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Close your Eyes ep.99-6



HP『Sweet Drops』用に書かれた作品になります。原文のまま転記したので長文になります、ご了承ください。












相当、痛みに体力を削られていたのだろう。チュンジェが目覚めたのは翌日の昼過ぎだった。

まつげが震え、ゆっくりと瞳が姿を現す。この場を立ち去ることなく待っていたジンは立ち上がり、その瞳を覗き込んだ。

「チュンジェ…っ」

「…にい、さん…?」

気を抜くと涙がこぼれそうになる。でも、いまは泣くわけにはいかない。かすかに浮かんだ笑みは不思議と大人びていた。まるで、少し前のジンに戻ってしまったかのようだ。

「もう、大丈夫だからね?」

左手は手を握り締めたまま、右手が優しく髪をなでる。そのぬくもりが心細さも寂しさも、痛みさえも拭い去っていくようで、チュンジェの瞳から涙が零れ落ちる。

「兄さん…っ」

「どうしたの?まだお腹痛い?」

そうではないとかぶりを振り、重たい身体を必死に起こす。その意思を読み取り、髪をなでていた手が背中へと触れた。労わるようにそっと、その身体を支える。

「も、もう、逢えないかと思った…っ」

力の入らない腕で懸命に縋りつく。チュンジェの想いを受け止めるように優しく、しかし強くその身体を抱きしめる。そして囁かれたその言葉に目を伏せた。

「大丈夫。ずっとそばにいるから」

その優しくて力強い言葉に嗚咽がこぼれていく。あの激痛の中で感じた恐怖がゆっくりと和らぎ、涙となって溢れていくようだった。

本当なら、一番に駆けつけたかった。一番に気づいてあげたかった。しかし、それは自己満足だ。どの想いも言葉もチュンジェに負担をかけてしまう。

いまだけは心を隠してもいい?そう、ジンは心の中で異国にいる父へと問いかけた。

「チュンジェ…。あのね、チュンジェに言わなきゃいけないコトがあるんだ」

ようやく落ち着いてきた頃、ジンはそう優しく語りかけた。抱きしめていた腕の力を少しだけ緩め、涙に濡れたその瞳を見つめる。

まだ、言うには早いだろうか。でも、知らなければならないことだ。

「…?」

「チュンジェ、男の子だと思ってたんだけど…女の子でもあるんだって」

「え…?」

混乱を表すように瞳が落ち着きなく彷徨う。まだ、ジン自身受け入れられていない。チュンジェも同じだろう。しかし、受け入れなければならないことだった。

「お腹が痛いのは、月経痛って言って…女の子特有のもの。出血もそれが原因なんだ。病気とかじゃないから、安心して」

「に、兄さん。ぼ、僕…」

「うん。いきなりだから、驚いちゃうよね…。オレも、驚いた」

その驚きは、いまだかつて感じたことのないほど大きなものだった。いまもまだ処理し切れていない。それでも、認めなければならない。すべて、目の前で起きている出来事なのだから。

「これから、いろいろ検査とかもしないとだから大変だと思う。でも、これだけは覚えてて。たとえどんなことがあってもチュンジェはチュンジェなんだよ?何も変わらない。これから先もずっとチュンジェはオレの兄弟だから」

「兄さん…」

無理に何かをいう必要はない。そう告げるように優しく微笑み、呆然とするチュンジェの頭を撫でる。指先に触れる髪を何度も梳き、額にそっと口づけた。

「好きだよ、チュンジェ」

「…っ」

普通ではないと告げられた。けれど、好きだといってくれた。胸が燃えるように熱くなる。離れてしまった分だけ身体を近づけ、チュンジェはジンの胸へと顔を埋める。そして、小さく頷いた。

「僕も…兄さんのコト、好き…っ。一番、好き…っ」

「ありがとう…」

そう告げながらも、心の中は申し訳ない気持ちでいっぱいだった。どうして、チュンジェがこんな辛い目に遭わなければならないのだろうか。元は同じ人間だというのに、あまりにも理不尽だ。

すべての気持ちを押し隠し、ただ静かに微笑み続ける。そうするほか、何もできなかった。

「まだ身体ツライでしょう?ほら、横になって」

「うん…」

「大丈夫だよ、ずっとそばにいるから」

不安をすぐに感じ取り、優しく囁く。するとチュンジェは安心したように微笑み、まくらへと頭を預けた。

「少し、何か食べたほうがイイと思うんだけど…何か食べたいモノはある?」

「ううん、お腹あんまり空いてないから…」

「ダメだよ、お腹空いてなくても食べなきゃ」

ただでさえ昨日から眠り続けていた。簡単に見積もってもまる1日、食事していないことになる。それに痛みを耐えるにはかなり体力を消耗するものだ。

「スープ…」

食べたいものを考えていたチュンジェがふと、何かを思い出したようにそう呟いた。

「スープ?」

「うん。…お家にね、ヴァネスが作ってくれたスープがあるの…。それなら、食べたいかも…」

本当ならばもう少し精のつくものを食べてほしいところだが、仕方がない。ただでさえ食が細い上に食欲がないのだ。スープでも食べたいと言ってくれたのは奇跡に近い。

しかし、問題もある。取りに行くにはここを離れなければならない。ひとりにさせるのは心配だった。どうしようかと悩んでいると不意にノックする音が聞こえた。

「はい」

応じればゆっくりと扉が開く。そして窺うように5つの顔が縦に並んでいた。

「入っても、大丈夫ですか…?」

「うん、どうぞ」

躊躇う5人を中へ招くように扉を開く。そしてジンは一番最後に入ってきたジェジュンにそっと微笑んだ。

「ユノ様!」

「え…?」

チュンジェ以外の全員の声が思わず重なった。その呼び方はなくなったはずだ。しかし、チュンジェは輝く瞳でユノを見つめていた。まるで憧れの人にでもあったかのようだ。

「い、いや、あの、その、チュンジェさん。”さま”付けはちょっと…」

「でも、命の恩人だから…。ユノ様は、ダメ…?」

「あ、う…」

真っ直ぐに見上げてくる瞳はまるで幼子のようだ。とてもダメだとは言い切れない。かといって頷くこともできず、ユノは助けを求めるように隣にいたチャンミンを見つめた。

「イイんじゃな~い?好きなように呼ばせてあげなよ~」

どうでもいいと言わんばかりの態度。助けを求めた相手が悪いとしか言いようがない。チュンジェは嬉しそうに微笑み、”ユノ様”と連呼する始末。頭痛を覚えた頭を抑え、ユノは小さく息をついた。

「今日は仕事って言ってなかった?時間、大丈夫なの?」

「え?あ、はい、大丈夫です…」

覚えた違和感が拭えない。まるで、恋人ではない頃に戻ってしまったかのようだ。不安を覚えジンを見つめるもすでに背を向けられていた。

「ユノ君、悪いんだけどオレが戻るまでチュンジェと一緒にいてもらってもイイ?」

「え…?あ、はい、構いませんけど…」

「ゴメンね?ありがとう」

「は、はぁ…」

いったい、何が起こったというのだろうか。ジェジュンだけが感じていた違和感はいつしかメンバー全員に伝染していった。

「チュンジェ、いい子で待ってるんだよ?すぐにスープ、取ってくるから」

「うん」

「カギ、少しだけ借りるね?」

頷いたのを確かめ、そっと額に口づける。そしてジンはユノにチュンジェを託し、静かに病室を出た。

「ジン兄さん!」

しばらく呆然としていたジェジュンだったが、慌ててジンを追いかける。エレベーターの前でなんとか追いつき、その手を取った。

「…っく」

力任せに振り返らせてみればそこには子どものような泣き顔。思わず胸を撫で下ろす。

「ジン兄さん」

優しく名を呼び、その身体を抱き寄せれば縋るように背中へと手が回る。相当我慢していたようだ。あまりにも我慢することが多すぎて、抱えているものが大きすぎて、以前の姿を呼び戻してしまったのだろう。

「もう、大丈夫ですよ。よく、頑張りましたね?」

「…っ」

うなじに顔を埋めたまま、ジェジュンの言葉に大きく頷く。泣き顔を見るのは辛い。でもいまは安堵を得られた。縋るその身体を抱き上げ、やってきたエレベーターへと乗り込む。

その姿を遠くから見つめていたジフンは苦笑を滲ませ、来た道を戻っていった。

「ジン兄さん、鍵を開けてもらえますか?」

人目を避けるようにたどり着いた駐車場。たくさんの車の中でも一際高級感を漂わせる車の前でジェジュンは優しくジンにそう呼びかけた。

小さな頷き。そしてポケットの中へと手を差し込み、小さなボタンを押した。ハザードが2回点滅し、開錠される。そしてジェジュンは助手席へと抱えていた身体を下ろした。

腕を離せば不安げな瞳が見上げる。その涙ぐんだ瞳にそっと微笑み、優しく口づけた。

「どこへ向かえばいいですか?」

「ヴァ、ヴァネスの家…っ」

「わかりました。一緒に行きましょうね?」

握り締めていた手の中から鍵を取り出し、少しでも安心できればと微笑みかける。そして運転席に乗り込むと、ジェジュンは優しくその手を包み込んだ。

伝わってくるぬくもりに安心したのか、かすかな微笑が浮かぶ。そしてジンは目を伏せ、身を任せるようにその肩へと頭を預けた。









続く。
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