スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

Close your Eyes ep.101-2



HP『Sweet Drops』用に書かれた作品になります。原文のまま転記したので長文になります、ご了承ください。












この日を待ち望んでいたジェジュンは約束どおり愛犬のビークとともにやってきた。笑顔で迎えてくれると思っていたのに、なぜかいまにも泣き出しそうな表情。

「ジン兄さん?」

呼びかけてもジフンの手を握り締め、その傍らから動こうとしない。いったい、どうしたというのだろうか。数日前にあったときはあんなに元気だったのに。不安で自然と表情が曇る。

「実はみんな出かけるコトになってて、少し落ち込んじゃってるんだ」

「みなさんお出かけなんですか?」

「うん。ドンワンとミヌは仕事で海外に行っちゃって、ウォンタクはおじいちゃんの家にお泊り。オレたちもこれから実家に帰らないといけなくて」

ジフンの説明にようやく事情を飲み込み、ジェジュンはそっと微笑んだ。そしてジンへと手を伸ばし、空いているほうの手を優しく包み込む。

「ジン兄さん」

「…」

沈んだその表情を覗き込み、優しく呼びかける。

「みんなが帰ってくるまで、この家を守れるのはジン兄さんだけなんですよ?だから、笑ってください」

その言葉に少しだけ頭が持ち上がる。濡れた瞳がジェジュンを映し出し、小さく頷いた。しかし、笑おうと思ってもいきなり笑えるはずもない。

「…」

すでに荷物は車の中に詰め込んである。あとは自分たちが乗り込むだけでいつでも出発できるのだが、この状態のジンを置いて出かける決心がなかなかつかなかった。

「ジフンさん、大丈夫です。ジン兄さんには僕がついてますから」

まるで心を読み取ったような言葉だ。苦笑を滲ませながらもジフンは小さく頷いた。

出かけなければならない。それはどれだけ時間がたとうと変わらない。ならばいっそ、これを機に出かけたほうがいいだろう。いい加減踏ん切りをつけないと、帰ってくる時間が延びてしまうだけだ。

「ジン、ジェジュン君の言うコトをちゃんと聞いて、いい子で待ってるんだよ?」

弾かれたように振り向いた顔。その表情はまるで捨てられた子犬のようだ。言葉には出ないが、その瞳がひしひしと思いを伝えてくる。

「ジン…」

やっぱり行くのをやめようか。ドンワンとミヌが帰ってきてからでもいいのではないか。そう思い始めたそのとき、朝からずっとつながれていたその手が不意に振りほどかれた。

振り切るように背を向け、ジェジュンへとぎゅっと抱きつく。

本当ならば行ってほしくない。でも、それは言ってはいけないこと。ここでワガママを言ってはいけない。顔は見えずともそんな葛藤が伝わってくる。

その気持ちを無駄にはできない。しばしその背中を見つめていたジフンは玄関に佇んでいたヘソンを振り返った。そして行こうと、促すように小さく頷く。

「じゃあ、行ってくるね?」

呼びかけても答えはない。口を開いたら”行かないで”と言ってしまいそうで怖いのだろう。顔を見られないようにと伏せたままのジン。ジフンはそっと髪を撫で、ヘソンとともに車へと乗り込んでいった。

イタズラに苦痛の時間を延ばすわけにはいかない。乗り込むなりエンジンをかけ、ジフンはゆっくりとアクセルを踏み込んだ。

「ジフン…」

「何も言わないで」

ヘソンの言いたいことはわかっている。先ほどまで自分が考えていたことと同じだろう。けれど、その思いは優しさではない。わずかな葛藤を敏感に感じ取ったように、ジンはジェジュンの元へと向かった。

「でも、ジンが…」

サイドミラー越しに振り返れば、ジェジュンを置いて駆け寄ってくる姿があった。涙を浮かべ、置いていかないでと叫んでいるようにも見える。

「…っ」

けれど、ここで立ち止まるわけにはいかない。戻るわけにもいかない。気づかぬ振りで、ジフンはさらにアクセルを踏み込んだ。

いつかは離れなければならない。わかっているはずなのに、いつの間にかジフンもまたここが我が家のように感じていた。そしてこの家に住むのは自分の家族。家族を置いていくという行為が、胸を締め付ける。

「明日、早く帰ってくるから…」

すべての感情を飲み込み、自分に言い聞かせるようにそう呟く。こんなにも苦々しい気持ちは久しぶりだ。おかげで対処の仕方が思い出せない。

苦痛に顔を歪めながら、ジフンは振り返ることなく門扉を走り抜けていった。

「…っく」

すでに見えなくなった車。これ以上追いかけることもできず、ジンはその場に蹲っていた。こみ上げてくる寂しさと悲しみに嗚咽だけがこぼれていく。

ゆっくりとその背中に歩み寄ったジェジュンは開きかけた口をつぐんだ。ひとりではない。自分がここにいる。それなのにジンにはその姿が見えていないようだ。

「…」

伸ばしかけた手を引っ込め、ジェジュンは静かに踵を返した。そして乗ってきた車の傍らへと戻り、助手席の扉を開く。

「ビーク、いまだけは僕のお願い聞いて」

狭い車内に似つかわしくない大きな身体。真っ白な毛をなびかせながら降り立ったその犬はジェジュンの気持ちなど関係ないと言わんばかりに身体を伸ばし、大きなあくびをこぼした。

「ビーク」

面倒くさい。口が利けたならきっとそう呟いていることだろう。ちらっとジェジュンを見上げ、のっそりと動き出す。そして蹲ったジンの背中へと足をかけた。

「こ、こらっ!」

そうではない。そういうことをして欲しかったのではない。しかし、ジェジュンの思いは届かなかったようで、ビークは背中にかけた2本の前足に全体重を乗せた。

「うわ…っ」

しゃべれないほど落ち込んでいたというのに悲鳴だけはこぼれていく。構えていなかったせいで、ジンの身体は見事に雪の中へと埋没した。

「ビーク、降りてっ!」

リードを引っ張ってみても、身体を押してみても動く気配はない。それどころかジンの背中に乗ったまま伏せをし、してやったりと言わんばかりに大きな舌で口元を舐める。

手足をばたつかせてもがいてみても、一度潰れてしまった身体は起き上がれない。かろうじて頭だけを動かし、背中に乗っている物体を確認しようとする。

「…」

視界に飛び込んできたのは白くて大きな物体。続いて赤い物体が見え、生暖かい感触が顔全体に広がった。

「う…?」

「ビークっ!」

怒るジェジュンの声。その名前はジェジュンの愛犬だ。まるで餌のように顔を何度も舐められながら、ジンは背中に乗っているのがビークだと認識した。

必死なジェジュンとのん気なビーク。そのギャップが沈んでいた心を少しずつ持ち上げていく。いつしか涙は止まり、笑顔が浮かぶ。

「くすぐったいよ~」

思い通りとまではいかなかったが、どうやら元気になってくれたようだ。こぼれる笑顔と楽しそうな声に、ジェジュンは胸を撫で下ろした。

「ジン兄さん、いま助けますからね?」

押しても引いても駄目ならば、あとは持ち上げるしかない。ジンの背中に乗ったビークを跨ぎ、その大きな身体を少しだけ浮かす。

以前はほとんど持ち上がらなかったが、鍛えたおかげで大して力まなくてもその身体は容易に浮かぶ。

「いまのうちです。出てください」

ジェジュンの言葉に笑顔で頷き、匍匐前進の要領でビークの下から脱出する。起き上がってみれば服はびしょ濡れだ。寒さに身を震わせ、暖を取るようにビークへと抱きつく。

「ビークあったかいの~。いいにおいする~」

気持ちよさそうに目を細め、白くてふさふさな毛に顔を埋める。その様子を見ていたジェジュンはそっと息をつき、ジンの身体を抱き上げた。

「ジン兄さんにお披露目するならキレイにしないとと思って、昨日シャンプーしたんですよ?」

「そうなの?」

「はい」

冷えた頬に優しく口づけ、ゆっくりと歩き出す。しばしその場に留まっていたビークだが、ひとりになるのは寂しいようでその後を追いかけていった。

玄関を潜れば快適な空間。外の寒さもこの中では関係ない。しかし、濡れたまま外にいすぎたのだろう。階段を上る途中、小さなくしゃみがこぼれた。

「大丈夫ですか?とりあえずシャワー浴びて、着替えましょうね?」

階段を上り終え、進路を右へ取ると腕の中でジンは逆方向を指差す。バスルームはリビングの先で、指差された方向はそれぞれの部屋があるだけだ。

「あっち行くの~」

「でも…」

「いいから、あっち~っ」

降りようともがくジンを抱えなおし、言われるままに逆へ進路を取る。そして廊下を歩き、次にジンが指差したのは自分の部屋だった。

意味がわかれば自然と笑みが浮かぶ。音を立てて口づけながらそっとベットの上へその身体を下ろした。

「濡れた服は脱いじゃいましょうね?」

これ以上被害を大きくするわけには行かない。次第に露になっていく肌へ口づけ、腰を支えるようにベットへと横たえる。

「ジェジュン君、いっぱい熱くしてね~?」

「はい」

来て早々という感は否めない。けれど、愛する人がせっかく誘ってくれているのにそれを断れるはずもない。ジェジュンもまた自らの服を似脱ぎ捨て、太陽の香りのするベットへ身を沈めた。









続く。
にほんブログ村 BL・GL・TLブログ 二次BL小説へ
にほんブログ村
関連記事
スポンサーサイト

テーマ : BL小説 - ジャンル : 小説・文学

コメント
コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。