考えれば記録的な数字だ。終わってみれば多めにと考えて買ってきた食糧はほとんどジンの胃袋の中。ジェジュンにはパンがふたつ残されていただけだった。

「ねぇ、ねぇ、ジェジュン君」

「…?」

腕の中でくるりと身体を回転させ、間近で向かい合う。口の中に残っていたパンを飲み込み、ジェジュンは首をかしげた。

「お願いってなに~?」

それは以前、アメリカへ旅立つ前に告げた言葉。ジンは覚えていてくれたようだ。こみ上げてくる嬉しさを堪えきれず頬に口づけ、その身体を抱き寄せる。

髪を何度も撫で、ジェジュンは微笑をそのままに耳元へと唇を寄せた。

「ジン兄さん」

「…?」

呼びかけられれば顔を上げたくなる。しかし後頭部に添えられたジェジュンの右手がそれを阻む。おとなしく頭を戻し、ジンは代わりにジェジュンの背中へと手を回した。

「僕を、ジン兄さんの家族にしてもらえませんか?」

「う…?」

手の力を緩めればゆっくりと頭が持ち上がる。そこには年上とは思えないほど幼い、きょとんとした表情があった。

「お願い、聞いてもらえますか?」

ジェジュンの優しい笑顔と、たった数秒のやり取りが頭の中を支配していく。頭は真っ白になり、ただ触れている部分から伝わってくるぬくもりだけが現実に引き止めているようだった。










続く。
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