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Close your Eyes ep.98-9



HP『Sweet Drops』用に書かれた作品になります。原文のまま転記したので長文になります、ご了承ください。


その日あったことの報告はなぜか日課になっているようだ。ユファンとの顔合わせは思うようにいかなかったが、初めて見分けのつく人間に出会えたとふたりは別の意味で喜んでいた。

いいことだ。そうスンフンは話を聞きながら思っていた。順調に幼少期、できなかったことを取り戻していっている。しかし、少し不安もあった。

「どうした?何か考え込んでる風だな」

「ちょっとね」

「いまさら隠す必要もないだろう?子育てで悩み中か?」

相変わらず遠慮もなく言葉を投げかけてくる。ひとつ息をつき、スンフンは苦笑しながらシウォンを振り返った。

別段、彼が好意で聞いているわけではないことくらいわかっている。単なる興味だ。聞くだけ聞いて、茶化して終わりになることもあるくらいだから間違いない。

「どうせくだらないことなんだろうが、僕が聞いてやろう」

「別に悩みなんかないよ。ただ、順調すぎてひとつだけ気になることができただけ」

眉尻を上げ、少しだけ首をかしげる。しかしその表情はすぐに変化していった。小ばかにするような笑みに、スンフンは案の定だと息をつく。

「そういうことか!なるほど、なるほど。確かに心が成長すれば必ずやってくるはずだ。反抗期が。君はいまからそれを心配しているわけだ」

くだらない、そう言いたげな態度。世の親たちはみなその道を通ってきている。そして一様に皆乗り越え、絆を深めていく。反抗期とは一種の、親の愛情を試す子どもからの課題だ。愛情に自信があるのなら不安を覚える必要はない。

「ジンへの愛情はもちろんあるよ。本当の息子だと思ってるからね。ただ…普通ならばまだ未発達の時期に反抗期があるでしょう?でも、ジンは列記とした大人だ。もし暴力でも振るわれたらただじゃすまないからね」

シウォンに言われる前にそう告げ、心配しているところはそこなのだと暗に伝える。出鼻をくじかれた格好になったシウォンはつまらなそうに息をつきながらも、あながちその問題は無視できないと頷いた。

「確かにジンはかなり腕力があるからな。まぁ、せいぜい怪我しないように気をつけるんだな」

「完全に他人事だね…。まあ、いいけど」

いずれシウォンも通る道だ。そのときになったらひとりで悩めばいい。そう結論付け、スンフンは立ち上がった。飲み終えた紙コップをゴミ箱へといれ、テーブルの上に置いておいたファイルを持ち上げた。

「じゃあ、お疲れ。明日からよろしくね?」

あっさりと終わってしまった会話。もう少しいじって遊びたかったのに、肩透かしを食らった気分だ。白衣をなびかせながら去っていくスンフンを見送り、シウォンもまた立ち上がる。

いつまでもひとりで油を売っていても仕方がない。せめて早く仕事を終わらせてボアの元へ帰ろうと、休憩室を後にした。

「そういえば兄さん」

「う?」

この部屋の主はまだ戻らない。もう少しで戻ってくるだろう。その間はふたりきり。いつもはひとりなのだから、寂しいはずもない。

ソファに横たわったまま、読んでいた本から視線を向かい側のソファへと移した。そこにはすでに帰り支度を整えたチュンジェがお行儀よく座っていた。

「お父さんに聞かなきゃいけないことがあるって言ってなかった?」

唐突に思い出した機内での会話。そう投げかけてみればジンはしばし瞬きを繰り返し、記憶を手繰り寄せているようだった。

「あーっ!そ、そうだった!忘れてたよ~っ」

跳ねるように起き上がり、落ち着かない様子で室内を歩き回る。その姿を見つめながらチュンジェはくすっと小さく微笑んだ。

まるで計ったように扉が開く。そしてジンは一目散にその人へと抱きついた。

「おっと…」

予期せぬ出来事にバランスを崩し、持っていたファイルが手から滑り落ちる。受け止められたことにそっと息をつき、スンフンは飛びついてきたジンを見つめた。

「ジン、どうしたの?」

「あ、あのね、お父さん」

「うん?」

瞳をわずかに潤ませ、何かを訴えかけるように見つめてくる。さっき話したときは上機嫌だったのに、たった1時間ほどの間に何があったというのだろうか。

「ジェジュン君と家族になるためにはどうしたらいいの~っ!?」

「…」

思いがけない質問に返す言葉を失う。しばし呆然とジンを見つめ返していたスンフンは、とりあえず落ち着こうとジンを抱きかかえたままソファへと腰を下ろした。

落ちたファイルを拾ってくれたチュンジェにお礼を告げ、子どもをあやすようにジンの背中を撫でる。

「ジェジュン君がそう言ったのかな?」

コクリと頷き、助けを求めるようにぎゅっと抱きつく。いろいろな人に聞いてみたがいまだ答えは出ないまま。スンフンが最後の砦だった。

「ジェジュン君のお願い聞いてあげたいんだけど、どうしたらいいのかわかんないの~…っ」

「そうだね…。一番簡単なのは籍を入れることだけど、それは難しいし…」

それはきっとジェジュンもわかっているだろう。ならばそれを言った目的はほかにあると思って間違いはない。家族という概念を考え、スンフンは口を開いた。

「家族って言うのは、無償の愛と深い信頼で結ばれた関係ってことだと僕は思うんだ」

「無償の愛…?深い信頼…?」

スンフンの言葉を復唱し、小さく首をかしげる。チュンジェもまたテーブルを挟んだ反対側の席で、真剣に耳を傾けていた。

「そう。なんの見返りもないってわかっていても無限の愛情を注ぐこと。そして、決して裏切らないこと。たとえばジェジュン君が警察に捕まってしまったとしよう。そのとき、ジンは最後まで味方でいてあげられるかな?」

「味方…?」

「うん、味方。最後の独りになっても、どんなに周りから非難されてもジェジュン君を信じて、変わらぬ心でそばにいられるかな?」

あまりに突拍子もない出来事だけに、想像ができない。頷くのは簡単だが、わからない以上そうすることもできなかった。

「僕はたとえジンが犯罪者になっても父親でいるよ?ずっと、ジンの味方でいる。誰になんと言われようが、ジンは僕の息子だし、僕はジンの父親だから」

そう言ってもらえるのはとても嬉しいことだ。思わず悩みも忘れて笑顔が浮かんでしまう。

「じゃあ…たとえばジェジュン君がいまの仕事を辞めてしまったとしよう。住むところもないし、お金もない。次の仕事など早々見つかるわけもない。そんなジェジュン君でもジンは愛せるかな?」

「うん。ジェジュン君はジェジュン君だもん。お仕事なんて関係ないよ~」

それだけははっきりと言い切れる。そばにいるだけで楽しいし、幸せだ。別に仕事は関係ない。

「ジンはとてもいい子だね。きっと、それだけジェジュン君が好きなら家族になれるはずだよ?悩んでいたら助けてあげたり、嬉しいことがあったら分けてあげたり。それができれば立派な家族だと僕は思うよ?」

それならばできるとふたりは大きく頷いた。これでひとつ、心のモヤモヤが晴れたようだ。それをスンフンも感じ取ったようで、そっと安心したように微笑む。

「さて…悩みも解決したみたいだし、そろそろ帰ろうか?」

「うん」

見事に重なり合うふたりの声。いったん、ジンを下ろしたスンフンは白衣を脱ぎながらデスクへと向かった。代わりにジャケットとコートを羽織り、すでにまとめておいたカバンを持ち上げる。

「お父さん、これは?」

「あ、そうだった。ありがとう、チュンジェ」

すっかり話に夢中となり、ファイルの存在を忘れていた。これを出しっぱなしにしておくのはまずい。引き出しの中へと納め、これでよしと小さな声で呟く。

そして並んで待つふたりの我が子へと視線を向けた。

「今日の夕飯はどうしようか?」

「オレ、作るの~」

「僕も手伝う」

すでにふたりの間でその相談は済んでいるようだった。顔を見合わせ、笑顔で頷きあう。仲睦まじい兄弟を眩しそうに眺め、スンフンはそっと微笑んだ。

「じゃあ、買い物をしてから帰ろうね?」

「うん」

部屋の明かりを消し、扉を静かに閉める。おしてスンフンを真ん中に3人は歩き出した。今日からはしばしの休息時間。ジンとチュンジェが帰るその日まで連休だ。

「なにを作ってくれるのかな?」

「秘密~」

前もって教えてもいいのだが、やはり出来上がったものを見て驚いて欲しい。たいそれたものを作る気はないが、喜ぶ顔が見たかった。

「じゃあ、楽しみにできるのを待ってるね」

ふたりの心を受け止め、そう応じる。満足げに微笑むふたりにスンフンもまた微笑んだ。そして本当の家族のような3人は車へと乗り込んだ。

途中、ショッピングマーケットへ立ち寄り食料を次から次にカートへと押し込んでいく。リカーコーナーで足を止めれば、ふたりは真剣な顔でラベルを見つめていた。

どうやら酒好きなのはチュンジェも同じのようだ。そしてその趣味も。散々な悩んだ挙句、ふたり同時に同じものへ手をかける。

カートにもたれながらその様子を後ろから見ていたスンフンは思わず微笑んだ。

「それで最後かな?」

「うん」

1本では足らないと、両手に大瓶を抱えて満面の笑みで頷く。そして会計を済ませた3人は再び車へと乗り込み、自宅へと帰っていった。

部屋へ入るなり、休憩することもなくキッチンへと向かう。分担は決まっているようで、手際もいい。しだいにおいしそうな香りが漂い始め、スンフンは読んでいた本を静かに閉じた。

「お父さん、できたよ~?」

「うん」

ダイニングテーブルへと移動してみればたくさんの料理が所狭しと並べられている。それも母国の家庭料理ばかりだ。

「おいしそうだね?」

素直にそう告げればふたりは少し照れくさそうにしながらも、笑顔を浮かべる。温かい料理に囲まれ、親子水入らずの時間が穏やかに過ぎていった。










続く。
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