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Close your Eyes ep.98-7



HP『Sweet Drops』用に書かれた作品になります。原文のまま転記したので長文になります、ご了承ください。












ボアの言葉に甘え、揃っての夕食を取る。そして自宅へつけば、ジンは今日あった出来事を楽しそうにスンフンへと報告した。

「ユファン君はいま実家に帰ってるよ?もし逢いたいなら、明日にでも来るように伝えておこうか」

「ううん、それならユファンに逢いに行く~。学校にいるよね~?」

どうしても驚かせたいようだ。それならば無理に連絡を取る必要もない。ジンの言葉に頷き、スンフンはそっと微笑んだ。

「チュンジェ、明日ユファンの通ってる大学行こうね~」

「うん」

すっかり明日の予定も決まってしまったみたいだ。ただでさえ限られた時間。できることならばそばにいてほしい。そうしないことには治療もできやしない。

しかし、こうして素直に自分の心を言葉にできるようになったことはいいことだ。それだけ失われていたものが彼の一部分となって定着しているということ。それを妨げるのはよくない。

どうしようかと考えた後、スンフンは明日を想像して笑顔を浮かべるジンを見つめた。

「ジン、明後日からは僕と一緒にいてくれるのかな?」

「う?」

きょとんとした顔で首をかしげるジンに微笑み、そっと髪を撫でる。

「だって…せっかくジンがこんなにそばにいてくれるのに、一緒にいられないなんて寂しいでしょう?」

だんだんと赤くなる頬。魚のように口をパクパクとさせながら、ゆっくりと俯いていく。どうやら恥ずかしさに耐え切れなくなってしまったようだ。

髪で顔を隠したままこくりと頷き、ぎゅっとスンフンの腰へと抱きつく。そして腹部に顔を埋めたまま、くぐもった声で呟いた。

「一緒に、いる…」

「約束だよ?」

顔を押し付けるように何度も頷き、さらにぎゅっと抱きつく。少し苦しさを覚えながらも微笑みは崩さず、スンフンはそっと背中を撫でた。

「お父さん、好き…」

囁きにも似た小さな声。思わず聞き逃してしまうところだった。笑みを深め、スンフンはそっとその身体を抱き上げた。そして優しくその身体を抱きしめる。

その光景を黙って見つめていたチュンジェはゆっくりと顔を背けた。

どうしてだろうか。彼の姿が頭をちらつく。胸は締め付けられ、息苦しさを覚えるほどだった。無性に逢いたくて、声を聞きたくて、堪らない。

いてもたってもいられず、チュンジェはすくっと立ち上がった。そして携帯電話を握り締め、玄関を通り抜けた。

「チュンジェ?」

スンフンに抱きついたまま、扉の閉まる音に振り返る。不安げにそう呼びかけてみても、もう相手には届かない。

「チュンジェ、どうしたのかな…?なんか、ずっと元気ない…」

それはアメリカに来たその日から始まった。些細な変化ではあるが、ジンが見逃すはずもない。しかし、いくら原因を考えてみてもわからなかった。

「もしかしたらホームシックかもしれないね?」

「ホームシック?」

「そう。こんなにヴァネス君と離れるのは初めてでしょう?だから、僕と同じようにチュンジェも少し寂しいんじゃないかな?」

寂しいのは苦しくて切ない。胸が締め付けられるようだ。少しだけ瞳を潤ませ、ぎゅっとスンフンへと抱きつく。わずかでも寂しさがなくなればいいと、そう心から願った。

冷たい風が頬を撫で、体温を奪っていくようだった。

いつでも電話していいと言ってくれた。その言葉は本心だろうか…。そう悩みながらも声を聞きたいという思いがこみ上げてくる。意を決したようにチュンジェは彼へと電話をかけた。

目を閉じ、呼び出し音を数えながら祈るように待つ。7回目のコールを数え終わったそのとき、不意にその機械音は途絶えた。

『もしもし?』

囁くような優しい声。鼓動がどんどん早まっていく。名前を呼びたいのに、声がうまく出てこない。代わりに薄く開いたまぶたの裏から涙がこぼれだした。

『チュンジェ?』

「…っ」

言葉を詰まらせ、嗚咽がついて出る。いくら涙を拭っても次から次に溢れてくる。どうすることもできず、チュンジェは廊下へ膝を抱えるように蹲った。

『どうした?なんかあったのか?』

いくらかぶりを振ってみても、伝わるはずもない。この時間だと、母国は昼間。おそらく職務中なのだろう。ヴァネスを呼ぶ声がかすかに聞こえてきた。

『もしかして…寂しくなっちまったのか?』

姿など見えないし、まだ声も発していない。なのにどうしてわかるのだろうか。その言葉にピクリを身体を震わせ、チュンジェは唯一繋がっている携帯電話を握り締めた。

「ヴァ、ネス…っ」

『ん?』

「…たい」

声が震えてうまく言葉にならない。それでもチュンジェは懸命に想いを言葉にする。涙に濡れた顔を上げ、夜空にその姿を思い描く。

「逢いたいよ…っ」

堰を切ったように想いがあふれ出す。わがままだとわかっていても、伝えずにはいられなかった。ただ、逢いたくて仕方がない。それだけだった。

『オレも、逢いてぇよ…』

その言葉は不思議なほど心に浸透していった。そして寂しさの代わりにぬくもりが冷えた心を包みこむと、すうっと涙がひいていく。

『あと…4日か…。一週間なんてあっという間だと思ってたけど結構長ぇのな?』

自嘲するような声。少しはにかんだような微笑が容易に想像できた。まだ瞳は涙に濡れたまま、チュンジェはかすかに微笑んだ。

「うん、すごく、長いね…」

『帰ってくるときは空港まで迎えに行くから…もうちょっとだけ我慢できるか?オレも我慢すっから』

「うん…できる」

不安がないわけではない。でも、迎えに来てくれるというその言葉に寂しさは和らいだような気がした。本心を言えば、いますぐにでも帰りたい。けれど、それはジンに迷惑をかけてしまうし不安にしてしまう。

一番好きな人を悲しませるようなことだけはできない。

「帰ったら、抱っこしてくれる…?」

『抱っこ?』

「ダメ、かな…?」

シウォンに抱っこされたとき、とても幸せだった。きっとヴァネスならばもっと幸せになれるような気がした。少し図々しいだろうか。でも、どうしても抱っこしてもらいたい。

『好きなだけしてやるよ』

かすかに笑いの含んだ声。馬鹿にしているような感じはない。優しい答えにチュンジェは目を細め、幼い笑顔を浮かべた。

「ヴァネス、好き…」

嬉しい気持ちをそのままに、小さな声で歌うようにそう囁く。ささやかな告白にヴァネスもまた微笑んだ。

離れていても想いは伝わる。次に逢えたときには直接この想いを告げようと心に決め、チュンジェはそっと目を伏せた。

「チュンジェ?」

なかなか戻ってこないチュンジェを心配してか、ジンがひょっこりと扉から顔を出す。すでに切れていた携帯電話。それをポケットへと収め、チュンジェはゆっくりと立ち上がった。

「ゴメンね?兄さん。もう、大丈夫」

「ホント?ムリしてない?」

「うん」

先ほどまでの切なさや寂しさがまるで嘘のようだ。短い時間だったけれど、ヴァネスと会話することで心に空いた穴がすっかり埋まっていた。

「中、入ろう?カゼひいちゃうよ?」

「うん」

本当にもう大丈夫そうだ。まだ完全とはいかないが、元気が戻っているように感じられた。手を取り、ふたりは室内へと戻っていく。そして顔を見合わせ、戻ってくるのを待っていたスンフンへと身を寄せた。

「身体が冷えちゃてるみたいだね…。何かあたたかいものでも入れようか?」

冷えた指先を包み込み、スンフンが優しく問いかける。するとジンは自らキッチンへと進んだ。手伝おうと顔を上げるチュンジェににっこりと微笑み、スンフンへと押し付けるように背中を押した。

「チュンジェはここで待っててね~」

「え?で、でも…」

ここはジンの場所だ。自分が取るわけにはいかない。しかし、言葉を紡ぐ前にジンは背を向けてしまった。足取り軽くキッチンヘと進み、慣れた手つきでココアを作る。

マグカップは3つ。ひとつはもちろんスンフン用にと甘さ控えめだ。トレイに乗せてそれを運び、そっと冷えた手にカップを握らせる。そしてやけどしないようにと冷まし、そっと微笑んだ。

「あったまるよ~」

「あ、ありがと…」

続いてスンフンにもカップを差し出し、ようやく自分の分へとありつく。冷ましながら少しずつ口へと運べば内側からあたたまっていくようだった。

飲み終わるころには冷え切っていたチュンジェの指先にもぬくもりが戻っていた。また冷えないうちにとベットへもぐりこみ、身を寄せ合うように目を閉じる。

その日は数日振りに夢を見た。いつまでもその中に留まっていたいほど幸せな夢。久しぶりに見るぎこちない笑顔も、少し乱暴な言葉遣いも、少し低いけれど優しい声音も、どれもが愛おしい。

どれだけ彼を想っているのか、初めて知った日だった…。











続く。
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