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Close your Eyes ep.98-2



HP『Sweet Drops』用に書かれた作品になります。原文のまま転記したので長文になります、ご了承ください。












どうしたのだろうか…。

なぜかはわからないが、胸の辺りがチクチクする。カメラを構えてみても、集中できない。一向に仕事は進んでいなかった。

「…?」

カメラを持ったまま、ジンは眉間に皺を寄せて立ち止まっていた。ついさっきまで普通だったのに突然だ。何かの病気だろうか。

「ジン兄さん?」

いつもならばもう自分の番が来ていてもいい頃合だが、今日は呼びに来る気配もない。すっかり準備を整えたジェジュンはスタジオへとやってきた。

声をかけると少し涙ぐんだ瞳が振り返る。すぐさま抱きつきたいが、ここは仕事場だ。人目がある以上、大っぴらに抱きつくことはできない。

カメラから手を離し、ジンはぎゅっとジェジュンの手を握った。

「どうしたんですか?」

「…」

顔を覗き込んで見ればなぜか不機嫌そうな顔。セットの前にいるユチョンへ一瞬だけ視線を移し、ジェジュンは人目を避けるようにジンを裏へと導いた。

明かりの届かない、そのスペース。ふたりだけでもう隙間はほとんどない。身を寄せ合うには格好の場所といえるだろう。

「なんか…なんか、ね」

抱きしめていると少し落ち着いたようで、ジンは唇を尖らせたままそう口を開いた。

「なんか、この辺がオカシイの」

示された場所は心臓の真上。そこを手のひらで押さえ、誰に語るでもなくそう呟く。

「チクチクっていうか、ムカムカっていうか、イライラっていうか、ウズウズっていうか…なんか、オカシイの。これ、何かな…?病気…?」

「なにか、気にかかることでもあるんですか?」

息苦しいだとか、動悸がするとかならわかるが、いまジンが口にした言葉から察するに病気ではなさそうだ。医者ではないので断定はできないが、ジェジュンにはそう感じられた。

しかし、いくら考えてみても思い当たることはない。俯いたまま頭を振り、ジンはぎゅっとジェジュンへと抱きついた。

少しでも落ち着けばと、優しくその身体を包み込む。飽きることなく髪を撫で、触れるだけの幼い口づけを交わす。

「ジン兄さん、仕事が終わったら何をして遊びましょうか?」

「う?」

このままでは埒が明かないと、ジェジュンはそう囁いた。予想通り、肩に押し付けられていた顔が弾かれたように持ち上がる。真っ直ぐに向けられる瞳にそっと微笑み、頬に唇を寄せた。

相談に乗れるものならば乗り、すぐにでも解決してあげたい。しかし、原因がわからない以上それは難しい。ならば、心をそのことから逸らすほかない。

思惑通り、ジンの頭の中は切り替わったようだ。何をして遊ぼうかと嬉しそうに考えはじめる。

「じゃあ、早く終わらせちゃいましょうね?」

「うんっ」

大きく頷く、約束を交わすように唇を重ねる。そしてジンは時間がもったいないといわんばかりに、セットの裏を小走りに抜け出していった。

その背中を見送りながら微笑んでいると、ユチョンを呼ぶ声が聞こえる。続いて応じる声が聞こえ、ストロボの音が聞こえ始めた。

これでいいと心の中で呟く。先ほどまでとは打って変わって、明るい表情でカメラを構えるジンを見つめていると、自然に笑みが深まっていった。

この数時間が嘘のように、押していた時間を巻き上げていく。そして気づけば、予定終了時間を大幅に上回る形となった。

「ジェジュン君~っ」

仕事が終われば我慢をする必要もない。ましてや楽屋だ。人の目に付く心配もないと、ジンはジェジュンへと勢いよく抱きついた。甘えるように擦り寄り、幼い笑顔を浮かべる。

「ジェジュン君、終わったよ~。早く遊びに行こ~」

「何して遊ぶか、決まりましたか?」

「うんっ」

大きく頷き、急かすように手を引く。慌てて荷物を握り締め、ジェジュンは引きずられるように連れ去られていった。

「…珍しくユノ兄さん、何も言わないんだ~?」

「…」

言っていいというなら、息つく間もないほど文句を並べ立てられる。しかし、少なからずふたりの関係はいまの自分たちにとって必要不可欠なものになっていた。

彼の撮る写真は人の目を惹きつける。写る写真はどれも新鮮で、飽きることがない。親しい関係だからこそ、引き出せるといっていいだろう。ジェジュンは特に、だ。おかげでファンも着実に増え、仕事も順調だ。

「…」

出来上がったばかりの写真を見れば、やはり昨日までとは違う自分たちの姿。その点に関しては文句のつけようもない。しかし、そうは思いながらもため息がこぼれる。

できるならば人前で抱きつくのは勘弁してもらいたい。それに比べれば手を繋ぐなど可愛いものだ。妥協したわけではないが、それくらいは黙認してもいいだろう。それが考えた末の対応だった。

「複雑そうな顔~」

人の不幸がそれほど楽しいのだろうか、チャンミンが声を立てて笑う。言い返すつもりは毛頭ない。チャンミンを一瞥し、ユノは静かに立ち上がった。

「お疲れ」

ここでいつまでも燻っていても仕方がない。せっかくできた自由な時間。明日のためにも早く家に帰って身体をゆっくりと休ませたい。

ユノが楽屋を出れば3人もその後に続く。ただでさえ休みの少ない職業だ。休めるときに休んでおかないと身体が壊れてしまう。

マネージャーの運転する車へと乗り込み、4人は自宅へと早々に引き上げていった。

 

「大丈夫か…?」

繰り返される不安げな問いかけ。そのたびにチュンジェは微笑み、小さく頷いた。逞しい胸に寄り添い、目を閉じる。それだけで幸せになれた。

身体は軋むように痛むが、包んでくれるその優しいぬくもりに痛みすら忘れてしまう。

髪をなでる手のひらの感触も、耳元で聞こえる鼓動も、すべて優しい。できることならずっとここに留まっていたい。そう思ってしまうほどだった。

「もう少ししたら、身体…きれいにしてやるからな」

擦り寄るその身体を両腕で包み込み、黒髪にそっと口づける。かすかに浮かんだ微笑にヴァネスもまた微笑み、髪に頬を埋めた。

あともう少しだけ、こうして寄り添っていたかった。遮るものはたとえ布1枚でもいらない。くまなくじかに伝わってくるぬくもり。まるで愛のかたまりだ。触れているだけで幸せになれる。

「愛してる…」

散々伝えた言葉だが、それでもまだ言い足りない。耳元でそう囁き、ヴァネスは微笑むチュンジェを感じながら静かに目を閉じた。


 
一方、ジンもまた幸せに浸っていた。やってきたのはいつもの場所。ふたりの家と決めたマンションの一室だった。

ここならば、誰に邪魔されることもないし人目を気にする必要もない。存分に甘えられる。

ピタリと身体を寄り添わせ、幸せそうに笑顔を浮かべるジンを見つめ、ジェジュンはかすかに苦笑した。抱きついてくれるのは嬉しいが、腰に抱きつかれたのでは口づけもできやしない。

「ジン兄さん、もう少しだけ上へ来ませんか?」

「う?」

不思議そうに首をかしげるジンを抱き上げ、いつものように膝へと座らせる。そして頬を撫で、ジェジュンはゆっくりと顔を近づけた。最初は触れ合うだけ、そして2度目はさらに深く。

「やっとキスできました」

そう告げれば浮かぶ鮮やかな笑顔。疑問が氷解したようで、ジンは嬉しそうなその顔のままジェジュンへと唇を寄せた。

飽きることなく何度も口づけを交わす。愛しい想いが枯れることはない。言葉はなくとも伝わる想い。それだけで心が満たされていくようだった。

そして出発の日。仕事を定時で切り上げたヴァネスは急いで自宅へと帰ってきた。マンションから出てくる姿を認め、間に合ったと心の中で呟く。

「チュンジェ」

止まっているリムジンの後ろへ愛車をつけ、降り立ちながらそう名を呼ぶ。街灯の下、微笑む姿が瞳にしっかりと映った。

「ヴァネス」

しばらく逢えないと思っていた分、逢えた喜びは大きい。荷物を下ろし、チュンジェはヴァネスへと駆け寄った。

ふわふわと揺れる髪を眩しそうに見つめ、優しくその身体を包み込む。一緒に暮らし始めて、初めて離れ離れ。一週間後には帰ってくるとわかっていても切なさが募る。

「ヴァネス~」

呼びかけられて顔を上げれば、そこには窓から身体を乗り出しながら手を振るジンの姿があった。飛行機の時間があるから、長くは引き止められない。手を繋ぎ、ふたりはジンの元へと向かった。

「ジン、約束の飴玉だ」

「ありがと~っ」

「チュンジェと仲良く半分こすんだぞ?」

「うんっ」

両手でそれを受け取り、中へと引っ込んでいく。窓から覗けば、どれから食べようかと袋の中をあさる幼い笑顔があった。

「ちゃんとお父さんの言うこと聞くんだぞ?」

「うん、大丈夫。兄さんも一緒だから心配しないで」

ちらっと中を見遣ればジンはまだ飴玉に夢中。目を盗むようにヴァネスはそっとチュンジェに口づけた。

「気をつけてな?」

ヴァネスの言葉に小さく頷き、チュンジェは車へと乗り込んだ。そして別れを惜しむように窓から顔を覗かせる。

「寂しくなったらいつでも電話しろよ?」

「うん、ありがとう。行ってきます」

永遠の別れではない。だから惜しむ必要もないが、しかし呆気なさ過ぎるような気がした。チュンジェは離れることに抵抗はないのだろうか。寂しいという思いはないのだろうか。

かすかに不安を覚えながら、ヴァネスはふたりを乗せた車が見えなくなるまで見送っていた。










続く。
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