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Close your Eyes ep.101-3



HP『Sweet Drops』用に書かれた作品になります。原文のまま転記したので長文になります、ご了承ください。












「あ?」

久しぶりにゆっくりと年を越せそうだと思っていた矢先、届いたメール。言葉にしてみても相手に届くはずもない。しかし、そう口にせずにはいられなかった。

「…」

「ヴァネス?」

携帯電話を見つめたまま凍りついてしまったかのように動かないヴァネス。チュンジェは首をかしげ、そう呼びかけた。

「とりあえず…出かける準備しろ」

「え…?」

どこへ行くのか、そして届いたメールがなんなのか。疑問はたくさんあるが、ヴァネスはそれに答えず奥へと消えていった。

事情はよくわからないが、とりあえず言われたとおり準備をしたほうがよさそうだ。開いていた参考書を閉じ、チュンジェもまたヴァネスを追いかけるように奥の部屋へと向かった。

「ヴァネス、どこに行くの?」

「ジンの家。泊まりになるだろうから着替えも持ってけよ?」

「う、うん…」

いったいどうしたというのだろうか。今日は確かジェジュンが遊びに来てくれると心待ちにしていた日。ジンの元へ行く理由がわからない。

「行ったら邪魔じゃないかな…?」

「全員出かけちまって寂しがってんだと。ジェジュンは来てるらしいけどな」

正直、珍しい頼みに驚きを隠せない。しかし、裏を返せばそれだけ必死なのだろう。特に予定もないし、他ならぬジンのためだ。断る理由はどこにもない。

「ほら、行くぞ」

差し出された手を取り、小さく頷く。そしてふたりは部屋を後にした。
 


すっかり熱くなった身体。ぴたりと寄り添いながら過ごす、愛しい時間。けれど、時間がたつにつれまた寂しさが息を吹き返していく。

ジェジュンがそばにいてくれるのは嬉しい。でも、他には誰もいない。いつもなら賑やかな家も今日はしんと静まり返っていた。

「ジン兄さん?」

呼びかけになんでもないと頭を振り、ぎゅっと抱きつく。胸に顔を埋め、寂しさをやり過ごすように目を閉じた。

一時は寂しさから解放することができたが、また元の殻に戻ってしまったようだ。せっかく一緒に過ごせる時間もこれでは意味がない。

どうしたものか…。

またビークにお出まし願ってもいいが、余計なことをされたのでは大変だ。自分にできることを考え、ジェジュンは何か思いついたように身体を起こした。

ずるりと滑り落ちるジンを抱きかかえ、不思議そうに首をかしげる寂しげな瞳にそっと微笑む。

「シャワー、浴びましょうか?」

嫌がることではないと、小さく頷く。そして部屋に来たときと同様、抱きかかえられたままバスルームへと向かった。

背中を流し合い、新しい服へと袖を通す。濡れた髪は乾かしてもられば少しだけ寂しさが紛れたようで、かすかな笑みが浮かんだ。

「お腹は空いてないですか?」

「うん、まだ大丈夫」

それならばとジェジュンはソファからジンを抱えあげた。そしてピアノのそばで寝転がり、レインとクラウドにされるがままとなっているビークの傍らへと向かった。

大きなビークの背中に身体を預けるように下ろし、そっと頬に口づける。やはり、自分にはこれしかない。そんな思いでジェジュンはピアノへと手を伸ばした。

「今日はジン兄さんのためだけのコンサートです。リクエストはありますか?」

離れてしまったことへの寂しさで揺れていた瞳が一気に輝きだす。もっと近くで聞きたくて、ジンは四つんばいになってジェジュンの足元へと歩み寄った。

「ビーク、こっち来て~」

来るわけがない。飼い主であるジェジュンが一番よくわかっている。しかし、予想外のことが起きた。呼びかけに応じるかのように頭をもたげ、のっそりと歩き出す。そしてジンの元へと再び寄り添った。

別段、遊ぼうとちょっかいを出すわけでも甘えるわけでもない。ただジンの傍らに寄り添い、前足の上に頭を乗せる。そして何事もなかったように目を閉じた。

「ビーク、いい子なの~」

「…」

ひどく複雑な気分だ。飼い主の言うことはまったくといっていいほど聞かないくせに、ジンの言うことは聞く。馬鹿にされているようにしか思えない。

誰が飼い主なんだか…。

思わずそう心の中で呟いていた。けれど、ジンが笑っていてくれるのであればそれでいい。気を取り直し、ジェジュンは白い鍵盤へと指を滑らせた。

「あのね、あのね、クリスマスプレゼントにもらった曲がイイの~。あと、誕生日にもらった曲とね、それから…一番最初に歌ってくれた曲~」

「わかりました」

どれも思い出深い曲ばかり。先の2曲はジンのためだけに捧げたものだ。そして最後の曲もまた特別。愛しい想いを込めながら公共の電波に乗せて贈った曲。

そのあと散々怒られたが、それでもいまとなってはいい思い出だ。あの告白がなければきっといまの自分たちはなかっただろう。

あの時と同じように心を込めて奏でる。たったひとりのためだけの小さなコンサート。はしゃいでいたレインとクラウドもいつしかおとなしくなっていた。

寂しさが嘘のように消えていく。代わりにぽかぽかと身体の隅々まで暖かくなっていくようだ。何度も繰り返し聴いたが、やはり目の前で歌ってくれるのとCDとではまったく違う。感じる幸せも段違いだ。

口を挟むことなく、最後の一音まで記憶に留めるかのように酔いしれる。訪れたしばしの無音。余韻に浸っているようで、目を伏せたその表情には笑顔が浮かんでいた。

「ジェジュン君」

ゆっくりと目を開き、甘えるように名を紡ぐ。伸ばされた両手を見れば求めているものなどすぐにわかる。立ち上がったジェジュンは静かにその身体を抱き寄せた。

「好き…」

囁くような告白にくすぐったさを覚える。抱き寄せたまま微笑み、応えるように音を立てて口づけた。

「僕もジン兄さんが大好きです」

「ふふふ~っ」

何度も聞いている言葉なのに、聞くたびに幸せな気持ちになれる。まるで魔法の言葉だ。寄り添いながらふたりきりで過ごす幸せな時間に浸っていると、不意にインターホンが鳴り響いた。

「う?」

誰も来るなんて聞いていない。インターホンを振り返り、小さく首をかしげる。しかし、離れたくないようで腕はしっかりとジェジュンに巻きついたままだ。

愛する人の腕を解けるはずもない。ジェジュンは迷わずその身体を抱き上げ、インターホンへと向かった。そしてモニターに映し出されていた人物に思わず眉根を寄せる。

「チュンジェ~っ!」

映っているのはふたり。しかし、片割れはどうでもいいようだ。想いの深さをそんなところで判断し、ジェジュンは表情を和らげた。

「お出迎えに行きましょうね?」

「うんっ」

降りるつもりはまったくないようだ。抱えられたまま急かすように階段を指差す。大きな子どもができたようで思わず口元が綻んだ。

玄関を開けばモニターに映っていたふたりがそのまま佇んでいた。普通とは違う出迎えに苦笑を滲ませながら、ヴァネスはジンの頭へと手を伸ばした。

「なんだ、意外に元気そうじゃねぇか」

「オレ、元気だよ~?」

「そうか?ジフンがわざわざオレにメールで頼むくらいだから号泣してんじゃねぇかと思ったんだけどな」

茶化すようにそう告げれば、案の定頬が膨らんでいく。そこまで子どもではないと言いたいのだろうが、はっきりとそう言えない。実際、先ほどまでは泣きたいほど寂しかったのだから当然だ。

「ジェジュン君いるから、寂しくないもん…」

それはせめてもの強がり。しかし、それが見抜けないわけもない。にやっとイタズラに微笑み、わざとらしくその顔を覗き込む。視線から逃れるようにうなじに顔を埋めるジンに笑みを深め、ヴァネスはジェジュンを見つめた。

「邪魔して悪いな?一応、ジフンからの依頼だから断ると後々で何がされるかわかんねぇんだ」

それは表向きだとわからないほどジェジュンは子どもではない。しかし、追い返すわけには行かない。何しろ、一緒に来ているのはジンの弟だ。

「寒いですから、中に入ってください。何か、あたたかいものでも入れますね?」

この家の住人ではないのにそう勧めるのもおかしな話だ。言っておいて自分の言葉に腑に落ちないものを感じる。

「ジン兄さん、ついでにお昼にしましょうか?そろそろお腹空いたでしょう?」

「うん、空いた~」

空腹を感じるのは心が満たされた証拠。安堵の笑みを浮かべ、階段を上りながら人目を憚ることなくそっと頬に口づける。

「僕、手伝うよ」

それに構うことなくチュンジェがそう申し出る。気にすることではないといった様子だ。

ヴァネスも同様だった。ジンに対する気持ちがなくなったわけではないが、その行為を見ても不愉快になることはない。ただ、気持ちの種類が少しだけ変わったのだろう。

「ジン兄さん、いい子で待っててくださいね?」

「うん」

少しだけ賑やかになった室内。人はいつもと違えど、雰囲気は幾分近づいた。もう寂しさはないようで、ジェジュンに言われたとおりおとなしくリビングへと腰を下ろした。

「このデカイのはなんだ…?」

「ジェジュン君トコのビーク~。白くてふわふわで、もっこもこでいい子だよ~?」

どうやらジンのそばが居心地いいようだ。のそのそと歩み寄り、先ほどと同じようにジンの傍らへと大きな身体を横たえる。

「グレートピレニーズか?また大変なのを選んだもんだな…」

思わずそう呟かずにはいられない。このくらいの庭がある家なら充分飼育可能だが、一般家庭ではかなり大変だろう。散歩だけでも一苦労だ。

しかし…。心の中でそう呟く。ジンとビークを交互に見つめ、ヴァネスは思わず苦笑した。

「似たようなもんか…」

「何が~?」

「なんでもねぇよ」

不思議そうに首をかしげるジンの頭を乱暴に撫で、誤魔化すようにタバコを咥える。しばらくジンの視線が突き刺さっていたが、しばらくすると諦めたようだった。

不意に足の上に重みがかかる。見下ろせばそこにはジンの頭があった。人の膝をまくらにビークの白い毛並みを撫でる姿に思わず笑みが浮かぶ。

「ヴァネス、今日はお泊り~?」

「あぁ。ジフンから帰ってくるまでここにいろってお達しが出たからな」

お願いというよりは命令に近い。ちらっと窺うような視線を受け、ヴァネスは紫煙に目を細めながら首をかしげた。しかし、問いかける前にその意味はすぐにわかった。

「公認でこうしてお前と年を越せるんだからジフンに感謝しねぇとな」

ジンにだけ聞こえる囁くような声。その言葉にジンは幼い笑顔を浮かべ、くるりと身体の向きを変えた。

「じゃあ、ジフン兄貴が帰ってくるまでヴァネスがオレのお兄ちゃんなの~」

「あ?オレにジフンの代わりが務まるわけねぇだろ?」

そうは言いながらも悪い気はしない。一時でも必要としてくれているようで、思わず笑みさえ浮かんでしまった。

少しだけ昔に戻ったようで懐かしく思える。ジェジュンの視線が気になるが、いまはただこの幸せに浸っていたかった。

あの頃、夢にまで見た生活。それがいまここにはあった。










続く。
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