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Close your Eyes ep.99-5



HP『Sweet Drops』用に書かれた作品になります。原文のまま転記したので長文になります、ご了承ください。












ジンの元へ戻ってみると、部屋にはもうひとつの姿があった。西陽が眩しすぎてぼんやりとしか見えないが、その声で誰なのかはすぐにわかった。

「ジフンさん、ジン兄さんは…」

「大丈夫だよ。少し、衝撃的過ぎて気絶しちゃっただけだから。それより仕事は?」

チュンジェをここまで連れてきてくれた彼らは仕事があるからといったんは病院を去ったはずだった。なぜここにいるのか。聞かずとも理由はすぐにわかった。

「終わりました」

仕事は無事終わり、慌ててここへと戻ってきた。届くメールはどれも不安を伝えるものばかり。1秒でも早くここに来たくて、直接送り届けてもらった。協力してくれたメンバーには後でお礼を言わないとだろう。

「衝撃的っていうのは、チュンジェさんのコトですか?」

「まぁ…うん、そうだね…」

あと2回説明すれば終わるかと思っていたが、そううまくはいかないようだ。気は進まないが、説明するほかない。彼もまた、家族同然なのだから。

「聞きたい?」

答えはわかっていても聞かずにはいられなかった。案の定、ジェジュンは視線をそのままに首肯する。事情を把握しておかなければジンを支えることはできない。そう眼差しが語っていた。

封筒にしまった写真を再び取り出す。そして台へと挟み込んだそのとき、かすかに声が聞こえた。振り返ればずっと眠っていたジンのまつげがわずかに震え、ゆっくりと瞳がまぶたの裏から現れるところだった。

「ジン兄さん」

どこか虚ろな瞳。手を握り、濡れた瞳を見下ろす。

「ジェ、ジュン君…?」

起き上がる意思を示せば、支えるように力強い腕が背中へと回る。きょろきょろと辺りを見回し、ジンはため息とともに肩を落とした。

もしかしたら夢だったのかもしれない。しかし、その淡い期待を打ち砕くかれた。やはり、どこをどう見ても病院だ。そして先ほど見せられた写真がまだそこにあった。

「チュンジェ…っ」

名を呼べば、また涙が浮かび上がる。懸命に泣くのを堪えているようで、少し歪んだ顔。少し不細工なその顔にジェジュンは微笑み、優しく抱き寄せた。

「ジェ、ジェジュン君、どうしよう…っ」

「何があったんですか?」

「チュンジェが…チュンジェが…っ」

やはりまだ受け入れることができていない。続く言葉がなかなか出てこなかった。嗚咽が声を詰まらせ、言葉を奪っていく。

それでも急かすことなく、背中を撫でながら待ち続ける。できれば、どんな出来事もジンの口から聞きたい。ジェジュンはじっと次の言葉を待っていた。

「チュンジェ、弟だけど、妹だって…っ」

「は…?」

言いたいことはそれがすべてのようで、ぎゅっとジェジュンに顔を押し付ける。困惑を滲ませ、ジェジュンは説明を求めるようにジフンを見つめた。

どうしても、こういう役回りらしい。諦めたように息をつき、ジフンは再び説明を始めた。先ほどジンへ説明したとおり、言葉をなぞる。

「そんなコトって、あるんですか…?」

「一応、事例はいくつか上がってるよ。オレも実際見るのは初めてだけどね」

「原因は…?」

それは一番難しい質問だ。答えはわかりきっているが、経過はいまだにわからない。

「原因はおそらく染色体異常。いまのところ、それしか言えないんだ」

どうにかなるようなものではない。染色体など、どれだけ医学や科学が発達してもいじれっこないだろう。あまりにも突拍子ない事実に、ジェジュンは息をつく。理解をできる範疇を超えている。

「ジン兄さん、泣いてちゃダメですよ?一番大変なのはチュンジェさんです。チュンジェさんを元気付けられるのはジン兄さんだけなんですから…ね?」

「とはいっても月経痛だからね…。こればかりは痛み止めで和らげるしかないんだ」

「…」

腹痛とはそういうことだったのか。いまさらながらに納得がいく。病気ならばいろいろとできることもあるが、月経痛ではどうしようもできない。

「ちなみに、ジフンさん…」

「うん?」

「これって、ドッキリとかじゃないですよね…?」

確かめずにはいられない。さきほどまでの理知的な問いかけとは違い、ひどく幼いものだった。思わず笑みが浮かぶ。

「じゃあ、カメラでも探してみる?」

「い、いえ…すみません。ちょっと、冗談です…」

冷静に対応をしているように見えるが、やはり相当混乱しているようだ。しかし、本当にドッキリカメラだったらどれだけ嬉しいだろうか。ジフンは天井を仰ぎながら、そう心の底から思った。

「ジン」

いつまでもここで立ち往生するわけにもいかない。先へ進むべく、ジフンはジェジュンのひざの上で嗚咽をこぼすジンを見つめた。

涙はそのままに、顔だけかすかに振り返る。小さくしゃくりあげながら、ジンは濡れた瞳でジフンを見上げた。

「わかる限りでいいんだけど、教えてくれる?」

「…?」

「チュンジェ君のお母さんは誰なのか…知ってる?」

ビクリと身体が震える。少し離れた場所にいたジフンでさえ、それが見て取れた。検査をしていくのももちろんだが、染色体異常を起こすからには何か出生に原因があるのではないかと思った。

兄弟というからには父親はあの人だろう。となると、母親は誰なのか。近親相姦さえ無理強いする人なのだから、チュンジェもその可能性が高いとような気がしてならない。

「ジン、何か知ってるね…?」

その反応に疑惑が浮上する。問い詰めるような声音にジンは顔を背け、ぎゅっとジェジュンへ抱きついた。拒否反応を示すように頭を振り、顔を隠す。

「し、知らないもん…っ。オレ、なんにも知らないもん…っ」

「…」

絶対に何か知っている。ジフンはもちろん、ジェジュンでさえそう思う。ここ最近、本当に嘘が下手になった。扱いやすくていいが、少し可哀想にも思える。

「ジン、何を隠してるの?」

怯えさせないようにと意識しながら、優しい声音で問いかける。しかし、ジンは頑なに拒み続けた。

ここにいたのでは絶対に話さざるを得なくなる。それだけはなんとしても避けたい。その一心でジェジュンのひざの上から飛び降り、ジンは手を引きながら駆け出した。

「ちょ…っ、ジン兄さんっ」

連れて行ってくれるのは嬉しいが、構えていなかったせいで思わず転びそうになる。なんとかもう片方の手で身体を支え、持ち直したジェジュンはジンとともにジフンの元を後にした。

「まったく…」

やりきれない想いをその一言で表し、重いため息をつく。できるならいますぐにすべてを話してもらいたい。しかし、心の整理がまだついていないジンには無理な話だろう。それに、行く場所など限られている。

いまさら焦る必要もないと、ジフンは出しっぱなしになっていたその写真を見つめた。

誰の目に触れさせるわけにもいかない。静かにそれを封筒へと戻し、ジフンは唯一鍵のかけられるデスクの2段目の引き出しへとしまいこんだ。

逃げる場所などひとつしかない。チュンジェが眠る病室へと駆け込み、扉を背に小さく息をつく。そしてジンはベットで眠るチュンジェの傍らへと歩み寄った。

「チュンジェは、チュンジェだもん…」

まるで自分自身に言い聞かせているようだ。どんな秘密を抱えているかはわからないが、それはとてつもなく大きなものに違いない。

聞きたいのは山々だが、無理やり聞きだすことはできない。しばしその背中を見つめていたジェジュンはジンへと歩み寄り、優しく後ろから抱きすくめた。

「大丈夫です、ジン兄さん。僕はずっとジン兄さんの味方でいます。だから、そんなに怯えないで…」

言葉にこめた願いが通じたのか、チュンジェを見つめていた視線がジェジュンへと注がれる。どこかその瞳は驚いている風でもあった。

「味方…?」

「はい、いつだって僕はジン兄さんの味方です」

「…」

その言葉は先日聞いた、スンフンの言葉と重なった。あのときはよくわからなかったが、いまになってなんとなくわかり始めた。

誰かが味方でいてくれるというのはとても心強い。それが好きな人ならなおさらだ。

ジンは久しぶりに笑顔をこぼし、ぎゅっとジェジュンへと抱きついた。あたたかいぬくもりに包まれ、優しい香りを胸いっぱいに吸い込む。そうしていると不思議なことに、心は緩やかに落ち着き始めていった。

イスを並べて寄り添うように座り、硬くまぶたを閉ざしたままのチュンジェを見つめる。改めて思う。本当に驚くほどジンにそっくりだ。話し方で多少の区別はつくが、口を閉ざしているとさっぱりわからない。

「ジェジュン君…?」

あんまりにチュンジェへ見入っていたせいか、ジンが不安げな声で名を呼ぶ。視線をチュンジェからジンへと戻し、ジェジュンはそっと微笑んだ。

「早く、元気になるといいですね…」

その言葉に小さく頷き、縋るように繋いだ手をぎゅっと握り締める。

できるなら代わってあげたいが、どんなに願ってもそれはできない。元は同じ人間だというのにおかしな話だ。しかし、元は一緒でもいまは別々の個体なのだから仕方がない。

「僕の姉さんも生理通が酷くて、いつも最初3日はベットから動けないんです。4日目からは嘘みたいに痛みがなくなるって言ってました」

「そうなの…?」

「はい。だから、辛いのもきっとあと2日くらいです。痛み止めも効くはずだし、目覚める頃には少し楽になってると思います」

経験談ではないが、ジェジュンの話はジンの抱えている不安をやわらげてくれた。幼い笑顔を浮かべ、よかったと小さく呟く。

無理に起こしてはならない。痛みが治まり、体力が回復するのを待つだけ。焦ることなく、急かすことなく、ふたりは寄り添いながらただじっとチュンジェの目覚めを待っていた。










続く。
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