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Close your Eyes ep.99-9



HP『Sweet Drops』用に書かれた作品になります。原文のまま転記したので長文になります、ご了承ください。












扉が閉まると重いため息が聞こえてくる。びくりと身体を震わせ、ジンは窺うようにドンワンを見つめた。

「お前な…」

怒鳴られると覚悟したようにぎゅっと目を閉じる。しかし、聞こえてきたのは脱力したようなため息だった。そろっと窺うようにまぶたを持ち上げ、ドンワンをもう一度見つめる。

「だれ彼構わず一緒に寝てんじゃねぇよ。少しは抵抗しろ。わかったか?」

「う、うん」

言いたいことはそれだけだと背を向ける。どうやらドンワンはヴァネスの嘘を信じてくれたようだ。しかし、問題はもうひとつある。

原因はヴァネスとの関係。ドンワンは知らないが、ジェジュンは知っている。それだけにヴァネスの言葉を鵜呑みにすることができなかった。

「ドンワンさん、僕はもう少しだけジン兄さんとお話したいんですけど…いいですか?」

「あぁ」

次の仕事があるため時間はあまりない。顔だけでも見ていこうと立ち寄った矢先の出来事だった。事情を知っているだけに、ドンワンも嫌とはいえない。素っ気なく応じ、ドンワンはふたりを残して扉を閉めた。

「あ、あの…」

「ジン兄さん、先に言っておきます。僕は、嘘をつかれるのが大嫌いです」

一見、いつもと変わらぬ声音。しかし、ひしひしとどこからか怒りが伝わってくる。好きでこういう状況になったわけではないが、拒まなかったのも自分だ。

「ゴメン、なさい…」

「一緒に寝ていただけですか?それ以上のことは何もありませんでしたか?」

宙を彷徨う視線。それだけで”何か”あったことはすぐにわかった。ピクリと一瞬だけ眉尻が上がる。

怯えさせたいわけではない。でも、こみ上げてくる怒りをどうすることもできなかった。後ずさるジンへと距離をつめ、壁際へと追い詰める。

「何があったか…教えてくれますよね?」

まるで脅迫だ。みるみる顔が青ざめていく。瞳は今にも泣き出しそうだ。

本当ならばいますぐにでも抱きしめてあげたい。けれど、ちゃんと事実をジンの口から聞くまではそれもできなかった。

「ジン兄さん」

もう助け船を出してくれる人はどこにもいないし、逃げ場所などあるわけがない。ましてやこの状況では誤魔化すことなど毛頭無理だ。

壁を背に俯き、ジンは口元を右手で隠す。そして窺うようにじっとこちらを見据えるジェジュンを見つめる。

「キ、キス…」

「…されたんですか?それとも…したんですか?」

試すような問いかけ。意地悪だとは思いながらも、それだけ怒っているのだということに恐怖が押し寄せてくる。

堪えることができずこぼれだす涙。小さくしゃくりあげながら、ジンはかぶりを振った。

「ゴメンなさい…。いまのは、意地悪すぎました」

怒っていないわけではない。でも、いまの言葉は感情に任せすぎた大人気ないものだ。自らの言動を省みて、ジェジュンは小さく息をついた。

子どものように泣きじゃくるジンを見つめ、躊躇いながらもゆっくりと手を伸ばした。涙を拭う手を取り、指を交互に絡める。そして優しくその身体を抱き寄せた。

「ジン兄さん。前にも言いましたけど、僕は心が狭いんです。だから…お願いですから、あんまり怒らせるようなコトをしないでください」

「ゴ、ゴメン、なさい…っ」

怯えたように震える声。そんな言葉が聞きたいのではない。しかし、いまはどんな言葉も嫌味っぽくなり、ジンを追い詰めてしまう。少し頭を冷やす時間が必要のようだ。

いくら抱きしめてみても、いくら髪をなでてみても、一向に落ち着く気配はない。ジェジュンは落胆を感じながらも抱きしめていた腕を緩めた。

「これから、仕事なんです。また、連絡します…」

するりと絡まっていった指がすり抜けていく。離れたくない。行かせたくない。いくら心の中でそう叫んでも届くはずがない。滲む視界の中で背中はゆっくりと遠ざかり、消えていった。

「…っく…」

ひとり取り残された部屋で、ただ悲しげな嗚咽だけがしばらく響いていた。

「どうしたの?」

チュンジェがヴァネスと去ってから30分。ようやく現れたジンは見るからに顔色が悪かった。ミヌの問いかけにそっと微笑み、なんでもないとかぶりを振る。

「帰ろうか…?」

それはふたりに投げかけた言葉だが、自問するようでもあった。そのわずかな迷いをドンワンだけは敏感に感じ取る。

「ジェジュンに怒られたのか?」

背中に投げかけられる問いかけ。返答はない。しかし、無言は何よりの肯定だった。

「そんな顔で帰ったってみんなに心配かけるだけだろうが。ちゃんと仲直りしてから帰って来い」

そう一方的に告げ、ドンワンはミヌの手を取って歩き出した。動揺するミヌに構わず、立ち尽くすジンの脇を通り抜ける。

「ド、ドンワン…」

「イイんだよ。しばらくほっとけ」

連れ戻しにきたというのに、これでは本末転倒だ。わかってはいるが、こればかりはふたりで解決してもらうしかない。重いため息をこぼし、ドンワンは髪をそっとかきあげた。

「オレもずいぶん甘くなったもんだ」

そう呟けばミヌがかすかに声を立てて笑う。ふたりの心内を知らず、どこか楽しげでもあった。

「ドンワン、すっかりお兄ちゃんだね?」

「…最初からだよ」

ふてくされたように唇を尖らせ、ばつが悪そうに呟く。最近になって、実感する。ミヌには適わないと。小さく息をつき、ドンワンはミヌを振り返った。

「たまにはふたりでメシでも行くか…」

「うん」

ふたりでどこかへ行くのは久しぶりだ。笑顔で頷き、ミヌはドンワンの横顔を見つめる。まるで少し前に戻ったようで楽しくなる。どこへ行こうかと相談しながらふたりは病院を後にした。

ひとり、取り残された病室。さっきまでチュンジェが寝ていたベットに腰を下ろし、ジンは小さく息をついた。以前ならばうまく立ち回っていたが、最近ではめっきりだ。感情を隠すことも、嘘をつくこともできない。

いつからおかしくなってしまったのだろうか。どうしてこんなことになってしまったのだろうか。いくら考えてみてもさっぱりわからない。ただ、無性に悲しくて、寂しくて、涙が溢れていく。

「お父さん…っ」

こんなとき、助けてくれる人はただひとりだけ。しかし、ここは違う場所。逢いに行くには遠すぎる。それに、余計な心配などかけたくない。

ひとりでなんとかしなければ。

使命感のような思い。それでも、その思いは一歩を踏み出す勇気にはなる。いつまでもここに残っていても仕方がない。ジンは俯いていた顔をあげ、歩き出した。

「あれ…?」

だいぶ体調もいいので買い物をしてから帰ろうと、近くのショッピングモールに立ち寄っていたチュンジェは思わず助手席で声をこぼした。

「どうした?」

「あれ、兄さんだよね…?」

指差された方向を見遣れば確かに信号待ちをしている車の中にジンの姿があった。遠目だというのに、その表情は芳しくないとすぐにわかる。

「どうしたんだろ…」

呟くチュンジェの横で、ヴァネスは眉間に皺を寄せた。考えられることなどひとつしかない。申し訳ないと思いながらもここで自分が動いては余計、火に油を注ぐこととなってしまう。

「ヴァネス。兄さん、大丈夫かな…?」

「…あぁ、きっと大丈夫だ」

なんの根拠もない、その言葉単なる願いだった。しかしヴァネスの言葉にチュンジェは安堵を得たようだった。かすかに微笑み、ヴァネスが言うならと小さく頷く。

「ほら、ちゃんとシートベルトしろ。帰るぞ?」

「うん」

急かされるままシートベルトを装着する。すると車はそれを待っていたように滑り出した。久しぶりに帰る我が家。たかだか3日だというのに懐かしい気すらしてくる。

ジンが向かった方向とは逆へ車は進んでいく。あれほど遠く感じた道も車ならばあっという間だ。そんなことを考えながらチュンジェは自宅へと向かった。

一向に解決策を見出せないまま時間だけが過ぎていく。いつ終わるかもわからないロケ現場。目立たないところに車を止め、遠巻きにその姿を見つめていた。

「ジェジュン君…」

いつもなら誰よりも近くでその姿を見ているのに、今日は物陰に隠れてひっそりと。いきなり押しかけていく気にはなれなかった。かといって、仲直りするまで帰ることもできない。

悶々とした気持ちを抱えたまま、いつしか空は暗くなり、太陽は月へと姿を代えていた。どうやら撮影は無事終わったようで、撤収作業が慌しく始まった。

呼び止めようと車を降りたはいいものの、なかなか足が前に進まない。バスの中から出てくるジェジュンを見つけ、声をかけようか、それとも駆け寄ろうかと考えてみる。しかし、どれをするにも勇気が足らない。

悩んでいるうちにひとり、またひとりとメンバーが車へと乗り込んでいく。動き出すならいましかない。わかっているのに動くこともできなかった。

「あ…」

無情にも走り去っていく車。いまから追いかけても追いつけないだろう。肩を落とし、うなだれていると不意に身体が浮かび上がった。

「うわ…っ」

「こんなところにずっといたらカゼひいちゃいますよ?」

「ジェ、ジェジュン君、なんで…?」

ジェジュンは先ほど車で立ち去ったはずだ。それなのにどうしてここにいるのか。さっぱり理解できず、目を白黒させる。

「どこにいても、どれだけ人ごみでも、ジン兄さんを僕が見逃すはずないでしょう?」

その言葉はなぜか”愛してる”と同じ意味に聞こえた。冷え切っていた心にぬくもりが戻っていくようだ。瞳にじわりと涙が浮かび、こぼれていく。

「ジェジュン君…っ」

ゴメンなさいと、愛してる。両方を伝えるように背中へと腕を回し、ぎゅっと縋りつく。離れたくないと訴えかけるような仕種にジェジュンはそっと微笑んだ。

「今日は、いっぱいキスしましょうね?」

甘いささやきに小さな首肯。しかしそれはすぐに否定へと代わった。首をかしげ、窺うようにその涙ぐんだ瞳を見つめる。

「キスだけじゃ足らないもん…っ」

子どものような言い種に自然と笑みが浮かぶ。あれだけ怒っていたのが嘘のようだ。

ネオンの届かない薄暗い路地。車へと戻ったふたりはそっと唇を重ねあう。すれ違っていた心が元通りに戻っていくようだった。
 


昨日より今日、今日より明日。

僕はもっともっと、君を好きになる…。










Written by yue
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