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Close your Eyes ep.99-8



HP『Sweet Drops』用に書かれた作品になります。原文のまま転記したので長文になります、ご了承ください。












とにかく、この目で確かめなければ…。その一心でヴァネスはチュンジェの元へと向かった。

扉を開けて中を覗き込めば同じ顔がふたつ、幼い寝顔をこぼしている。睡眠邪魔はしたくないが、起きるまで待つこともできない。

心の中で謝罪し、ヴァネスはチュンジェの足へと手を伸ばした。そして愕然とする。

「マジかよ…」

気づくとそう呟いていた。その声にピクリとベットの端で突っ伏すように眠っていたジンが顔を上げた。まだ寝ぼけ眼。ぼんやりとヴァネスを見つめていた瞳が次第に生気を帯び、見開かれた。

「な…っ」

顔を真っ赤にし、口をパクパクと動かす。何かを言いたいようだが、突然の事態に言葉が出てこないようだ。都合がいいと思いつつも衣服を元通りにし、ヴァネスはジンを外へと連れ出した。

もがくジンに構わず廊下を引きずるように歩き、先ほどジフンがいた部屋へと戻っていった。夜勤明けだったということもあり、すでに部屋はもぬけの殻。イスへ腰を下ろし、深いため息をついた。

「どうすっかな…」

まだ整理など一切ついていない。しかし、いつまでも悩んでいたって事態が好転するわけではない。

「どうすっかなじゃないよっ!チュンジェに何するのさっ!!」

いまにも噛み付いてきそうな勢い。別段、何をするつもりもなかった。単に、この目で確かめたかっただけだ。

「確かめただけだから、そんな目くじら立てんなよ」

「怒るに決まってるでしょっ!」

大事な弟を汚されたとしか思えない。医者だとわかっているが、ヴァネスはヴァネスだ。信頼できる兄と慕っているジフンとは少し立場が違う。

「とりあえず落ち着けって。いまはチュンジェのコトが優先だろ?」

「チュンジェを優先してるから怒ってるんじゃないかっ!」

いつもならばジンを怒らせたままにはして置けないと早々に手打つが、生憎と今はそれどころではない。頭の中はチュンジェのことでいっぱいだった。

「ちょっと、聞いてるっ!?」

「やっぱ、どっちか切除したほうが…」

ジンがいることなどすでに頭の中から消えていた。思わず考えていた言葉が口をついて出る。視線は真っ直ぐにレントゲン写真へと向かったまま、ヴァネスはプランを立てていた。

「…イだ…っ」

「あ?」
その存在をようやく思い出して振り返ってみれば、そこにはボロボロと大粒の涙をこぼすジンの姿。いったい何が起こったのか、すぐには状況整理ができないほどだった。

「ヴァネスなんか、大っ嫌いだっ!」

まるで、心にナイフを突き立てられたようだ。一瞬にして頭が真っ白になっていく。

涙を浮かべたまま睨みつけるその眼差し。呆然と見返していると不意にその視線が逸らされた。踵を返したのだと認識するよりも先に手が伸び、その腕を掴んだ。

「は、離してよっ!チュンジェ連れて帰るんだからっ!」

「ちょっと待てって…っ」

「離してってばっ!もう、ヴァネスの顔なんか二度と見たくないっ!」

完全なる拒絶。突き立てられたナイフがゆっくりと沈み、傷を抉っていく。その痛みは何物にも例えようがないほど鋭い傷みだった。

「…っ」

気づくと、唇は重なり合っていた。

両手は拘束するために使われており、口を塞ぐものなどそれしか思い浮かばない。もうこれ以上、ナイフのような言葉を聞きたくはなかった。

久しぶりの口づけだと感慨に耽る余裕もない。ただ獣のようにその唇を貪り続ける。

しばらくは抵抗していた腕も、次第に力が失われていく。突き放そうとしていたのに、もっととせがむようにその手はワイシャツを握り締めていた。

当然といえば当然だ。身体の相性はいい。それに、何度も繰り返した行為だけに自然と体が反応してしまう。

誘っているのか、それとも苦しくなったのか。唇が浅く開かれ、ヴァネスは昔の行為を辿るように口腔内を犯していく。

身体を支えきれなくなり、崩れ落ちるジンを力強い腕で支える。そしてヴァネスは窺うようにゆっくりと唇を離した。

「頼むから…ちゃんと、人の話を聞いてくれよ…」

嘆願するようにそう囁き、その身体を抱き上げる。すでに逃げる意思もないようで、頭は肩に預けられていた。

「オレは、お前もチュンジェも大切なんだよ。どっちも失いたくないんだ」

「…」

白濁とした意識の中でどこか悲しげな声が聞こえてくる。ジンは目を伏せたまま、その声をただ黙って聞いていた。

「あのな、人間の身体にはひとつの性器しかねぇもんだ。通常、ギュナンドロイドってのは生後すぐに判明する。だからその段階でどっちかを切除するんだ。なんでだかわかるか?」

そんなこと、わかるわけがない。肩に乗せたまま、力なくかぶりを振る。

「身体に負担がかかりすぎるからだ。チュンジェの月経痛が酷いのもそのせいだろうな」

「で、でも…っ」

ジンの言いたいことはよくわかる。誰だって大切な人を傷つけたくはない。それはヴァネスも同じ想いだ。しかし、長い目で見ると外科的療法を施したほうが楽な場合もある。

「もちろん、無理にどうしようとかは考えてねぇよ。チュンジェの意思を尊重するつもりだ」

「…」

「約束したろ?チュンジェを傷つけるコトは絶対にしねぇって」

それはこの病院で交わした約束だ。忘れるわけがないとジンは小さく頷いた。

「お前を傷つけることも、悲しませることも…絶対にしねぇ。だから、もうちょっとだけオレのコト信用してくんねぇか…?」

そう願いをこめて問いかける。すると肩に乗っていた頭がゆるゆると持ち上がり、濡れた瞳が真っ直ぐにヴァネスを映し出した。まるで真意を測っているようだ。

怖いことなどなにひとつない。気後れすることなくその瞳を見つめ返していると、すっと視線が横へと逸らされた。そして再び頭が肩へと戻っていく。そしてしばしの間をおき、小さな頷きが返ってきた。

たったそれだけで心が安堵する。さきほどまであった痛みも払拭された。感謝の意をこめてその身体を抱き寄せ、優しく髪をなでる。そうしていると自然に笑みが浮かんできた。

言葉にすることで心の整理もできた。すると当然のように身体が眠りを欲する。

「悪い、ちょっとだけ寝かせてくれ」

「…?」

あの電話のせいで、夜も眠れぬ日が続いていた。おかげで体力も限界だ。若い頃は徹夜など当たり前。大したことではなったが、さすがに歳を重ねてきたせいで連日の徹夜はきつい。

ジンを抱えたまま診察台へと身体を投げ出せばすぐに意識は飲み込まれていった。

「う~…」

動きたくても腕が邪魔をする。しかも、やたら身体の奥が疼く。おそらく、さきほどの口づけのせいだろう。

「馬鹿ヴァネス…っ」

人の気も知らないで置いてけぼりだ。かといって無理やりにここを抜け出そうとは思わない。浮かした頭を戻し、小さく息をつく。ひとりで起きていてもしょうがないとジンもまた目を閉じた。

「兄さん…?」

眠るときはそばにいたのに、目覚めてみるとその姿はどこにもない。不意に不安と寂しさがこみ上げてくる。いったいどこへ行ってしまったのだろうか…。

身体もだいぶ楽になった。ひとりで起き上がることもできる。まだ幾分、痛みはあるものの歩くには支障ない。

ジンを探すべくベットから立ち上がる。そして扉へ向かおうとすると静かに音が聞こえてきた。ジンが帰ってきたのかもしれないと顔を上げる。しかし、そこにジンの姿はなかった。

「ドンワンさん、ミヌさん。それにジェジュンさんも…」

「…ジンは?」

「それが、起きたらいなくて…」

気づけば3日も外泊。チュンジェが入院中で付き添っていると聞いてしまったら帰って来いと怒ることもできない。とりあえず顔を見に行こうと来てみればこの有様だ。

「あの野郎…っ」

沸々と怒りがこみ上げてくる。大事な弟をほったらかしでなにをしていると言うのだろうか。

「ミヌ、チュンジェのコト頼んだぞ。オレはジンを探してくる」

「うん」

「僕も行きます」

踵を返し、足早に去っていくふたりと呆然と見つめていた。その視界にひょっこりとミヌの顔が映りこむ。

「チュンジェ君?」

「あ、ゴメンなさい」

「ううん。もう、身体は大丈夫?」

本当ならば自分も探しに行きたいところだが、わざわざ自分のために来てくれたミヌを置いて行くことはできない。問いかけに頷き、チュンジェはベットへと腰を下ろした。

「ゴハン、作ってきたんだけど…食べられそうかな?」

「はい、いただきます」

そういえばここに来てからまともな食事もしていない。ほとんどを寝てすごしていたようにさえ思える。

チュンジェの快い返事に安堵の笑みを浮かべ、持ってきたカバンの中から小さなお弁当箱を取り出す。そこにはウォンタクの名前が記されていた。

「うわ…」

ふたを開けてみればライオンを模った可愛らしいお弁当。食べるのがもったいない気すらしてくる。慌てて携帯電話を取り出して、写真を1枚。あとでヴァネスに見せようと、チュンジェはそっと微笑んだ。

その様子にミヌもまた微笑んだ。この部屋だけは立ち去ったふたりとは違い、穏やかな空気に包まれていた。

ちょうどすれ違った看護師に尋ねてみれば、内科の診察室に入っていくのを見たという。不機嫌そのものの顔でドンワンは教えられた部屋の扉をノックした。しかし、一向に返事はない。

「…もう、移動しちゃったんですかね…」

残念そうに呟くジェジュンの横で、ドンワンは扉を開く。この目で確認しなければ気がすまないといった様子だ。そして、開かれた扉の向こう。ふたりは飛び込んできた光景に目を見開いた。

「…コイツは…っ」

狭い診察台の上。大の大人が折り重なるように眠っている。人の気も知らないでのん気に寝ているジンに怒りは最高潮に達した。

「ジン」

「…」

「ジン、起きろっ!」

頬を引きつらせながらも、穏便に済ませようと静かな声音で呼びかけていた。しかし、それも3度目まで。あとは怒りに任せた怒鳴り声が響いた。

その声に驚いたのはヴァネスだ。跳ねるように起き上がり、何事かと辺りを見回す。そしてドンワンとジェジュンの姿を認め、わずかに顔をしかめた。

「何を、してるんですか…?」

静かな声が余計に恐ろしい。ヴァネスはどうしたものかと頭を悩ませながら髪をかきあげた。

「あんたはジン兄さんに何してるんですかっ!」

一向に帰ってこない答え。業を煮やし、ジェジュンの怒りもまた爆発する。その声に、ジンもまたようやく目覚めたようだった。
ビクリと肩を揺らし、さきほどのヴァネスと同じように辺りを探る。

「ド、ドンワン兄貴…っ、ジェジュン君…っ」

うろたえるジンを見つめ、小さく息をつく。そしてヴァネスは名残惜しむようにゆっくりと腕の力を緩めた。

「…悪い。チュンジェと間違ったみてぇだ」

「は?」

「…」

呆気にとられた表情で見つめる2対の瞳、そして呆然とするジン。この場を誤魔化すにはそれしか思い浮かばなかった。

「ちょ、っと待て…。お前、チュンジェと…」

「あ?」

柄の悪い受け答えに、然しものドンワンも引き気味だ。言葉を濁すように咳払いをし、視線を逸らした。

その仕種で、ドンワンの誤解は解けた。しかし、もうひとりは納得していないようだ。鋭い視線を感じながら、ヴァネスは気づかぬふりでジンを見つめた。

「悪かったな?」

なんと答えていいかわからず、ただ無言のままかぶりを振る。

「とりあえず、チュンジェは連れて帰っから」

「う、ん…」

「じゃあな」

ためらいがちに大きな手が頭を撫でる。そしてヴァネスは3人を残し、その部屋を後にした。









続く。
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