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Close your Eyes ep.99-7



HP『Sweet Drops』用に書かれた作品になります。原文のまま転記したので長文になります、ご了承ください。












どうすればいいのか。何を話せばいいのか。

知り合ってからまだ日が浅いせいで、これといって何も思い浮かばない。嫌な沈黙だ。けれど、チュンジェだけはどこか幸せそうだった。

「あの…手、握ってもいい…?」

「は、はぁ…」

受け答えも手探り状態だ。曖昧な返事だが、嫌がってはいないようだとその手を握る。そしてチュンジェは嬉しそうに微笑み、ユノを見つめた。

「助けてくれて、ありがとう」

「い、いや、別に…。たまたま、通りかかっただけで…。でも、元気なったみたいで良かった…です」

「うん、ユノ様のおかげ」

遠のく意識の中で感じた力強い腕、そして大きな背中。その感覚を思い出せば、わずかに鼓動が早まる。まるで、恋でもしているみたいだ。

恋人がいるのだからそれはおかしいと思いながらも、頬は赤らみ、身体が火照っていく。

「チャ、チャンミン君も、ありがとう」

「何が~?」

取り立ててお礼を言われることなど何もない。壁際でゲームに勤しんでいたチャンミンは珍しく顔を上げ、首をかしげた。

「声、聞こえたから…。励ましてくれた声」

「別にお礼言われるコトじゃないよ~」

そうさらりと返せば照れ隠しだと感じたようで、チュンジェは微笑んだ。そしてもう一度”ありがとう”と告げる。

もし、この人たちがあそこを通りかかってくれなかったら本当に死んでしまっていたかもしれない。冗談ではなく、本気でそう思えるほど酷い痛みだった。

「今度、お礼するから…」

「い、いや…ホントにお礼言われるようなコトじゃないから、そんな気を遣わないで…ください。その、なんていうか…苦しんでいる人がいたら助けるのは人間として当たり前…ですから」

不自然な言葉遣い。どこかぎこちない。俯いていた顔を上げ、チュンジェはわずかに背けられたその顔を見つめた。

「敬語、ムリして使わないで。僕、そんな偉い人じゃないし…たぶん年下だから」

「で、でも…」

何しろ兄はあの人だ。変に親しくなってはなにを言われるかわからない。いまだに溝の埋まりきらないユチョンを見ているせいで、思わず気を張ってしまう。

「それに…僕、ユノ様とお友だちになりたい…」

「…」

「ダメ、かな…?」

友だちに”さま”付けはどうなのだろうか。ダメではないから頷いてもいいところなのだが、なんとなくジンの確認を取っておいたほうがいいゆような気がした。

「いや、その、ダメっていうか…」

「どうしたの?」

不意に後ろから聞こえてきた声。振り返ればそこには水筒のような容器を持ったジンが佇んでいた。その後ろには一緒に出かけたジェジュンの姿もある。

「ユノ様と友だちになりたくて…」

「友だち?」

「うん」

恥じらい半分、期待半分。ジンはそれを受け止め、ユノを振り返った。

「チュンジェ、まだこっちに来て日が浅いんだ。ユノ君さえ良ければ、友だちになってあげてくれる?」

「え?あ、はい…オレで、良ければ…」

先ほどまであった躊躇いも忘れ、ユノは即答していた。なぜか、質問も拒否も許されないような気がしてならない。それはおそらく、ジンを取り巻く雰囲気だろう。やはり、いつもと少し様子が違う。

「よかったね?チュンジェ」

「うん。ありがとう、兄さん」

「じゃあ、ゴハンにしようね?スープ、持ってきたから」

いったん、容器を脇へと置き、優しくその身体を引き上げる。そしてまくらを腰の裏へといれ、体の負担を和らげる。

カップに中身を移し変えれば白い湯気が立ち上る。どうやらあたためてから持ってきてくれたようだ。両手にそれを握らせ、ジンはそっと髪を撫でた。

「熱いから気をつけて飲むんだよ?」

「うん」

「みんなにもゴハン買ってきたから、よかったら食べて」

その言葉に真っ先い反応したのはチャンミンだった。ポータブルゲーム機の電源を落とし、袋を提げたジェジュンの元へと駆け寄っていく。

ひとりで食事では、余計に食欲が薄れてしまう。ジェジュンの助言から、ふたりはファーストフード店に寄って食べ物を持ってきた。

もちろん一番の目的はジンに食事をさせるためだ。少し疲れた感のあるジンに少しでも元気になって欲しかった。

「いっただっきま~す」

まずはひとつ目。ハンバーガーを頬張るチャンミンをわき目に、他のメンバーもまたどれがいいかと吟味する。なくなる前にと、ジェジュンはハンバーガーとポテト、それに飲み物をふたり分持ってジンへと歩み寄った。

「はい、ジン兄さん」

「ありがと~」

気づけばジンも昨日から何も食べていない。チュンジェと同様、空腹を感じていなかった。しかし、やはりお腹は空いていたようだ。ペロリと平らげ、他の食べ物を探す。

「ユチョン、ハンバーガーもうひとつ取ってくれる?」

その様子に気づいたジェジュンがそう呼びかければ、ユチョンはハンバーガーを頬張ったまま歩み寄ってきた。

やはり多めに買ってきて正解だ。嬉しそうにそれを受け取り、大きな口をあけてかぶりつく。まだ無理しているようだが、だいぶいつもどおりの姿になってきた。

「おいしいですか?」

「うん、おいし~っ」

「まだまだありますから、たくさん食べてくださいね?」

目いっぱい口に詰め込んだまま、子どものように大きく頷く。すでにもう片方の手は次の食べ物を求めているようだ。

だんだんといつものジンに立ち戻っていく。取り巻く雰囲気も和らぎ、こぼれる笑顔も幼い。それを敏感に感じ取り、ジェジュンはそっと微笑んだ。

「チュンジェも少し食べる~?」

「えっと…じゃあ、1口だけ…」

そんなにお腹が空いているつもりはなかったが、香りが食欲をそそる。小さく1口ハンバーガーを食べ、おいしいと目を細めた。

これで削られていた体力も回復するだろう。持ってきたスープはすべてチュンジェの胃袋の中。お腹が満たされるとまた眠気が襲ってくる。

抗うことなく、チュンジェは深い眠りへと落ちていった。
 
「くそったれが…っ」

口をついて出るのは汚い言葉ばかり。ただでさえ口が悪いというのに、あの電話の後からはなおさらだ。

電車を降り立ったヴァネスは不機嫌そのもの。のん気に歩く人並みをすり抜けるように歩いていく。時折こぼれる舌打ちは、苛立ちの表れだろう。

あれから何度も電話したが、すべて留守番電話へと繋がってしまった。故意に避けているとしか思えない。おかげで何ひとつ手につかない有様だった。

どうせまた、留守番電話だろう。大して期待もせず、ヴァネスはタクシーへ乗り込むなり携帯電話を取り出した。しかし、予想外にも聞こえてくる声。思わず息を呑む。

『電話かけてきておいて無言はないんじゃない?』

「…誰のせいだと思ってやがんだ…っ」

一向に折り返しの電話も、メールもない。いざ、繋がってみるとどこから言葉にすればいいのかわからないほど頭も心も混乱していた。

「で…どっちのコトなんだよっ。チュンジェもジンも全然連絡つかねぇじゃねぇかっ!」

苛立ちも最高潮だ。感情を隠すことなく電話の向こうにいる相手にそう怒鳴れば、タクシーを運転していたその人は身をすくませた。

厄介な客を乗せてしまった。きっとそんな風に思っているのだろう。少し怯えたような眼差しが時折バックミラー越しの注がれる。しかし、いまはそんな些細なことに構っている余裕はなかった。

『いまどこにいるの?』

「病院に向かってるに決まってんだろうがっ」

電話で告げたとおり、一目散に職場へと向かっていた。本当ならば昼過ぎの電車に乗るずだったが、わざわざキャンセルをして早朝便に飛び乗った。

『じゃあ、早くおいで。帰らないで待ってるから』

「この野郎…っ」

まだ先延ばしにするつもりらしい。意地が悪いと知っていたつもりだが、まさかここまでとは知らなかった。顔を見たら、思わず手が出てしまいそうだ。

再び一方的に切られた携帯電話を睨みつけ、苛立ちを誤魔化すように髪をぐしゃぐしゃとかき回す。しかし、そんなことで落ち着けるはずもない。やりきれない思いをため息にしてみても同様だ。

とにかく、早く職場へ行くしかない。その心を悟ったのか、それとも早くこの厄介な客を降ろしたいと思ったのか、タクシーは制限速度を上回るスピードで公道をすり抜けていった。

支払いを済ませ、お釣りを受け取ることも忘れたように歩き出す。そしてヴァネスは足早に廊下を進み、彼がいるだろう部屋の扉を開け放った。

「お疲れ、ずいぶん早かったね」

「…」

そんな挨拶も前置きもいらない。知りたいのはひとつだけだ。無言の圧力を感じ取ったのか、ジフンはそれ以上口を開くことはなかった。

引き出しの鍵を開け、中に入っていた封筒を取り出す。そしてその中にある写真を特殊な台へとはめ込んだ。

見てみろと告げるように一歩、後ろへと下がる。譲られた場所へと足を進め、ヴァネスはその写真へと見入った。ふと、違和感を感じる。思わず眉間に皺を寄せ、次の瞬間目を見開いた。

隅のほうに刻まれた名前は大切な人。そしてその写真には普通であればありえないことが起きていた。

「なんだ、これ…」

そう、呟くしかなかった。これを電話で説明されても理解できるはずがない。この写真を目の当たりにしてもなお信じることなどできなかった。

「言っておくけど、偽造じゃないから」

心を見透かしたようにジフンが呟く。その声音からは疲れが感じ取れた。この、通常では考えられない現実にヴァネスもまた呆然とする他ない。

惜しくもその思いは、3日前にジフンが抱いたものと同じだった。










続く。
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