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Close your Eyes ep.98-11



HP『Sweet Drops』用に書かれた作品になります。原文のまま転記したので長文になります、ご了承ください。












長いようで短い一週間。切ないときもあったが、振り返ってみれば楽しい思い出でいっぱいだった。それに、この手には彼へのプレゼントもある。

「兄さん、大丈夫?半分持とうか?」

「大丈夫~」

確かに6着ものスーツは重い。それでも、喜ぶみんなの顔を想像すれば自然と足取りも軽くなった。

「まだ時間があるから、夕飯食べてから空港へ向かおうか?」

休みの最終日。できるならば時間ギリギリまでこうして楽しく過ごしたい。時計を見遣ればまだ飛行機の時間まで2時間ほどある。空港内で食事を取れば時間の心配もあるまい。

スンフンの申し出にふたりは笑顔で大きく頷いた。どこの店に入ろうかと案内板に見入っていると不意に両手が軽くなった。振り返ればそこにはホンマンの姿。

「ありがと~」

これもホンマンの仕事だ。自分で持てると言いたいところだが、仕事を取り上げる真似はできない。ジンの言葉に小さく頷き、ホンマンはチュンジェを見つめた。

「それもオレが持とう」

「大丈夫。大切なものだから、持ってたいんだ」

「…わかった」

顔はそっくりでも主は違う。素直にそう応じ、ホンマンは歩き出した3人を追いかけた。邪魔にならないようにと一定の距離を置いて進んでいく。

そして1軒のレストランに入ったことを確認し、足を止めた。入った店さえ確認すればここに留まる必要はない。自分もどこかで食事をしてこようかと考えていると不意にしまったはずの扉が開いた。

「ホンマン~?」

「どうした?」

「どうした、じゃないよ~。早く~」

一緒に食事を取ろうということなのだろう。しかし、どうしたものかと悩んでいるうちに引きずり込まれ、ホンマンはいつの間にか同じテーブルに着席していた。

「…」

以前であれば主と一緒のテーブルにつき、ともに食事をすることなどありえなかった。しかし、主がジンとなり数年。いつのまにか抵抗なく受け入れられるようになっていた。

時とともに自分も変わったということだろう。

差し出されたメニューを無言で受け取り、隣に座るチュンジェとともに眺める。ちらっと窺えば、柔らかな微笑が返ってきた。初めて出逢ったときとはだいぶ印象が違うように思えてならない。

「ホンマン、何食べるの?決まった?」

「あぁ」

どれにするのかと尋ねられる前に指で示す。チュンジェはそれを見つめ、小さく首をかしげた。同じものにしようかと考えているのだろう。

「オレ、ハンバーグステーキ~!お父さんは~?」

「僕はチキンソテーにしようかな」

穏やかな夕食だ。笑顔の耐えないそのひと時に思わず仕事を忘れてしまいそうになる。しかし、それもいいだろう。平和だという何よりの証拠だ。

夕食を終えれば別れの時間がやってくる。また来月という約束を交わし、微笑を交し合う。余計な言葉など要らないし、悲しむ必要もない。またすぐに逢える。

ついこの間までは別れに対して臆病だったジンもいまでは笑顔で手を振っている。飛行機に乗り込めば、帰ってから何をしようかと心をときめかせているようだった。

十数時間の移動もなんら苦ではない。行くにしても帰るにしても、大切な人たちが待っている。ヨンハに言われたとおり、VIP待遇で入国審査を受けずに母国へ降り立ち、ゲートを潜り抜ける。

そしてチュンジェはたくさんの人たちの中で唯一の人を見つけて目を輝かせた。

「ヴァネス!」

あの電話で交わした他愛もない言葉。本当に迎えに来てくれたと、喜ぶ心を抑えきれずにチュンジェはヴァネスへと駆け寄った。

「おかえり、チュンジェ」

「ただいま」

久しぶりに聞く肉声と、少しぎこちない微笑み。たった一週間なのに懐かしさがこみ上げてくる。感情のままに抱きつけばふわりと身体が浮かび上がった。

約束は守られた。

人目をはばかることなくチュンジェを抱き上げたヴァネスは優しい眼差しでチュンジェを見上げていた。それを少し羨ましそうに見つめていたジンはゆっくりと歩みだす。

「ただいま~、ヴァネス。チュンジェのコト、お願いね~?」

「あぁ。長旅で疲れたろ?お前もちゃんと休めよ?」

「うん、ありがと~。まったね~」

次の約束はなくともまたすぐに逢える。ここからは別々の行動だ。ジンはホンマンとともに駐車場へと向かって歩き出した。

その背中を見送り、チュンジェはヴァネスを振り返った。そして羽根のようにふわりと微笑む。

「荷物はこれだけか?」

「うん」

片手にチュンジェ、もう片方には小さな荷物。そしてヴァネスもまた歩き出した。時折振り返る人々の目に気づいたチュンジェは降りようともがくが、ヴァネスがそれを許してくれない。

「ヴァ、ヴァネス」

「ん?」

「みんな見てるよ…っ」

恥ずかしいわけではない。ただ、なんとなく不快感があった。

「別に気にするコトねぇだろ?」

「で、でも…僕が笑われるのはいいけど、ヴァネスが笑われるのはイヤ…」

「笑ってんじゃねぇよ。ただみんな羨ましいだけだ」

目を伏せ、静かに微笑む。だから気にする必要はない、と。それに、少しでもチュンジェのそばにいたかった。こうして全身でチュンジェの存在を確認していると、胸にぽっかりと空いていた穴が塞がっていくようだった。

車へとたどり着き、助手席に抱えてた身体を下ろす。そして荷物を後部座席へと押し込んだヴァネスあ運転席へと乗り込み、そっと唇を寄せた。

「逢いたかった」

素直にそう想いを囁き、細い身体を優しく抱き寄せる。躊躇いながらも背中へ回る手。うなじに顔を埋めながら、チュンジェもまた同じ気持ちだと頷く。

「僕も…」

「明日は休みだから、ずっと一緒にいような?」

「うん…っ」

こぼれる幼い笑顔。もう一度約束を交わすように唇を寄せ、ヴァネスは名残惜しみながらもゆっくりと身体を離した。

焦らずとも一緒にいられる。それならば早く自宅へ帰り、誰の目を気にすることなく存分にその存在をこの腕で感じたい。

エンジンをかけると車体はかすかに震える。そしてふたりを乗せた車はゆっくりと走り出し、空港を後にした。

「これは?」

一足早く自宅へとたどり着いたジンは小さな荷物だけを手に、家へと向かって歩き出そうとしていた。ホンマンがそう呼び止めれば、無邪気な笑顔が振り返る。

「それはみんなへのクリスマスプレゼントなの~。だから、しばらく車に置いといて~」

「わかった」

子どものような行動に思わず笑みがこぼれる。7つの紙袋に詰まったそれを綺麗に並び替え、ホンマンは運転席へと戻った。

かすかに聞こえる明るい声。それに見送られるよう、ホンマンもまた自宅へと帰っていく。

それぞれの帰るべき場所。けれど集えばまるでそこが我が家のようだ。それは道端であっても、異国であっても構わない。

大切な人がいるその場所こそが帰るべき場所なのだから…。


 
大好きな君だから、ずっとそばにいたい。

君の声で目覚め、君の声で1日を終える幸せな毎日が僕を笑顔にしてくれる…。





 




written by.yue
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