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Close your Eyes ep.99-3



HP『Sweet Drops』用に書かれた作品になります。原文のまま転記したので長文になります、ご了承ください。












いったい、どうしてしまったというのだろうか…。

まるで重石がつけられているように身体が思い。それに腹痛も和らぐ気配がない。眠ってしまいたいのにそれすらもできないほどの痛みが腹部を襲っていた。

「…っ」

軋む身体に鞭を打ち、起き上がる。トイレに行こうと前かがみになりながらも立ち上がった。ふと、視界の隅に紅いものが目に入り、チュンジェは空ろな瞳をそれへと向けた。

「なに、これ…」

交換したばかりのシーツ。真っ白なはずなのに、そこにはなぜか出血の跡があった。しかし、痛みがあるのは腹部だけ。出血の箇所はわからない。

動揺しながらもトイレに向かったチュンジェはさらに目を見開いた。数時間前に身につけたばかりの下着は紅く染まっていた。

愕然とするほかない。何かの病気だろうかと考えてみても、思い当たるものはなかった。

一時的なものかもしれないとしばし待ってみたが、出血が止まる気配もない。みるみる顔色は青白くなり、恐怖が身を包んでいく。

「ど、どうしよう…っ」

呟く声も震え始めていた。混乱する頭の中でヴァネスの言葉を思い出す。病院に行けばジフンがいるはずだ。ジフンならばこの出血の意味を知っているかもしれない。

下着を交換し、これ以上汚れないようにと大量のトイレットペーパーを挟み込む。そしえチュンジェは痛みを堪えながら歩き出した。

しかし、こんなときに限ってタクシーは捕まらない。数歩進んでは蹲り、痛みに耐える。苦痛に顔を歪ませ、壁にもたれかかるようにチュンジェは足を止めた。

もしかしたらこのまま死んでしまうのだろうか…。

ふと、そんな考えが脳裏を過ぎる。途端、身もすくむような恐怖が襲ってきた。まだ死にたくない。そんなのは絶対に嫌だ。でも、もうそれ以上歩くこともできなかった。

それは、奇跡のような偶然だった。

たまたまこの近くで仕事があり、それに向かう途中。信号待ちしていた車内から、ぼんやりと外を眺めていただけのこと。

スモークの張られた窓は、こちらから外を見ることはできても外側からこちらを見ることはできない。行き交う人々の合間、一瞬だけ見えたその姿に眉根を寄せた。

「あれ…?」

見間違いだろうか。そう思いながらも確かめようと眼を凝らす。しかしどうやら見間違いではなさそうだ。

信号が青へと変わり、車が動き出す。慌てたその人は立ち上がり、運転席に座るその人へと向かって声を上げた。

「止めろっ!」

鬼気迫るようなその声に車内にいた全員が目を見開く。しかし、彼はそんなことには構わず急停車した車から駆け出していった。

人の波をすり抜けるように駆けていく。そして彼は蹲るその人へとたどり着いた。

「大丈夫ですか!?」

肩に触れた手のひら。痛みを堪えながらチュンジェはゆっくりと顔を上げた。虚ろな瞳に映ったのは昨日、初めて逢ったばかりのその人だった。

「ユノ、さん…?」

弱々しい声。ただ事ではないと瞬間的に悟り、ユノは唇をかみ締めた。迷っている場合ではない。抱きかかえることはできないが、背負うことくらいはできる。

どちらなのか、見ただけではわからないがその呼び方の違いでわかった。

「チュンジェさん、もう少し辛抱してくださいね?」

「う、ん…」

人々が気づく前にここを去らなければ。ユノはその身体を背負い、足早に車へと戻っていった。後部座席を開けるよう指示し、その身体を寝かせる。

「ジン兄さん…っ」

「いや、違う。ジン兄さんじゃなくてチュンジェさんだ」

動揺するジェジュンをそう嗜め、ユノはハンドルを握るマネージャーへ病院へ向かうよう告げた。スケジュールは分刻み。寄り道をしていたら時間に間に合わないが、人助けならば仕方がない。車は目的地を変更し、走り出した。

滑り込むように病院へと入り、ジェジュンはジフンの元へと駆け出した。仕事のことも忘れ、いまはチュンジェの身体のほうが心配だと動く。

ジュンスとユチョンは近くの看護師を捕まえ、ストレッチャーか車椅子を借りられないかと打診していた。

「もう、大丈夫だよ~。すぐ先生来るからね~」

唯一いつもと変わらぬチャンミンの言葉。皆が焦る中で、そのどこかのん気なその声は心を落ち着かせてくれた。ユノに背負われたまま、痛みに顔を歪めながらも小さく頷く。

「チュンジェ君!」

話を聞いて駆けつけたジフンはその様相に目を見開いた。とりあえずとちょうどよくやってきたストレッチャーにその身体を横たえる。

「どこが痛むの?」

「お、なか…っ」

「お腹?どういう感じ?チクチク刺すような感じ?」

痛みを堪えながらもかすかにかぶりを振り、少しだけ強まった痛みにおなかを抱え込むように身体をまるめた。

「なんか、よくわかんない…っ」

「うん、わかった。もう大丈夫だからね?少し、検査をしてみよう」

看護師に処置室へと運ぶよう伝え、ジフンはここまで運んできてくれた5人を笑顔で振り返った。

「連れてきてくれてありがとう。あとはオレがついてるから大丈夫だよ」

少なからずその言葉は安心を与えてくれた。ほっと胸を撫で下ろし、強張った表情を少しだけ和ませる。

「ジン兄さんには連絡してあります。すぐ来ると言ってたので、たぶんもうすぐ…」

ジェジュンがそう告げている向こうで慌しい足音とともに、チュンジェの名を呼んでいる泣きそうな声が聞こえてくる。振り返れば青ざめた表情で駆け寄ってくるジンの姿があった。

「ジェ、ジェジュン君っ!チュンジェは?チュンジェはっ!?」

「これからジフンさんが診察してくれます」

「ジ、ジフン兄貴…っ」

不安でいてもたってもいられない。そんな思いがひしひしと伝わってくる。心配してくれるのはいいが、取り乱すのはあまりよろしくない。

しかし、それもジンの優しさだ。苦笑を滲ませながらも、ジフンはそっと髪を撫でた。

「大丈夫だよ。意識もはっきりしてるし、受け答えもできてたから。少しだけいい子で待っててね?」

「う、うん…っ」

ジフンの言葉を信じたいけれど、不安はなかなか消えてくれない。動揺を露に落ち着かない様子を見せるジンに微笑み、ジェジュンはそっとその身体を抱き寄せた。

こんなジンをひとりにさせておくなんてできない。しかし、ここで仕事に穴を開けるわけにもいかなかった。せめて少しでも落ち着けばと、髪を撫でながら人目を忍んで目じりに浮かんだ涙に口づける。

「大丈夫です。ジフンさんなら絶対治してくれますから…ね?」

優しい声を耳元で聞きながらコクコクと何度も小刻みに頷く。信じているというよりはそう願っている、そういった印象だった。

「不安になったら電話してください。もしかしたら出られないかもしれないけど、すぐに折り返します」

「ジェジュン君…っ」

「仕事が終わったらまた来ますね?」

コクリと頷き、滲んだ瞳で縋るようにジェジュンを見つめる。なかなか振り切ることができない。当たり前だ。大切な人が自分を求めてくれるのに、それを振り切って去ることなどできるはずもない。

しかし…。

「ジェジュン」

「わかってる」

もう、時間はとうに過ぎている。すぐにでも出発しなければならない。

「オ、オレ、大丈夫。ジフン兄貴、いるもん…」

「…」

漂う空気を読み取ってか、不安に震えながらもそう告げる。少し寂しさを感じながらもジェジュンは微笑み、もう一度唇を寄せた。

「また、あとで」

「うん」

これ以上引き止めるわけには行かない。そばにいて欲しいと願う気持ちを飲み込み、ジンは微笑んだ。その気持ちにジェジュンもまた気づいている。しかし、いまは気づかないふりをしなければならない。

同じように微笑を浮かべ、ジェジュンは背を向けた。そして待っていた4人とともに去っていく。それを見送ったジンは先に向かったジフンを追いかけるべく、奥へと向かって歩き出した。

状態を聞いたジフンはとりあえず検査だとエコー検査やレントゲン撮影を行っていく。しかし、それだけで判断はつかず、最終的にはMRI検査。

すぐにでも原因を突き止め、外で待っているジンを安心させてあげたいのになかなかうまくいかない。気づくとチュンジェがここにやってきてから3時間ほどが経過していた。

「先生、できました」

ようやく手元に届いたすべての資料。パソコン上にそれを表示させたジフンは眉根を寄せた。幻覚だろうか…。そう思って目をこすり、瞬きをしてみる。しかし、どうやら幻覚ではなさそうだ。

「…こんなコトって現実にあるのか…」

資料で呼んだことはあるが、目の当たりにするのは初めてだ。にわかには信じられない。

最初にとったレントゲン写真にはおぼろげだがその影があった。そして決定的証拠ともいえるMRI写真。これを見てしまったらもう、疑うことはできない。

「おや、ジフン先生。昼飯も取らずに仕事か?熱心なのはいいが、しっかり休まないと身体が持たないぞ?」

振り返るとそこにはたまたま通りかかった眼科のカン医師が佇んでいた。その手にはデザートだと言わんばかりにアイスクリームがあった。冬だというのに、元気なことだ。

「カン先生、ちょっとこれを見てもらえませんか?」

「うん?」

いまは休憩中だが、呼ばれたなら見ないわけにはいかない。残っていたアイスクリームを頬張り、手の中にパッケージを丸め込む。そしてカン医師はジフンの隣へと並んだ。

「…?」

何を言わんとしているのだろうか。特に変わった様子はない。けれど見て欲しいというからには何かがあるのだろう。

注意深くしげしげとレントゲン写真とMRI写真を眺めるカン医師を見つめ、ジフンはそっと指差した。

「これ、精巣ですよね?」

「あぁ、その通りだ」

それ以外のなんだというのだろうか。もしかしたらからかっているのではないかと疑いたくなってしまう。

「じゃあ、これは…?」

「らん、そう…?」

そこにあるものなど人間の限られた臓器の中でひとつしかない。しかし、精巣と卵巣を併せ持つ人間など普通に考えて、いるわけがなかった。

「合成か…?よくできてるな…」

「…残念ながら、合成じゃありません。先ほど、撮影したものです」

「…」

その言葉に疑う余地はあっても、その顔を見れば違うとわかる。信じがたいものを目の当たりにしたときの人間の表情。カン医師はそれを見取り、改めて写真へと目を移した。

「スゴイな…。初めて見る」

滅多なことでは動揺しないし、驚いたりはしない。しかし、カン医師もこればかりは驚きを隠せなかった。その証拠に呟いた声はわずかに震えていた。

両性具有というのは稀に存在が確認されている。しかしそれは生後すぐに判明し、外科手術が施されている。しかし、見る限りこれは成人した人間の写真だ。

「クランケは?」

「腹痛で運ばれてきて…いま、病室に寝かせてあります」

「腹痛?」

「はい。単なる下血かと思ってたんですけど、もしかしたら…」

ジフンの推測はすぐにカン医師にも理解できた。大きく頷き、複雑な表情を浮かべるジフンを振り返る。

「とりあえず…出血箇所を診てみよう。それでわかるだろう?産婦人科には連絡しておこう」

「はい」

まさか、そうは思いながらも他に原因は思い浮かばなかった。ここまできたら確かめるしかない。しかし、やはり躊躇いが過ぎる。

ジフンはチュンジェの元へと向かいながら、いまは少し離れた土地で学会に参加している同僚へと謝罪のメールを送った。










続く。
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テーマ : BL小説 - ジャンル : 小説・文学

コメント

な、なに?

両性具有なんて~~?!

ジンとチュンジェの性格の違いもここからきているのかしら?

でもこの出血の原因は~~?!

ドキドキする!
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