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Close your Eyes ep.97-5



HP『Sweet Drops』用に書かれた作品になります。原文のまま転記したので長文になります、ご了承ください。












答えはすぐじゃなくても構いません。考えて置いてください。

そう言って別れた日からジンはずっと”家族”について考えていた。けれどいくら考えてみてもよくわからない。家族は血縁からなるものだ。けれど、生憎と血は繋がっていない。赤の他人が家族になるには婚姻するほかなかった。

「む~…っ」

朝からずっとこの調子だ。テーブルの上には無駄に広げられた参考書。勉強を教えてくれるはずなのだが、その兆しはない。ひとりで勉強といっても限界がある。

チュンジェは腕を組んで真剣な顔で悩むジンを不思議そうに見つめていた。

「兄さん、何か悩み事…?僕でよければ相談に乗るけど…」

果たしてジンが悩んでいることを解決できるのだろうか。不安はあるが、それでもひとりで考えるよりはふたりで考えたほうが答えに早くたどり着く気がする。

返答を待っているとジンは眉根に寄った皺を解き、縋るような眼差しでチュンジェを見つめた。

「あ、あの、ね…」

「うん」

言いづらいことなのだろうか。言葉を詰まらせて俯くジンを見つめ、チュンジェはさらに首をかしげた。

「ジェジュン君が…オレと家族になりたいって…。お願い、叶えてあげたいんだけど…どうしたらイイかわかんないの…」

「家族…」

それはとても新鮮な言葉だった。チュンジェにしてみれば、いまのところ家族と称せる人間はジンしかいない。ドンワンやウォンタクとも血縁関係はあるが、家族とは言い切れない何かがあった。

しかし。チュンジェは思う。その思いは、ポツリと口からこぼれた。

「僕も、ヴァネスと”家族”になりたい…」

「ほぇ?」

たった一言で、一瞬にして、数日間の悩みがどこか遠くへ追い出された。驚いてチュンジェを見つめていると、かすかに頬が赤く染まり、ゆっくりと顔が俯いていった。

「おかしい、かな…?僕、兄さんの次にヴァネスが好き…。だから、家族になりたい…。ヴァネスは兄さんのコトが好きだから、その代わりでもイイって言ったんだけど…」

「…」

きょとんとした表情のまま凍りつく。瞬きすら忘れてしまったようだ。

「兄さん…?」

窺うように問いかけると、ジンはすくっと勢いよく立ち上がった。そして踵を返し、一目散に玄関へと駆け出す。嫌な予感がしてチュンジェもまたすぐさまその後を追いかけた。

走り出す寸前の車へ間一髪乗り込む。扉を閉めるより早く、車は動き出した。慌てて扉を閉め、シートベルトを引き寄せながらチュンジェはジンの横顔を見つめた。

そこにはなぜか、痛みを堪えているような悲しげな横顔。瞳にはわずかに涙が浮かんでいた。

何も声をかけられないまま、たどり着いたのは彼が勤める病院だった。振り返ることなく進んでいくジンを懸命に追いかけていく。

静かな廊下に響く足音。白衣をなびかせながら歩いていたその人は振り返り、少し驚いたように目を見開いた。

「ジン?」

いつもなら飛びついてくるだろうに、今日は目に入っていないようで素通りだ。追いすがるチュンジェもまたジフンの存在に気づいていないようだった。

ただならぬ気配。ジフンは一緒にいた看護師にカルテを預け、ふたりを追いかけていった。

前触れもなく開いた扉。日誌を書いていたヴァネスは振り返り、ぎょっと目を見開いた。ずかずかと歩み寄り、詰め寄るように手のひらがテーブルを叩く。

「ジン、どうしたんだ?」

「に、兄さんっ!」

「許さないから…っ」

かみ締めていた唇を解けば、震える声でそんな言葉が紡がれた。堪えていたダムが決壊し、ポロポロと涙が溢れていく。

「チュンジェを誰かの代わりにするなんて絶対に許さないからっ」

「…」

そういうことか。ヴァネスはそうひとりで納得した。小さく息をつき、震える肩を手のひらで触れる。そしてその身体を目の前のイスへと座らせた。

「代わりは…痛くて、苦しいんだから…っ」

過去の出来事がまざまざと蘇る。自分などまるで存在していない。そんな世界を、そんな苦痛をチュンジェに味あわせるわけにはいかない。

「心配すんな。オレは、チュンジェをお前の代わりだなんて思ってねぇよ」

「ホン、ト…?」

「あぁ」

「じゃ、じゃあ、ヴァネスはチュンジェのコト、好き…?」

どうやら誤解は解けたようだ。くしゃくしゃと頭を撫で、涙を腕で拭うジンを見つめる。そしてヴァネスは小さく息をついた。

どう答えたものかと思い悩む。困惑を滲ませ、ヴァネスは一番後ろで苦笑を浮かべているジフンを見つめた。ここにいる人々の前でいまさら飾る必要もない。そう結論付け、ヴァネスはジンへと視線を戻した。

「好きだよ。ただ…ちょっと考え中だ」

「考え、中…?」

見事に重なるふたりの声。首をかしげるその角度まで一緒だ。双子でもここまではうまく行かないだろう。思わず妙なところで感心してしまう。しかし、いまはそれどころではない。

「オレは、ジンとチュンジェがたぶん同じくらい好きなんだ。どっちも特別。だけど、どうしても引っかかっちまう」

それは正直な心だった。その複雑な想いがジフンにはわかったようで、小さなため息が聞こえてきた。

「あまりにお前たちふたりはそっくりだ。だから…オレはチュンジェがジンに似てるから好きになったのか、そうじゃないのか」

「…」

「ちゃんとチュンジェはお前と別物だってわかってるよ。外見は一緒だけど、中身は正反対だ。最初はたぶん、ジンに似てたから気になった」

あの日から、ヴァネスもまた考えていた。自らの心を見つめなおし、答えを探し求めていた。そしていま、ふたりが揃うことでようやくその答えが見えた気がする。

「確かにきっかけはお前に似てたからだ。これは否定のしようがねぇ。でも…いまはチュンジェに惹かれてる。いまは、チュンジェと一緒にいると幸せだって実感できる。いまならはっきり言える。オレは、チュンジェが好きだ」

呆然と見開かれた瞳。その視界を遮るように何かがヴァネスの姿を隠した。それがチュンジェの背中だと気づき、ジンは何度も瞬きを繰り返す。そして助けを求めるように辺りを見回した。

「ジ、ジフン兄貴…っ!オ、オレ、どうしたらイイの~っ!?」

混乱する頭。収まりかけた涙がまた溢れていく。苦笑しながらもジフンは抱きついてきたジンを包み込み、落ち着かせるように優しく背中を撫でた。

「祝福してあげればイイんじゃない?」

「だ、だって…っ」

どうしてだろうか。素直に祝福できない。チュンジェが幸せになることも、ヴァネスが幸せになることも、どちらも喜ぶべきことだ。それなのに…。

「ヴァネス、僕と”家族”になってくれる…?」

「…あぁ」

ジンの心が整理できないままに話はどんどん進んでいってしまう。しかし”家族”という言葉に遠くへ行ってしまったはずの問題がゆっくりと近づいてくる。

「カ、ゾク…」

「ジン?」

「ねぇ、ねぇ、ジフン兄貴~。家族って何~?」

唐突な問いかけにジフンは驚きを禁じえなかった。ヴァネスもまたその問いかけに思わず顔を上げる。

「ジェジュン君がね、オレと家族になりたいんだって~。どうやったらなれるの~?一生懸命考えてみたんだけどね、やっぱりわかんないの~」

どう説明したらいいのだろうか。なんとなくジェジュンの言わんとしているところはわかるが、改めて言葉にするのは難しい。

どうやらひとつのことに関心が向かうと、そのほかのすべてのことが頭から抜け落ちてしまうようだ。いまもまた、チュンジェとヴァネスのことは彼方へと追いやられていた。

「とりあえず…オレとチュンジェが家族になるってコトはジンとも家族ってコトだな。よろしくな、義兄さん」

きょとんとした顔がくるりと振り返る。瞬きを繰り返し、言葉を反芻していくとだんだんと顔は真っ赤に染まっていった。まるで湯がかれたタコかエビのようだ。

「な、な、な…っ」

驚きと動揺が言葉を詰まらせる。こみ上げてくる様々な感情が目頭を熱くし、再び涙がこぼれ始めた。

「しまった…」

ちょっとしたイタズラのつもりだった。しかし、思い通りにはいかない。子どものように大声で泣きじゃくるジンを慌てて抱きしめ、ジフンはジロリとヴァネスを睨みつけた。

「に、兄さん…」

その様子にさすがのチュンジェも驚いたようだ。慌ててヴァネスの元からジンの元へと駆け寄っていく。

とんだ失態だ。しかし、後悔してもすでに遅い。一度口にしてしまったことを取り消すことはできない。冗談が冗談ではなくなり、しかもチュンジェすら離れていってしまった。

ぽっつりと独り取り残されたヴァネスは渋面を浮かべ、小さく息をついた。

ふと、視界の隅に飴玉がひとつ。それは患者である少女からもらったものだった。淡いピンク色の、ビー玉のようなそれ。

「…」

指先でそれをつまみ上げ、ヴァネスは静かに席を立つ。透明なビニールをはがし、まん丸のそれを人差し指と親指で挟む。

「ほら、ジン」

大きく開かれた口にそれを押し込む。ふわりと香る甘み。ピタリとそれだけで嗚咽がひいていく。涙を浮かべたまま、コロコロと舌先で転がし、ジンは幼い笑顔を浮かべた。

「うまいか?」

ぎゅっとジフンに抱きついたままのジンを撫で、優しくそう問いかける。コクリと頷き、もっととねだるように手を差し出す。

「いまはそれ1コっきゃねぇんだよ。今度買ってきてやるからな?」

「約束~」

広げられた手のひらがすぼまり、小指だけが残る。ふっと表情を和らげ、ヴァネスはその指に自らの小指を絡めた。

「もうひとつ~」

「…?」

「チュンジェを絶対泣かせないコト。絶対、絶対約束だからね~」

一方的だと思いながらもヴァネスはゆっくりと頷いた。泣かすつもりなど塵ほどもない。

「もし、泣かせたら…オレ、絶対に許さないんだからっ」

念を押すようにそう告げる。ジンにそう言われては、守るしかない。どちらもかけがえのない大切な人だ。

もう二度と現れることはないと思っていた愛すべき人。今度こそ手放したりはしない。必ずこの手で幸せにして見せると、ヴァネスはもう一度頷いた。

「あぁ、約束だ」

力強い言葉にジンは視線を緩め、にっこりと微笑む。その様子にジフンもまたそっと微笑んだ。
 


君を思う気持ちに負けないくらいのこの想い。

ふたりでともに歩んでいく道の先にはきっと眩い幸せがある…。
 








written by.yue
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テーマ : BL小説 - ジャンル : 小説・文学

コメント

うーーー(T^T)

ジンはどういう答をだすのでしょうか…
なんかほんとに…私の中ではこの小説はジンとミヌ ジンとドンワン ジンとミヌとドンワンのお話だと思っていたので…だから好きな小説だったし…ジェジュンが家族にってかんがえると…なんか…なんかわからないけど、苦しくなります(T-T)
ミヌとドンワンは特別ってのが凄い良かったし嬉しかったから…
なんか最近は、ミヌとの絡みも少ないし…ジンはミヌとドンワンが居なくなってももう苦しくもないのかなとか思うと…( TДT)

ってすみません(T-T)
自由に書いてよい場所で、思うように書いていると思うのですが、初めて読んだ時からMariaと同じくらい好きなお話だったので、思いも強くなってしまって(。>д<)凄い楽しみにしてる反面勝手に苦しくなってるだけですので( ;∀;)
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