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Close your Eyes ep.98-10



HP『Sweet Drops』用に書かれた作品になります。原文のまま転記したので長文になります、ご了承ください。


翌朝は少しの朝寝坊から始まった。恒例となった揃ってのバスタイムを終え、簡単な朝食。そして昼ごろになり、3人は街へと繰り出した。

目的はスンフンのスーツ選びだった。そろそろ新調したいと何気なくこぼしたことから、今日の予定は決まった。

いつもオーダーしているショップへと入ると、デザイン選びから始まった。着る本人はそっちのけで、ジンとチュンジェが顔を寄せながら真剣な顔でそれを見つめていた。

「これなんか似合いそう」

「ホントだ~。そのデザインなら、この生地なんてイイんじゃないかな~」

生地のサンプルを引き寄せ、チュンジェへと差し出す。同意を示すように頷き、さらにはネクタイ選び。まるで専属のコーディネーターのようだ。

「ヴァネスにもあげたいな…」

「ついでだからオーダーしちゃえば~?帰国までに間に合わなかったら送ってもらえばいいし~」

「で、でも高いよ!それに、サイズもわかんないし…」

プレゼントとして買っていってあげたいのは山々だが、いろいろな問題がある。肩を落とすチュンジェを見つめ、ジンは小さく首をかしげた。

「お金なら心配いらないよ~。オレ、持ってるもん」

「…だって、それじゃあ兄さんからのプレゼントになっちゃう…。僕からプレゼントしたいのに…」

「じゃあ…帰ったらバイトする?オレのアシスタント~。給料前借、みたいなカンジ~」

あまりお金に頓着はないが、チュンジェが拘るのであれば尊重してあげたい。それに、自分のアシスタントであれば始終一緒にいられる。いいこと尽くめだ。

「ホ、ホント…?」

「うん」

期待に満ちた眼差し。しかしそれはすぐに萎み、表情は翳っていった。

「でも、サイズがわからないよ…」

「わかるよ~?」

「え…?」

弾かれたように顔を上げるチュンジェににっこりと微笑む。それは得意分野だといわん場借りの自信に満ちた表情だった。

「オレ、1回見ればスリーサイズでも指輪のサイズでも完璧~」

「そうなの?」

それにはスンフンも驚いた。身を乗り出し、微笑むジンを見つめる。

「うん。だってオレ、カメラマンだも~ん」

どういう理屈かはわからないが、ジンにはわかるようだ。それならばと試しに自分のサイズを聞いてみる。答えあわせをするように採寸してみれば、ピタリと合致した。

「オレもジェジュン君とドンワン兄貴と、ジフン兄貴に作ってこっかな~」

ミヌにも作ってあげたい気持ちは山々だが、生憎とスーツは似合わない。それなら別のものを買っていってあげたほうが合理的だ。

それぞれに似合うだろうデザインを選び、生地を選択する。ドンワンとジフンは仕事用だから落ち着いた色合いのものを選び、ジェジュンには式典などでも着られるようにと少し色味の濃いものを選んだ。

口頭でサイズを告げ、続いてはネクタイと売り場へと走っていく。チュンジェもまたヴァネスに贈るため、真剣そのものだ。

すべてを選び終えてみると、ジンの元には6つのオーダー表があった。内容を確認し、クレジットカードで支払いを済ませる。

4つはわかるが、残りの貰い手がわからない。首をかしげるチュンジェに微笑み、ジンはきゅっとその手を握った。

「帰国までに間に合いそうだよ~?」

「ホント?」

「うん」

仕上がり予定日を見てみれば、帰国する日の日付が記されていた。間に合ったことにほっと胸を撫で下ろし、チュンジェもまた微笑んだ。

オーダーを済ませた3人は店を出て、お昼休憩となった。せっかくここまできたのだから存分に買い物したいとジンが提案する。あれだけ買い物をしたのにまだ足りないらしい。

「だってもうすぐクリスマスだも~ん。みんなにプレゼント用意しなきゃ~」

言われてみて初めて気づく。改めて見渡せば、街はクリスマスカラーに彩られていた。単なるプレゼントのつもりだったが、クリスマスに渡そうとチュンジェは小さく頷いた。

どれにしようかと悩みながら一軒一軒店を覗いていく。店を後にするごとに紙袋がひとつ、ふたつと増えていった。

空が夕闇に包まれるころ、ようやく全員分のプレゼントを買い終えた。満足そうな笑顔を浮かべながらスンフンを振り返る。

「お父さん、ゴハンはなにがいい~?お父さんの食べたいもの作りた~い」

いつもならばジンの食べたいものをと言うところだが、たまにはリクエストしてもいいだろう。少し逡巡し、スンフンはそっと微笑んだ。

「今日は寒いからあたたかいものがいいかな?シチューとか」

「シチューに決まり~。お買い物して帰るの~」

メインは決まったが、それだけでは寂しい。他に何を作ろうかと考えながら駐車場へ向かって歩いていたジンはふと、顔をあげた。

「見つけた~っ!」

叫ぶや否や、買ったものをすべて放り出して一目散に駆けていく。なんとか散らばったそれを拾い集め、スンフンとチュンジェはジンの駆けていった方角を見つめた。

「は、離しなさいっ!」

「見つけたの~っ。お願いがあるの~っ」

嫌がっていることなど気づかぬ様子で、背中にピタリと吸い付く。そしてジンはその人へそう切り出した。

プライベートならば構わないが、生憎いまは職務中だ。ひっそりと行動しなければならないのに、これでは目だって仕方がない。

「お願いならあとで聞いてやるから、少し黙ってろっ!」

最初は丁寧な口調だったが、あまりにもしつこいジンに最後はそう怒鳴っていた。ビクリと身体を震わせ、怯えたように飛びのく。そしてジンは助けを求めるようにスンフンへと抱きついた。

そんなジンを一瞥し、青年は足早に立ち去っていく。その後を一定の距離を置いてついていく人間もいた。

「ジン、お仕事の邪魔をしたらダメだよ?」

「だ、だって…っ」

連絡先もわからない、どこに住んでいるのかもわからない人。ここで見逃しては次逢える保障はない。だから少しだけ時間が欲しいと告げるつもりだった。

「彼らのお仕事は失敗が許されないんだ。だから少し、緊張で怒りやすくなってるのかもしれないね?小さなミスが失敗になっていまうから」

「…」

しゅんとうなだれながら小さく頷く。瞳にはじわりと涙が浮かび、拗ねたように唇は尖っていた。子どものような素振りに微笑み、少しでも機嫌が直ればとその膨れた頬にそっと口づける。

「彼が戻ってきたら謝ろうか?僕も一緒に謝るから」

「ぼ、僕も謝るよ。だから兄さん、泣かないで?」

泣くつもりはないのに、どんどん視界は滲んでいく。乱暴に袖でこぼれる涙を拭い、ジンはもう一度小さく頷いた。

ようやく涙収まった頃、遠くから歩いてくる姿が見えた。無意識に身体が震えてしまう。また怒鳴られたらどうしょうと、心が意思に反して怯えているようだった。

「先ほどは怒鳴ってしまい、申し訳ありませんでした。職務中だったので気が立ってたようです。本当に申し訳ありません」

「…」

驚いたのはジンだった。スンフンの背中に隠れようとしていたジンはピタリと動きを止め、そろっと窺うように青年を見つめた。

「オ、オレのほうこそ…お仕事のじゃましちゃって、ゴメンなさい…」

「で、お願いってなんですか?あまり時間がないので手短にお願いしたいのですが」

事務的な対応。冷たさすら感じてしまう。もしかしたら勘違いかもしれないと顔色を窺ってみる。しかし、やはり心の距離は歴然だった。

「ヨ、ヨンハさん…オ、オレのコト、キライ…?」

「嫌いというか…子どもが苦手なもので…」

うまい言葉が見つからず、素直に本音を言葉に乗せる。スンフンはなるほどと頷いたが、ジンは意味がわからなかったようで不思議そうに首をかしげた。

「子ども…?」

辺りを見回しても子どもは見当たらない。ぐるりと視線をまわしてみたが、いるのは大人ばかりだ。

「大人のひとしかいないよ~?」

その言葉にチュンジェもまた頷いた。その意図を理解しているスンフンと言った本人は苦笑するほかない。

「そんなことより、ご用件は?」

「あ、そうだった。あのね、アレが欲しいの~」

「アレ…?」

あれや、それでわかるほど仲良くなったつもりはない。眉根を寄せて、いぶかしむように首をかしげる。

「シウォンの家のまくらに入ってるヤツ~」

さすがにこの場所で大っぴらに名詞を出すわけにもいかない。そこはジンも大人だった。

「ホンマンがね、すっごく手に馴染んで握りやすかったんだって~。だから欲しいの~」

「それは…オレの独断ではなんとも…。そこの人ならなんとかできなくもないでしょうけど…」

ちらっとジンの隣に立つスンフンを見遣る。話の流れから大体のことを理解したスンフンは苦笑いを浮かべた。そして小さく息をつき、携帯電話を取り出す。

ここ最近、どうも借りを作ってばかりだ。しかし、ジンのお願い事は叶えなければならない。あまり与えたくないものだが、ホンマンが持つというならば差し支えはないだろう。

数秒で会話を終えて、通話を切る。それと同時にヨンハの携帯電話がポケットの中で震えだした。ディスプレイを見ずとも相手はわかる。すぐさま応じ、再び携帯電話をポケットの中へと戻した。

やはり恐ろしい人だ。

声には出さず、心の中で思う。こんなにもすんなり許可が出るとは思っていなかった。さすが、特殊部隊を動かしてしまうほどの力の持ち主だ。

「承認が出ました。明日にでも部下に届けさせます」

「ホントっ!?やった~っ!」

素直にはしゃぎ喜ぶジンを若干冷めた瞳で眺め、ヨンハは静かに視線を逸らした。

「帰国する際には前回と同じ方法でお願いします」

「ありがとう、ヨンハ君」

「いえ、命令ですので…。では、失礼します」

これ以上関わってはいたくない。仕事を言い訳に踵を返し、ヨンハは人ごみへと消えていった。

「あれ…?」

気づくとすでにどこにも姿はなかった。首をかしげるジンに微笑み、優しくその髪をなでる。

「さて、僕たちも帰ろうか?」

「うん」

すっかり遅くなってしまった。早く買出しをして帰り、夕食の準備に取り掛からねばと3人は足早に車へと戻っていった。










続く。
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